ハゴロモモ(フサジュンサイ、カボンバ) Cabomba caroliniana  A. Gray スイレン科 ハゴロモモ属
沈水植物 ・ 帰化植物 要注意外来生物
Fig.1 (兵庫県三田市・溜池 2010.8/24)

湖沼、溜池、河川、水路などに生育する多年草。北アメリカ原産の帰化種で、繁殖力が旺盛なため要注意外来種とされている。
根茎は発達せず、茎下部の節から白色糸状の根を出す。水中茎は根元で分枝して株状になる。上部での分枝はまばら。
沈水葉は対生、葉柄は長さ5〜20mm、葉身は基部でふつう5裂片に分れ、さらにそれぞれが2〜3回2叉状に分裂して糸状の裂片が掌状に広がる。
葉全体の輪郭は扇状で、基部から先端までの長さ1〜3.5cm。各裂片の先端はやや鈍頭で、検鏡すると鋸歯がある。
浮葉は開花時に見られ、茎上部に互生してつき、ふつう楕円形で葉柄が楯状につき、ときに矢尻形となり、長さ0.8〜1.8cm。
花柄は浮葉の葉腋から伸び、径1〜1.5cmほどの白い花を単生する。花被片はふつう6個で基部付近はふつう黄色、雄蕊6、雌蕊3個。
開花は2日間で午前中に開き午後には閉じる。1日目には雌蕊が、2日目には雄蕊が成熟する、雌性先熟。
種子は長さ2〜3mmの楕円形で、表面に多数のイボ状突起がある。

ハゴロモモ属のものは何種かアクアリウム用に輸入・育成されている。
イエロー・カボンバC. australis)は熱帯アメリカ原産で、沈水葉の裂片がより細く繊細となる。
レッド・カボンバC. furcata)は南アメリカ原産で、草体が赤味を帯びる。
近似種 : イエロー・カボンバ、レッド・カボンバ

■分布:日本中に帰化 ・ 北アメリカ原産
■生育環境:湖沼・溜池、用水路・河川など。
■花期:7〜10月
■西宮市内での分布:社寺内の小池に見られるが、何者かが投入したと考えられる。県下では帰化定着している溜池が多く見られる。

Fig.2 開花期のハゴロモモ。(兵庫県三田市・溜池 2010.8/24)
  水中茎は長く1m以上伸びて、水面でなびいていることも多い。
  花がつく茎は上部の葉腋から分枝し、節間が長く、それに伴って葉数が少ない。

Fig.3 茎に対生する葉。(兵庫県三田市・溜池 2010.8/24)
  全体の輪郭は扇状。基部でふつう5裂片に分れ、さらにそれぞれが2〜3回2叉状に分裂して糸状の裂片が掌状に広がる。

Fig.4 花茎。(兵庫県三田市・溜池 2010.8/24)
  花茎上部には浮葉が互生してつく。浮葉はふつう惰円形で、葉柄が楯状につく。花柄は浮葉の葉腋から伸びる。

Fig.5 浮葉と花。(兵庫県三田市・溜池 2010.8/24)
  別名のフサジュンサイは浮葉の形が、ジュンサイの浮葉の形と似るために付けられたもの。

Fig.6 雄性期の花。(兵庫県三田市・溜池 2010.8/24)
  開花は午前中で、2日間にわたって開き、1日目は雌蕊が成熟し、2日目は雄蕊が成熟する。
  画像を撮影しやすいように草体を岸近くに引き寄せたところ、花の基部が水没してしまった。

Fig.7 開花全盛期のハゴロモモ。(兵庫県三田市・溜池 2010.8/24)
  水面近くに伸びた節間の長い花茎が目立つ。

西宮市内での生育環境と生態
現在、画像はありません。 

他地域での生育環境と生態
Fig.8 溜池で群生するハゴロモモ。(兵庫県三田市・溜池 2010.8/24)
山間のやや中栄養気味の溜池に群生している。より水深のある場所ではヒルムシロが生育している。
他にヒツジグサも生育しているが、ハゴロモモの勢力に押されて年々減少しつつある。

Fig.9 ヒツジグサ群落の隙間を埋めるハゴロモモ。(兵庫県加東市 2010.8/8)
国道沿いの中栄養な溜池に生育している。ここではヒツジグサ群落が発達しない部分では大きなハゴロロモ群落が形成されていた。
他にはタチモ、フトヒルムシロ、ヒルムシロなどの在来水草が少量であるが残存している。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大滝末男, 1980. ハゴロモモ. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 94〜95. 北隆館
田村道夫, 1982. スイレン科ハゴロモモ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.93〜94. pls.93. 平凡社
角野康郎, 1994. ハゴロモモ. 『日本水草図鑑』 p.108. pls.110. 文一統合出版
諏訪哲夫. 2001. ハゴロモモ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 714〜715. 神奈川県立生命の星・地球博物館
村田源. 2004. ハゴロモモ. 『近畿地方植物誌』 113. 大阪自然史センター
角野康郎. 2001. ハゴロモモ. 清水建美(編)『日本の帰化植物』 p.77. pls.24. 平凡社
清水矩宏・森田弘彦・廣田伸七. 2001. ハゴロモモ. 『日本帰化植物写真図鑑』 78. 全国農村教育協会
角野康郎・高野温子 2001. フサジュンサイ. 兵庫県産維管束植物3 スイレン科. 人と自然12:143. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:18th.Sep.2010

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