コナギ Monochoria vaginalis  (Burm. fil.) Kunth ミズアオイ科 ミズアオイ属
抽水植物
Fig.1 (岡山県真庭市・水田 2006.9/27)

水田、休耕田や用水路などに生育する抽水性の1年草。ウリカワ-コナギ群集の標徴種。
茎は短く、倒伏する。葉は根生し、高さ10〜40cm。
葉身は成長初期は線形、後に長楕円形または倒披針形となり、成葉は倒披針形、卵形、卵状心形と変化に富む。
長い葉柄があり、葉身の長さ2.5〜6cm、幅0.7〜4cm。基部の托葉は赤紫色を帯びる。
夏に葉鞘からごく短い柄のある総状花序出す。一見すると花序は葉柄の中程から出ているように見えるが、
葉柄と見えるものは鞘状となった総苞の基部付近が花茎を抱いているのであって、葉身と見えるものは総苞である。
花序には2〜8個の花がつき、花は青紫色、径1.5〜2cm、1日花で数時間しか開花しない。
柱頭は細く先端が3裂し、各片はさらに2裂し、子房は3室ある。
花茎は花後に下垂し、楕円形で長さ7〜10mmの刮ハを付ける。種子は0.7〜0.8mm。

白花のものをシロバナコナギ(f. albiflora)といい、ごく稀に見られる。
絶滅危惧種として知られるミズアオイM. korsakowii)は、花序が直立して葉よりも高くなり、多数の花をつける。
外来種で似たものにアメリカコナギHeteranthera limosa)があり、花序には1花だけが付き、花被片は先端がややとがったヘラ形で、
色は青紫色と白色の2型がある。
近似種 : ミズアオイ、アメリカコナギ

■分布:日本全土 ・ アジア、オーストラリア北部。アメリカとヨーロッパ南部に帰化。
■生育環境:水田、休耕田、用水路など。
■花期:8〜10月
■西宮市内での分布:全域に分布するが、平野部には少ない。

Fig.2 コナギの花。(岡山県真庭市・水田 2006.9/27)
  青紫色で、外花被片は長楕円形、内花被片は広楕円形。
  雄蕊6個のうち1個は長く、開花直前と閉花後に雌蕊が動いて長い雄蕊に触れ、自家受粉するという。
  では、短い雄蕊はどのような役割を担うのだろうか?

Fig.3 果実は刮ハ。(西宮市塩瀬町名塩・水田 2007.10/28)
  水田で倒れ込んで結実していたもの。そのためか、下垂していない。花被片は宿存して刮ハ表面に張り付いている。
  水没した状態でも結実するという。

Fig.4 成長初期のコナギ。(西宮市山口町・水田 2006.6/19)
  葉は線形で先はとがる。オモダカの幼葉に似るが、オモダカのほうは広線形で、先は急に狭くなり鈍頭〜やや鋭頭。

Fig.5 初期成葉を出し始めたコナギ。(西宮市・休耕田 2010.7/5)
  葉身と葉柄が分化しはじめている。葉柄は斜上するが、葉身は平開気味となる。

Fig.6 湛水状態の水田中で生育中のコナギ。(西宮市塩瀬町名塩・水田 2008.8/2)
  成葉直前の個体で、まるで葉身を浮葉のように水面上に浮かべ、水中にある葉柄の基部は太くなっている。

Fig.7 夏期の典型的なコナギの葉姿。(西宮市塩瀬町名塩・水田 2008.8/2)
  葉は卵形〜卵状心形で、多管質の長い葉柄を持つ。

Fig.8 イネの株元を埋めるコナギの群生。(愛知県長久手町・水田 2005.8/11)
  コナギは除草剤に強く、水田ではもっとも手強い強害草である。

生育環境と生態
Fig.9 水田でイボクサとともに群生するコナギ。(愛知県長久手町・水田 2005.8/11)

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
佐竹義輔, 1982. ミズアオイ科ミズアオイ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本T 単子葉類』 p.59. pls.54〜55. 平凡社
村田源, 2004 ミズアオイ科ミズアオイ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.171. pls.46. 保育社
牧野富太郎, 1961 コナギ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 820. 北隆館
角野康郎, 1994. ミズアオイ科ミズアオイ属. 『日本水草図鑑』 p.60. pls.62. 文一統合出版
大滝末男, 1980. コナギ. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 112〜113. 北隆館
諏訪哲夫. 2001. ミズアオイ科. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 232〜234. 神奈川県立生命の星・地球博物館
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. コナギ. 『六甲山地の植物誌』 220. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. コナギ. 『近畿地方植物誌』 138. 大阪自然史センター
角野康郎・高野温子 2005. コナギ. 兵庫県産維管束植物9 ミズアオイ科. 人と自然9:107. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:17th.July.2010

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