シャジクモ Chara braunii Gmelin シャジクモ科 シャジクモ属
水生植物 > 淡水藻類    環境省絶滅危惧U類(VU)
Fig.1 (兵庫県篠山市・溜池 2014.7/31)

水田、湖沼、溜池、用水路など様々な水域に生育する輪藻類では最もふつうな種。
雌雄同株。藻体は長さ40cmくらいまでになる。主軸は径0.3〜1mm、皮層も刺細胞もない。
托葉冠は1列で、その位置は小枝と互生し、ほぼ同数である。
托葉冠の長さには変異が見られるが、長さは1mm程度まで、ときに乳頭状突起に退化しているものもある。
輪生枝は8〜11本あり、各小枝は3〜4節からなる。終端の節はほぼ同長の苞の細胞が集まり、冠状となる。
性器は雄器と雌器が一緒に小枝の下部節につき、輪生する小枝の基部には生じない。
雄器は直径250〜320μ。雌器は長さ800〜1100μ(小冠をふくむ)、幅400〜500μ、らせんは10本見られる。
卵胞子は長楕円形〜楕円形、黒色、長さ500〜750μ、幅300〜450μ、らせん縁は7〜12本。

オウシャジクモC. corallina)は苞が退化的で、輪生枝は6本、終端細胞は1個で冠状とならず、性器は小枝基部に群生する。青森県以南の全国。
フシナシシャジクモC. corallina var. kyusyensis)は前種の変種で、托葉冠も苞も退化的で、ときに全く欠く。北陸、九州。
オーストラリアシャジクモC. australis)は雌雄異株、終端細胞は1個で冠状とならない。九州。
近似種 : オウシャジクモ、フシナシシャジクモ
■分布:日本全土 ・ 世界各地
■生育環境:水田、湖沼、溜池、用水路など様々な水域。
■卵胞子成熟期:7〜11月
■西宮市内での分布:市内では北部の水田や溜池にふつうに見られる。

Fig.2 全草標本。藻体は長さ40cmくらいまでになる。(兵庫県篠山市・溜池 2014.7/31)

Fig.3 藻体の上部。(兵庫県篠山市・溜池 2014.7/31)

Fig.4 托葉冠と輪生枝。(兵庫県篠山市・溜池 2014.7/31)
  托葉冠は1列で、小枝とほぼ同数。輪生枝は8〜11本あり、各小枝は3〜4節からなる。

Fig.5 終端の節。(兵庫県篠山市・溜池 2014.7/31)
  ほぼ同長の苞の細胞が集まり、冠状となる。
  これはルーペで確認でき、皮層の有無と並んで、他のシャジクモ類と区別する上での良い特徴である。

Fig.6 主軸の拡大。(兵庫県篠山市・溜池 2014.7/31)
  主軸や輪生枝に皮層はなく、藻体は透き通った緑色で、原形質流動が容易に観察できる。

Fig.7 性器。(兵庫県篠山市・溜池 2014.7/31)
  性器は雄器と雌器が一緒に小枝の下部節につき、輪生する小枝の基部には生じない。

Fig.8 雄器(左)と雌器(右)。(兵庫県篠山市・溜池 2014.7/31)
  雌雄同株のシャジクモ属の特徴として雌器は雄器よりも上位につく。

Fig.9 雄器。(兵庫県篠山市・溜池 2014.7/31)
  雄器は直径250〜320μ。橙赤色でよく目立つ。

Fig.10 雄器。(兵庫県篠山市・溜池 2014.7/31)
  雌器は長さ800〜1100μ(小冠をふくむ)、幅400〜500μ、らせんは10本ある。

Fig.11 卵胞子。(兵庫県篠山市・溜池 2014.7/31)
  卵胞子は長楕円形〜楕円形、黒色、長さ500〜750μ、幅300〜450μ、らせん縁は7〜12本で、翼状に発達しない。

他地域での生育環境と生態
Fig.12 溜池の浅水域の底面を覆うシャジクモ。(兵庫県篠山市・溜池 2014.8/14)
山間の清流の流入する谷池に見られたもので、池浚いの翌年に一斉に出現して底面を覆ったもの。
浚渫以前はヒツジグサが群生しており、それまでシャジクモは見られなかった。シャジクモは撹乱によく適応しているのだろう。
現在は小さなヒツジグサがまばらに見られ、水中には他にミズニラが見られる。

Fig.13 湛水休耕田に生育するシャジクモ。(兵庫県丹波市・休耕田 2010.7/23)
シャジクモは農薬の少ない水田内や休耕田でふつうに見られる。
したがって、シャジクモは他の水湿生植物や他のシャジクモ科藻類探査の指標となる。
この休耕田ではところどころでホッスモ(左)と混生しており、他にイヌミゾハコベ、アゼトウガラシ、キカシグサなどが見られた。

Fig.14 休耕田の水路内に生育するシャジクモ。(兵庫県丹波市・休耕田 2010.10/7)
谷津最奥の半ば草に埋もれつつある休耕田の、ときにシカやイノシシによる撹乱のある素掘り水路内に生育している。
ここではヤナギスブタ、スブタ、イトトリゲモ、ミズハコベ、イボクサなどとともに生育している。

Fig.15 水路内に生育するシャジクモ。(滋賀県高島市・水路 2011.9/27)
シャジクモは稀に流水域に見られることもある。おそらく水位の低い時期に発芽定着したものだろう。
湧水の流入があって水流はかなりきつく、他にナガエミクリの沈水形、ヤナギモ、センニンモなどが見られた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
廣瀬弘幸・山岸高旺, 1997. シャジクモ科. 『日本淡水藻類図鑑』 761〜777. 内田老鶴圃
須賀瑛文, 2001. 輪藻類. 浜島繁隆・土山ふみ・近藤繁生・益田芳樹編著 『ため池の自然』 81〜101. 信山社サイテック
笠井文絵・石本美和, 2011. 『しゃじくもフィールドガイド』 pp.17. 独立行政法人国立環境研究所

最終更新日:8th.Oct.2014

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