サンショウモ Salvinia natans  (L.) All. サンショウモ科 サンショウモ属
浮遊植物 環境省準絶滅危惧(NT)・兵庫県RDB Aランク種
Fig.1 (兵庫県・溜池 2013.10/10)

湖沼、溜池、水路、水田などに浮遊する1年草。暖地では冬季も枯れず常緑となる。
富栄養化の進んだ水域で水面一面に群生することがあるが、消長が激しく、近年は急激に自生地が減少している。
茎は長さ3〜10cm、径約1mm、まばらに分枝する。根は無く、2個の浮葉と、1個の水中葉が3輪生する。
浮葉は見かけ上、茎に対生してつき、単葉で長楕円形、長さ8〜15mm、幅4〜10mm、ほぼ全縁、短柄がある。
葉の表面には短い突起が密にあり、その先に束になった毛がつき、葉裏には軟毛がある。水中葉は細裂して根状(仮根)となる。
秋ごろから水中葉の基部に球形の大胞子嚢と小胞子嚢が生じて、10〜12月に成熟する。染色体数n=9、2n=18の2倍体。

ナンゴクサンショウモS. cucullata)は南・東南アジア原産。葉は長さより幅のほうが広く、表面には毛が不規則に曲がった列となって並ぶ。
オオサンショウモS. molesta)は熱帯アメリカ原産。葉は軍配状となり、長さ2〜3cm、幅2〜2.5cm、表面の毛束は内側に曲がる。要注意外来生物。
近似種 : ナンゴクサンショウモ、オオサンショウモ

■分布:本州、四国、九州 ・ アジア、ヨーロッパ、アフリカ(帰化?)、アメリカ(帰化)。
■生育環境:湖沼、溜池、水路、水田など。
■西宮市内での分布:市内では見られない。兵庫県内でもごく稀である。

Fig.2 全草標本。(兵庫県・溜池 2013.10/10)
  茎は長さ3〜10cm、まばらに分枝し、浮葉を対生する。水中の根のようなものは、根状となった水中葉で、根はない。

Fig.3 浮葉。(兵庫県・溜池 2013.10/10)
  単葉で長楕円形、長さ8〜15mm、幅4〜10mm、ほぼ全縁、短柄がある。
  近似のナンゴクサンショウモの葉は幅広い広円形となり、オオサンショウモの葉は大きく、長さ2〜3cm、幅2〜2.5cmになる。

Fig.4 浮葉の表面。(兵庫県・溜池 2013.10/10)
  葉の表面には短い突起が密にあり、その先に束になった毛がつき、これによって水を弾く。
  サンショウモは毛束の先が接しないが、近似のオオサンショウモは毛が内側に曲がり、毛束の先が相接しがちとなる。

Fig.5 水中葉(仮根)。(兵庫県・溜池 2013.10/10)
  水中葉は水中から栄養分を吸収し、根と同様な機能を持つ。
  水中葉の基部には胞子嚢群がつく。胞子嚢表面には毛が生える。

Fig.6 胞子嚢。(兵庫県・溜池 2013.10/10)
  胞子嚢は多数の小胞子嚢と少数の大胞子嚢があるが、上にある葉が緑色を保っている時は外見からは区別できない。
  画像中にはあたりに散らばった小胞子と大胞子が写っている。
  この時点では、大胞子は水底に沈んでいき、小胞子は水面を浮遊していた。

Fig.7 大胞子と小胞子の大きさ。(兵庫県・溜池 2013.10/10)
  左は大胞子で長卵形、長さ0.3〜0.5mm、右は小胞子で球形、径約0.15mm。

Fig.8 冬期の胞子嚢群。(自宅育成 2014.2/24)
  大胞子嚢1個と、小胞子嚢2個が見える。

Fig.9 小胞子(左)と大胞子(右)の拡大。(自宅育成 2014.2/24)
  ともに格子模様がある。小胞子の表面には、何かの白い卵らしきものが産み付けられている。

Fig.10 前葉体(矢印)から伸びた若い個体。(自宅育成 2014.5/16)

生育環境と生態
Fig.11 溜池の水面をびっしりと覆ったサンショウモ。(兵庫県・溜池 2013.10/10)
サンショウモは多少とも富栄養化の進んだ水域を好み、生育条件があうと水面を覆って群生する。
ここでは谷津の中程に溜池があり、溜池上部の水田は耕作放棄されて全て休耕田となっている。

Fig.12 ヒシやクログワイとともに生育するサンショウモ。(兵庫県・溜池 2013.10/10)
Fig.10と同じ溜池で、同様に栄養分の多い環境を好むヒシ、クログワイ、キシュウスズメノヒエ、ヨシなどとともに生育している。

Fig.13 刈り取り後の湿田に群生するサンショウモ。(京都府・棚田 2013.10/11)
除草剤が全く使用されてこなかった棚田の湿田内に群生していた。
除草剤を使わないこの谷津では、多くの水田でサンショウモが生育していた。やはりサンショウモは除草剤に弱いようだ。
浮葉植物はおそらくヒルムシロで、河川や水路では見るが、やはり水田内で見かけることは少なくなってしまった。
この他、この湿田内ではマルバノサワトウガラシ、ヤナギスブタなどの稀少種、イボクサ、ヒロハイヌノヒゲ、ニッポンイヌノヒゲ、
コナギ、ミズガヤツリ、マツバイ、クログワイ、チゴザサ、ヤノネグサ、トキワハゼ、ミゾカクシ、タウコギなどの在来水田雑草が生育する。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
角野康郎. 1994. サンショウモ科. 『日本水草図鑑』 p.12〜13. pl.14. 文一統合出版
大滝末男. 1980. サンショウモ. オオサンショウモ. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 266〜269. 北隆館
秋山守. 2001. サンショウモ科. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 149. 神奈川県立生命の星・地球博物館
光田重幸. 1986. サンショウモ. 『しだの図鑑』 p.32. pl.30 保育社
岩槻邦男. 1992. サンショウモ科. 『日本の野生植物・シダ』 p.284. pl.195. 平凡社
植村修二ほか. 2010. オオサンショウモ. 『日本帰化植物写真図鑑 2』 385. 全国農村教育協会
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. サンショウモ. 『六甲山地の植物誌』 99. (財)神戸市公園緑化協会
白岩卓巳・鈴木武 1999. サンショウモ. 兵庫県産維管束植物1 サンショウモ科. 人と自然10:115. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:25th.Nov.2014

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