ニシノオオアカウキクサ Azolla filiculoides  Lam. アカウキクサ科 アカウキクサ属
浮遊植物 (帰化植物?)
Fig.1 (兵庫県丹波市・休耕田 2010.9/5)

Fig.2 (兵庫県丹波市・休耕田 2014.2/21)

湖沼、溜池、水路、水田、休耕田などに浮遊する多年草。
これまで、オオアカウキクサ大和型とされてきたもの。
アロザイム解析によりアメリカ大陸原産のA. filiculoidesと一致することが確かめられた。帰化植物の可能性もある。
夏期は表面が淡緑色であるが、冬期は水面を覆って一面紅色となる。
植物体はやや5角形状で、径1〜2cm。根には根毛がある。茎は密に羽状に分岐する。
葉は2列に互生して上下の2裂片に分かれ、覆瓦状に密につき、鱗片状で長さ1〜2mm、表面には1細胞の突起が並ぶ。
上側の裂片は水面に浮かび、組織の間に粘液質が満たされた腔所があり、藍藻の一種アナベナ(Anabaena azollae)が共生する。
胞子嚢群は水中の葉の間につき、初夏〜夏に成熟する。
異形胞子性で、小胞子嚢群は多数の小胞子嚢が球形の袋状の包膜で包まれ、小胞子嚢には多数の小胞子と数個の球状体(マスラ)がある。
マスラ表面にはグロキディウムという長い突起があり、先は錨状で、突起には隔壁がないか、または1個ある。
大胞子嚢群は1個の大胞子嚢が包膜で包まれ、1個の大胞子がつくられる。

オオアカウキクサA. japonica)は日本固有種。葉の長さ2〜3mm、表面の突起は目立たず1細胞性。グロキディウムには3〜7個の隔壁がある。
アメリカオオアカウキクサA. cristata)はアメリカ大陸原産。特定外来生物。葉表面の突起は2細胞以上。グロキディウムの隔壁は2個以上。
アイオオアカウキクサA. cristata × A. filiculoides)は葉表面の突起は1細胞の突起に2細胞の突起が混ざる
アカウキクサA. imbricata)は植物体は3角形状となる。根には脱落しない長さ2〜4mmの長い根毛がある。
近似種 : オオアカウキクサ、アイオオアカウキクサ、アメリカオオアカウキクサ、アカウキクサ

■分布:本州、四国、九州に帰化? ・ 南北アメリカ、アジア(帰化)、ヨーロッパ(帰化)。
■生育環境:湖沼、溜池、水路、水田、休耕田など。
■西宮市内での分布:市内では見られない。

Fig.3 全草標本。(兵庫県丹波市・休耕田 2014.2/21)
  植物体はやや5角形状で、径1〜2cm。冬期には著しく紅変する。茎は密に羽状に分岐する。
  葉は2列に互生して上下の2裂片に分かれ、覆瓦状に密につき、鱗片状で長さ1〜2mm

Fig.4 葉表面には突起が並ぶ。(兵庫県丹波市・休耕田 2014.2/21)

Fig.5 突起の拡大。(兵庫県丹波市・休耕田 2014.2/21)
  葉表面の突起は1細胞。

Fig.6 気孔。(兵庫県丹波市・休耕田 2014.2/21)
  突起の間には気孔があり、孔辺細胞は1細胞からなる。
  オオアカウキクサの孔辺細胞は上下に仕切りがあり、2細胞になるようだ。

Fig.7 根。(兵庫県丹波市・休耕田 2014.2/21)
  茎の下面から数本の根を出す。根には最初は根毛がないが、根毛を包む根嚢が剥がれて根毛が出てくる。
  画像には3本の根が見えているが、最も短いものはまだ完全に根嚢に包まれており、下のものは先端付近が根嚢に包まれている。

Fig.8 根毛の拡大。(兵庫県丹波市・休耕田 2014.2/21)
  根毛は1細胞からなり、根に輪生している。

Fig.9 共生するAnabaena azollae。下は拡大。(兵庫県丹波市・休耕田 2014.2/21)
  葉の上辺の粘液内で共生するアナベナ属の藍藻。途中に大きな楕円形の異型細胞を持つ。
  アナベナ属にはソテツの根粒中に共生する種もある。

Fig.10 上裂片の腹面にある孔。(兵庫県丹波市・休耕田 2014.2/21)
  白味を帯びた突起のある細胞に囲まれて腔所に続く孔がある。共生するAnabaena azollaeがこの孔から入る。

Fig.11 陸生する集団。(兵庫県丹波市・休耕田 2014.2/21)
  陸生するものは上に重なるように成長する。

生育環境と生態
Fig.12 休耕田で陸生するニシノオオアカウキクサ。(兵庫県丹波市・休耕田 2010.9/5)
定期的に耕起されている山際の湧水の滲み出す管理休耕田に生育している。
同所的にイチョウウキゴケ、ミゾハコベ、キクモ、アゼナ、チョウジタデ、コケオトギリ、コウガイゼキショウ、ヒデリコ、ヒナガヤツリ、
タマガヤツリ、タイヌビエ、ムツオレグサ、ヒメミズワラビなどが生育している。

Fig.13 素掘りの排水路内に生育するニシノオオアカウキクサ。(兵庫県丹波市・休耕田 2014.2/21)
しみ出した湧水を排水するための素掘りの水路に生育しているもので、水路内にはイチョウウキゴケ、ミズハコベ、セリ、オオバタネツケバナ
などが生育している。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
角野康郎. 1994. アカウキクサ科. 『日本水草図鑑』 p.13. pl.15. 文一統合出版
大滝末男. 1980. オオアカウキクサ. アカウキクサ. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 264〜265. 北隆館
岩槻邦男. 1992. サンショウモ科. 『日本の野生植物・シダ』 p.285. pl.196. 平凡社
植村修二ほか. 2010. 池一面を真っ赤に染めた浮草-アゾラ-. 『日本帰化植物写真図鑑 2』 470〜473. 全国農村教育協会
鈴木武. 2002. オオアカウキクサ(アカウキクサ科)の種内変異−. 種生物学会 『保全と復元の生態学』 175〜189. 文一統合出版
白岩卓巳.2000. 絶滅危惧植物 水生シダは生きる:39−94. 自費出版.
白岩卓巳・鈴木武. 1999. オオアカウキクサ. 兵庫県産維管束植物1 アカウキクサ科. 人と自然10:115. 兵庫県立・人と自然の博物館
渡辺巌. 2008. アゾラについて webサイト http://www.asahi-net.or.jp/~it6i-wtnb/azolla.html
平野實・廣瀬弘幸. 1977. アナベナ属. 廣瀬弘幸・山岸高旺 編『日本淡水藻図鑑』 86〜93. 内田老鶴圃

最終更新日:25th.Feb.2014

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