セイロンフラスコモ Nitella megaspora (J. Groves) Sakayama シャジクモ科 フラスコモ属
水生植物 > 淡水藻類    絶滅危惧T類(CR+EN) ・ 兵庫県RDB 要調査種
Fig.1 (兵庫県西播地方・溜池 2014.9/23)

貧栄養〜やや中栄養な溜池に生育する輪藻類。
雌雄同株。藻体は長さ12〜20cm。美しい鮮緑色を呈する。
結実枝と不結実枝の分化は見られないが、若い結実部はふつう厚い寒天質で包まれている。
小枝は2〜4回分枝し、第1分射枝は小枝全体の1/2〜2/3に達する。
第2分射枝は7本以上で、その1本は中央分射枝として、他よりもよく発達している。
第3分射枝は3〜6本、第4分射枝は3〜5本からなる。最終枝は常に2細胞からなり、短縮することはない。
雌雄性器はふつう小枝の第2,3,4節につくが、ときに1節にもつくことがある。
雌器は単生し、長さ400〜500μ、幅300〜360μ、らせんは9〜11本。
卵胞子は暗褐色〜黒色で、長さ240〜330μ、幅220〜280μあり、らせん縁は6〜8本あり、比較的顕著。
卵胞子膜上には粒状模様が密に並んでいる。雄器の直径は210〜250μ。

ホンフサフラスコモN. pseudoflabellata)は卵胞子膜上に突起はなく虫様の模様があり、寒天質に包まれない。本州〜九州。
ミノフサフラスコモN. pseudoflabellata var. mucosa)は第2分射枝は5〜6本で、卵胞子膜上には虫様の模様が散在する。本州〜九州。
ハデフラスコモN. pulchella)は主軸が太く、結実枝と不結実枝が分化し、終端細胞は長くソーセージ状となる。本州〜九州。
近似種 : ホンフサフラスコモ、 ミノフサフラスコモ、 ハデフラスコモ
■分布:本州、四国、九州 ・ セイロン、インド、マダガスカル
■生育環境:貧栄養〜やや中栄養な溜池。
■卵胞子成熟期:9〜11月
■西宮市内での分布:市内では確認していない。

Fig.2 全草標本。(兵庫県西播地方・溜池 2014.9/23)
  藻体は長さ12〜20cm。美しい鮮緑色を呈する。

Fig.3 藻体の中〜上部。(兵庫県西播地方・溜池 2014.9/23)
  結実枝と不結実枝の分化は見られない。
  第2分射枝の数が多いため、第2分射枝以降の枝が混み合って見える。

Fig.4 若い結実部は厚い寒天質で包まれている。(兵庫県西播地方・溜池 2014.9/23)

Fig.5 第2分射枝。(兵庫県西播地方・溜池 2014.9/23)
  第2分射枝は7本以上で、その1本は中央分射枝として、他よりもよく発達している。

Fig.6 第3、第4分射枝。(兵庫県西播地方・溜池 2014.9/23)
  第3分射枝は3〜6本、第4分射枝は3〜5本からなる。最終枝は常に2細胞からなり、短縮することはない。

Fig.7 終端細胞。(兵庫県西播地方・溜池 2014.9/23)
  最終枝の終端細胞は小さく、円錐形。

Fig.8 性器。(兵庫県西播地方・溜池 2014.9/23)
  性器は小枝の第2,3,4節につくが、第1節にはつかない。フラスコモ属の特徴として雄器のほうが雌器よりも上位につく。
  雄器の直径は210〜250μ。雌器は単生し、長さ400〜500μ、幅300〜360μ、らせんは9〜11本。

Fig.9 雌器上部の小冠細胞。(兵庫県西播地方・溜池 2014.9/23)
  フラスコモ亜科の特徴として小冠細胞は5細胞が2段に並ぶ。

Fig.10 卵胞子。(兵庫県西播地方・溜池 2014.9/23)
  卵胞子は暗褐色〜黒色で、長さ240〜330μ、幅220〜280μあり、らせん縁は6〜8本、比較的顕著である。
  この倍率でも卵胞子表面に粒状の突起があることがわかる。

Fig.11 卵胞子膜表面。(兵庫県篠山市・溜池 2014.11/11)
  粒状の突起が密に並ぶ。

他地域での生育環境と生態
Fig.12 やや中栄養な溜池に群生するセイロンフラスコモ。(兵庫県播磨地方・溜池 2014.8/21)
谷津上部の3連の重ね池の中段の溜池の浅瀬に群生している。
溜池にはカンガレイが抽水生し、ジュンサイ、ガガブタ、イヌタヌキモ、イトタヌキモが生育している。

Fig.13 溜池に生育するセイロンフラスコモ。(兵庫県篠山市・溜池 2014.10/22)
棚田の奥にある小さな腐植栄養質な溜池の岸近くで、少数のセイロンフラスコモが生育していた。
溜池にはヒツジグサ、ジュンサイ、フトヒルムシロ、タヌキモが生育し、岸辺はチゴザサが優占し、ノハナショウブ、ミズギボウシ、
カサスゲ、アゼスゲ、ヒメコヌカグサなどが生育している。

Fig.14 池底を覆うセイロンフラスコモ。(兵庫県篠山市・溜池 2014.11/11)
山際にある、やや中栄養と思われる溜池の底面を一面に覆って群生していた。多くの藻体はアオミドロに覆われている。
ここの集団は新しい枝の部分が寒天質に覆われていなかったので、別種かと思ったが、つくりはセイロンフラスコモそのもので、
卵胞子膜には粒状突起が密生していた。Fig.11はこの集団の透過光による卵胞子膜表面の画像である。
溜池内には水生植物は見られず、山が迫っているため、岸辺には湿地も発達していない。
わずかに池の縁を囲むようにイヌノハナヒゲ、アブラガヤ、テンツキ、ヒメヒラテンツキなどが生育していた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
廣瀬弘幸・山岸高旺, 1997. シャジクモ科フラスコモ属. 『日本淡水藻類図鑑』 780〜829. 内田老鶴圃
須賀瑛文, 2001. 輪藻類. 浜島繁隆・土山ふみ・近藤繁生・益田芳樹編著 『ため池の自然』 81〜101. 信山社サイテック
笠井文絵・石本美和, 2011. 『しゃじくもフィールドガイド』 pp.17. 独立行政法人国立環境研究所
坂山英俊, 2010. セイロンフラスコモ. 改訂レッドリスト付属説明資料 藻類. 10. 環境省自然環境局野生生物課
兵庫県, 2010 1 植物(3)藻類@淡水藻類. 『兵庫の貴重な自然 兵庫県版レッドデータブック2010(植物・植物群落)』 170〜175. (財)ひょうご環境創造協会

最終更新日:20th.Nov.2014

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