トチカガミ Hydrocharis dubia  (Bl.) Backer トチカガミ科 トチカガミ属
水生植物 > 浮遊・浮葉植物  環境省準絶滅危惧種・兵庫県RDB Aランク  西宮市絶滅種
Fig.1 (滋賀県・湖沼 2011.8/18)

富栄養な湖沼、溜池やよどんだ水路などに生育する多年生の浮葉を持つ浮遊植物。
水中茎が横に伸び、各節から根毛の発達した根と数枚の葉が展開する。
葉柄は長さ4〜20cm、葉身は円形、直径2〜7cm、基部は心形または深く切れ込む。
裏面には気嚢があってふくらむが、葉が混み合って気中に出る場合はこの特徴が顕著ではない。
雌雄同株、ときに異株で、雌雄異花。花柄は長さ2.5〜8cm、花弁は3個で白色、長さ1〜1.3cm。
雄花は12個の雄蕊が、雌花には6個の仮雄蕊と6個の雌蕊がある。
果実は卵形〜長楕円形で長径5〜9mm、短径5〜7mm。種子は楕円形、長さ約1mm。
秋から冬にかけて、水中茎の先端が長さ2〜4cmの殖芽となり、水底に沈んで越冬する。

■分布:本州、四国、九州、沖縄 ・ 中東を除くアジア、オーストラリア
■生育環境:富栄養な湖沼、溜池、よどんだ水路など。
■花期:8〜10月
■西宮市内での分布:市内では甲陽大池からの記録があるが、現在では絶滅して見られない。

Fig.2 水面下に伸びる水中茎。(滋賀県・湖沼 2011.9/28)
  水中茎が横に伸び、各節から根毛の発達した根と数枚の葉が展開する。

Fig.3 浮葉。(滋賀県・湖沼 2011.9/28)
  葉身は円形、直径2〜7cm、基部は心形または深裂し、裂片は多くの場合わずかに重なる。脈は掌状で、5〜9脈が明瞭。

Fig.4 浮葉には長さ4cmから20cmにおよぶ葉柄がある。(滋賀県・湖沼 2011.9/28)
  葉柄基部には2個の托葉がつき、托葉は卵状披針形、膜質で、長さ2.5〜3.5cm。

Fig.5 葉身裏面には気嚢があってふくらむ。(滋賀県・湖沼 2011.8/18)

Fig.6 気嚢の拡大。(滋賀県・湖沼 2011.9/28)
  気嚢はおおむね6角柱状の多数の気室からなり、その高さは2〜5o。

Fig.7 浮葉が混み合ってくると、気中に葉を立ち上げる。(滋賀県・湖沼 2011.9/28)
  気中に現れた葉では気嚢が退化して不明瞭となる。

Fig.8 開花したトチカガミ(雄花)。(滋賀県・湖沼 2011.8/18)
  夏〜秋、托葉の基部から花茎を伸ばし、白色の単性花を上向きに開く。
  雄花の場合、浮葉の葉腋から長さ1cm前後の花茎が出て、その上方に1個の苞鞘ができ、その内部にふつう5個のつぼみをつける。
  つぼみは順次長さ3〜6cmの細い花柄を水面上に伸ばして、その先端に1日花を開く。
  画像では開花中の花が出た苞鞘から、次に開花する花のつぼみが苞鞘内から少し出ている。

Fig.9 雄花。(滋賀県・湖沼 2012.9/7)
  雄花は12個の雄蕊があり、花柄は細い。

Fig.10 雌花。(滋賀県・湖沼 2012.9/7)
  雌花には6個の仮雄蕊と6個の雌蕊がある。
  雌花の花柄は雄花のものよりもはるかに太く、径3〜4mmで鈍稜がある。

Fig.11 2岐する雌蕊と、仮雄蕊。(滋賀県・湖沼 2012.9/7)
  雌蕊は2岐し、柱頭には粒状の突起がある。
  仮雄蕊は雌蕊の外周にあって、雌蕊と互生し、先には葯を持たない。

Fig.12 未熟な果実。(滋賀県・湖沼 2011.9/28)
  花後、花柄は下向きに曲がり、5〜10cmに伸びて、水中で成熟を待つ。
  果実は卵形〜長楕円形で長径5〜9mm、短径5〜7mm。

Fig.13 殖芽。(自宅植栽 2012.12/9)
  晩秋になると水中茎の先端に葉鞘に包まれた殖芽を形成する。
  殖芽は水底に沈んで越冬する。

Fig.14 発根・発芽した殖芽。(自宅植栽 2013.4/9)
  まず殖芽基部から発根し、続いて発芽すると同時に水中茎を伸ばし、伸びた水中茎の先から続いて発根発芽する。
  この状態の時はまだ水底に沈んでいる。

生育環境と生態
Fig.15 波静かな琵琶湖の港湾内に生育するトチカガミ。(滋賀県・湖沼 2011.9/28)
初夏にはわずかにしか見られなかった草体も秋になると水面上のかなりの面積を覆って多くの花を開花する。
ここではオニビシや流れ着いたマツモなどとともに生育している。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
角野康郎, 1994 トチカガミ科トチカガミ属. 『日本水草図鑑』 28〜30. 文一統合出版
大滝末男, 1980 トチカガミ. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 34,35. 北隆館
山下貴司, 1981. トチカガミ科トチカガミ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本1 合弁花類』 p.3〜4. pl.3. 平凡社
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. トチカガミ. 『六甲山地の植物誌』 214. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. トチカガミ. 『近畿地方植物誌』 197. 大阪自然史センター
兵庫県. 2010. トチカガミ. 『兵庫の貴重な自然 兵庫県版レッドデータブック2010(植物・植物群落)』 108. (財)ひょうご環境創造協会
角野康郎・中村俊之・高野温子 2007. トチカガミ. 兵庫県産維管束植物9 トチカガミ科. 人と自然18:87. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:7th.Mar.2014

<<<戻る TOPページ