マツモ Ceratophyllum demersum  L. マツモ科 マツモ属
浮遊〜沈水植物
Fig.1 (西宮市・防火水槽 2012.9/6)

Fig.2 (滋賀県・小河川 2007.11/4)

湖沼、溜池、流れの緩やかな水路や河川に生育する多年生の浮遊または沈水植物。
ふつう水面下に浮遊しているが、茎の基部が仮根のような役割をして水底に固着して沈水状態となることがある。
4〜5月、種子から発芽するが、子葉は外に出ず、幼芽から本葉を展開し、種子の突起が水底に固着する錨の役割をする。
殖芽から伸びた茎は盛んに分枝して、長さ20〜120cmとなり、水面で横に広がる。
葉はふつう暗緑色または褐緑色、5〜10個が輪生し、長さ8〜35mm、線状の裂片が1〜2回2叉状に分かれ、裂片の縁には鉤状の小さな鋸歯がある。
年間を通じて開花を見ない集団が多いが、開花する集団では多数の花をつけ、結実率もよい。
花は雄花と雌花に分かれ、ともに宿存性の総苞があり、ともに目立つ花被はなく、同一茎上の別の節にそれぞれ1個づつつく。
開花は雄花が早く、雄花は10個余りの雄蕊が集まり、花糸はほとんどなく、葯は長楕円形で、先に2個の小さいとがった突起がある。
雌花は1個の雌蕊があり、子房は長卵形で、先には宿存性の鉤形の花柱が1個ある。
受粉は水中媒により行われ、花粉は水中をただよって雌蕊にたどりつく。
果実は本体の長さ3〜4.5mm、硬く、先端と基部の両側に計3本の長い刺状の突起がある。
晩秋に茎の先端に葉が密集し、長さ2〜6cmの筆状の殖芽をつくり、これが水底に沈み越冬する。

酷似する変種にゴハリマツモ(ヨツバリキンギョモ)(var. quadrispinum)があり、本州に稀産する。果実がないとマツモとの区別は困難で、
果実の上下にそれぞれ2本づつの突起があり、先端のものを加えると合計5本となる。
近似種 : ゴハリマツモ

■分布:日本全土 ・ 世界の温帯〜熱帯に広く分布。
■生育環境:湖沼、溜池、流れの緩やかな水路や河川など。
■花期:5〜8月
■西宮市内での分布:市内では防火水槽や農業用水枡、鋤洗い場などで見かけることがあるが、これらは移入だろう。

Fig.3 全草の様子。(滋賀県・湖沼 2008.9/8)
  茎は葉腋から盛んに枝を分ける。葉は5〜10個が輪生する。

Fig.4 枝の頂部に殖芽を形成したマツモ。(兵庫県三田市・溜池 2009.10/16)
  秋に殖芽を形成する。この時期、すでに池畔にはいくつかの殖芽が流れ着いていた。

Fig.5 冬期に見られる殖芽。(兵庫県三木市・溜池 2007.2/25)
  マツモは種子か殖芽で越冬する。殖芽は多数の葉が密集して筆状となり、水底に沈む。

Fig.6 殖芽は生育環境などにより、ときに強く赤味を帯びる。(自宅植栽 2006.12/24)

Fig.7 水槽内で繁茂するマツモ。(自宅植栽 2007.2/16)
  マツモの生育速度は速く、20cm前後の草体3本が、約1ヶ月後には画像のように90cm水槽の片側を埋めてしまった。

生育環境と生態
Fig.8 緩やかな流れの小河川に生育するマツモ。(滋賀県・小河川 2008.9/8)
茎の基部を泥中に固着させ、茎を伸ばし、水面上に広がる。

Fig.9 水田中に見られたマツモ。(兵庫県明石市・水田 2008.8/31)
マツモは本来、水田には生育しない。圃場整備が進んだ水田では冬期に乾燥し、殖芽は死滅してしまう。
おそらく、近くの溜池にあったものが用水路を伝って流入したものだろう。
画像右のマツモよりも細い糸状の葉を持つ草体は淡水藻類のシャジクモ。

Fig.10 小河川の止水域にガガブタとともに生育するマツモ。(兵庫県赤穂市・小河川 2008.8/8)
小河川の河口が灌漑用に堰き止められて、長大な止水域が形成されておりガガブタ群落が発達する。
この止水域にクロモ、コカナダモ、ホザキノフサモ、ヒシなどとともに生育している。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
田村道夫, 1982. マツモ科マツモ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.97. pl.96. 平凡社
北村四郎, 2004 マツモ科マツモ属. 北村四郎・村田源 『原色日本植物図鑑 草本編(2) 離弁花類』 p.249〜250. pl.56. 保育社
大滝末男, 1980. マツモ. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 86,87. 北隆館
角野康郎, 1994. マツモ科マツモ属. 『日本水草図鑑』 p.117. pl.119. 文一統合出版
牧野富太郎, 1961 マツモ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 165. 北隆館
浜島繁隆, 2001. ため池の植物 水草の生育と繁殖様式 1,沈水植物. 『ため池の自然』 70〜74. 信山社サイテック
村田源. 2004. マツモ. 『近畿地方植物誌』 112. 大阪自然史センター

最終更新日:21st.Mar.2014

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