イトシャジクモ Chara fibrosa subsp. gymnopitys Zaneveld シャジクモ科 シャジクモ属
水生植物 > 淡水藻類    絶滅危惧T類(CR+EN) ・ 兵庫県RDB 要調査種
Fig.1 (兵庫県播磨地方・溜池 2014.8/21)

貧栄養〜やや中栄養な溜池に生育する輪藻類。
雌雄同株。藻体は長さ20〜50cm。主軸は細く、節間部は小枝の長さの1〜3倍、複列性の皮層を持つ。
皮層の1次列、2次列はほぼ同様に発達し、棘細胞は主軸の直径よりも長くなることはほとんどない。
托葉冠は1列で、小枝の数の2倍近くの数があり、長さ0.8〜1.6mm。
小枝は8〜11本輪生し、5〜6節からなるが、皮層を持たない。苞は2〜4本で長い。小苞は苞と同形で大きさも変わらない。
性器は雄器と雌器が一緒に小枝の下方の1〜2節につく。雄器は直径320〜350μ。雌器は長さ650〜750μ。
小冠は高さ80〜100μ。卵胞子は楕円形、ほとんど黒色、長さ450〜500μ、らせん縁は8〜9本で、翼は発達しない。

変種のコイトシャジクモ(var. flaccida)は主軸の皮層細胞の1次列が2次列よりも発達し、卵胞子は成熟しても黒色とならない。本州、四国。
ケナガシャジクモ(subsp. benthamii)は托葉冠の数は小枝と同数程度。主軸皮層の棘細胞は主軸の径よりも長め。北海道〜九州。
イケダシャジクモ(var. brevibracteata)は藻体が細く、苞や棘細胞は未発達。皮層細胞の1次列は発達する。九州。
ゲンカイイトシャジクモ(var. microstephana)は托葉冠や棘細胞が未発達だが、苞は発達する。卵胞子は黒色。本州南部、九州。
エリナガシャジクモ(var. longicorollata)は藻体は小さく、5〜8cm。雌器の先端の小冠は長く、上に広がってつき、高さ250〜300μ。青森県。
ジュズシャジクモ(var. minuta)は藻体は8cm以下。同一の小枝に雄器、雌器が同時に生じない。長い節間部と小さな球状になった輪生枝の塊がじゅず状に連なる。千葉県。
近似種 : コイトシャジクモ、 ケナガシャジクモ
■分布:本州、四国、九州 ・ アジア、アフリカ、オーストラリア
■生育環境:貧栄養〜やや中栄養な溜池。
■卵胞子成熟期:9〜11月
■西宮市内での分布:市内では確認していない。

Fig.2 全草標本。藻体は長さ20〜50cm。(兵庫県播磨地方・溜池 2014.8/21)

Fig.3 藻体。(兵庫県播磨地方・溜池 2014.8/21)
  主軸は細く、節間部は小枝の長さの1〜3倍。托葉冠は1列。

Fig.4 主軸の皮層。(兵庫県播磨地方・溜池 2014.8/21)
  皮層の1次列、2次列はほぼ同様に発達し、棘細胞は主軸の直径よりも長くなることはほとんどない。

Fig.5 輪生枝。(兵庫県播磨地方・溜池 2014.8/21)
  小枝は8〜11本輪生し、5〜6節からなり、皮層を持たない。苞は2〜4本で長く、小苞は苞と同形で大きさも変わらない。。
  托葉冠は1列で、小枝の数の2倍近くの数があり、長さ0.8〜1.6mm。

Fig.6 性器。(兵庫県播磨地方・溜池 2014.8/21)
  雄器、雌器は同じ節につき、小枝の下方の1〜2節につく。
  雄器は赤橙色、雌器は橙黄色で、雌器が上につく。

Fig.7 雄器(左)と雌器(右)。(兵庫県播磨地方・溜池 2014.8/21)
  雄器は直径320〜350μ。雌器は長さ650〜750μ、らせんがある。雌器先端の小冠は高さ80〜100μ。

Fig.8 卵胞子。(兵庫県播磨地方・溜池 2014.8/21)
  卵胞子は楕円形、ほとんど黒色、長さ450〜500μ、らせん縁は8〜9本で、翼は発達しない。

他地域での生育環境と生態
Fig.9 やや中栄養な溜池に群生するイトシャジクモ。(兵庫県播磨地方・溜池 2014.8/21)
山際にある小さなやや中栄養な溜池の浅水域全体を覆うように群生している。
溜池にはクログワイとカンガレイが抽水生し、ミズニラ、オオハリイ、ホッスモ、タヌキモが生育している。

Fig.10 貧栄養〜やや中栄養な溜池に群生するイトシャジクモ。(兵庫県篠山市・溜池 2011.9/14)
中規模な溜池の開放水面のある部分の水底を、托葉冠が刺細胞状のシャジクモsp.(ゲンカイイトシャジクモ?)とともに覆っている。
ヒルムシロ、ヒツジグサ、ジュンサイ、ホソバミズヒキモからなる浮葉植物群落がよく発達し、その陰になる場所では生育量は少ない。
浅水域ではミズニラ、ヒメホタルイ、オオハリイ、エゾハリイ、ハリイ、マツバイ、ツクシクロイヌノヒゲ、ニッポンイヌノヒゲ、ミミカキグサ、
タチモ、ホッスモなどと混生している。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
廣瀬弘幸・山岸高旺, 1997. シャジクモ科. 『日本淡水藻類図鑑』 761〜777. 内田老鶴圃
須賀瑛文, 2001. 輪藻類. 浜島繁隆・土山ふみ・近藤繁生・益田芳樹編著 『ため池の自然』 81〜101. 信山社サイテック
笠井文絵・石本美和, 2011. 『しゃじくもフィールドガイド』 pp.17. 独立行政法人国立環境研究所
坂山英俊, 2010. イトシャジクモ. 改訂レッドリスト付属説明資料 藻類. 7. 環境省自然環境局野生生物課
兵庫県, 2010 1 植物(3)藻類@淡水藻類. 『兵庫の貴重な自然 兵庫県版レッドデータブック2010(植物・植物群落)』 170〜175. (財)ひょうご環境創造協会

最終更新日:7th.Nov.2014

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