イガクサ | Rhynchospora rubra (Lour.) Makino | カヤツリグサ科 ミカヅキグサ属 |
湿生植物 |
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Fig.1 (西宮市・崩壊地の草地 2009.11/4) |
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Fig.2 (兵庫県姫路市・ハゲ山の草地 2011.11/28) 日当たりのよい湿った草地や湿地に生育する多年草。 あまり叢生はせず、匍匐枝はなく、有花茎は直立し、高さ20〜50cm、平滑、鈍稜がある。 葉は根生し、幅1.5〜2.5mm、溝状で、有花茎よりも短い。 花序は頭状、球形〜半球形で、花茎に頂生し、多数の淡黄緑色の小穂がつき、苞葉は開出して、葉身は5〜8個で葉状。 小穂は広披針形、長さ5〜7mm、5〜6個の鱗片があり、2〜3個の花がある。 鱗片は広披針形で長いものは6mmに達し、鋭頭。 痩果は広倒卵形、横断面はレンズ形、長さ1.5〜1.8mm、上縁には短毛がまばらにつく。柱基はキャップ状で、長さ0.3mm。 刺針状花被片は6本、長さは痩果の1/3〜1/2、上向きにざらつく。柱頭は分枝せず1個。 近似種 : ■分布:本州(近畿以西)、四国、九州、沖縄 ・ 中国、台湾、インド、インドネシア、オーストラリア ■生育環境:湿地、崩壊地など。 ■果実期:8〜10月 ■西宮市内での分布:市内では中部の湿地や崩壊地などで見られる。 |
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↑Fig.3 全草標本。(西宮市・崩壊地の草地 2009.11/4) 匍匐枝はなく、あまり叢生はしない。葉は有花茎よりも短く、根生する。画像のものは高さ50cm程度。 |
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↑Fig.4 花序。(兵庫県姫路市・ハゲ山 2013.9/24) 花序は茎頂に単生し、小穂が頭状に多数集まる。花序の基部には葉状の苞葉が数個つく。 |
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↑Fig.5 花序の拡大。(兵庫県姫路市・ハゲ山の草地 2013.9/24) 小穂の先から長く飛び出ているのは花柱で、分枝せず1個が長く伸びており、単純である。 白色のものは葯で、線形、2個ある。 |
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↑Fig.6 晩秋の花序。(西宮市・崩壊地の草地 2009.11/4) 花序は秋のはじめには熟すが、冬場になっても枯れ落ちず、翌春になっても残っているものがある。 画像のものはすでにいくつかの小穂が痩果とともに脱落している。 |
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↑Fig.7 小穂。(西宮市・崩壊地の草地 2009.11/4) 小穂は広披針形で、光沢があり、5〜6個の鱗片からなり、中に2〜3個の花がある。 |
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↑Fig.8 痩果。(西宮市・崩壊地の草地 2009.11/4) 長さ1.5〜1.8mm、広倒卵形で赤褐色、横断面はレンズ形、上端付近には短毛が生え、表面には細かい格子模様がある。 刺針状花被片は6個、痩果の1/3〜1/2長で上向きの小刺があり、ざらつく。柱基はキャップ状。 |
西宮市内での生育環境と生態 |
Fig.9 崩壊地に生育するイガクサ。(西宮市・崩壊地の草地 2009.11/4) 解りにくいが、えぐれた涸れ沢と矮小化したネザサの間にある、茶枯れた茎を直立しているのがイガクサ。 涸れ沢の湧水がにじみ出す部分よりも少し上部にトダシバ、メリケンカルカヤ、アリノトウグサ、ネザサなどとともに生育している。 少し下方では土壌に表水が見られ、ヌマガヤ、イヌノハナヒゲ、ヤマイなどが見られるが、イガクサの生える地表は少し湿っている程度だった。 |
他地域での生育環境と生態 |
Fig.10 バッドランドに群生するイガクサ。(兵庫県たつの市・岩山 2010.12/6) ハゲ山状の岩山の農道脇の粘土質土壌で滞水しやすい箇所に群生が見られた。 農道脇の斜面にはススキやコシダがまばらに生育し、斜面の直下にトダシバ、ヒメカリマタガヤ、メリケンカルカヤ、アリノトウグサ、ノイバラ、 ニガナなどとともに生育し、ところによってはノグサが混生していた。 |
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Fig.11 ハゲ山の草地に群生するイガクサ。(兵庫県姫路市・ハゲ山の草地 2011.11/28) 流紋岩質の痩せたハゲ山の草地部分のやや湿った場所にかたまって群生していた。 草地は成育の悪いネザサを主体として、オガルカヤ、ウンヌケ、トダシバなどのイネ科草本、ヤマラッキョウ、ツルボ、イシモチソウ、オオヒキヨモギ、 オミナエシ、リュウノウギク、ヤマジソ、ニガナなどが生育し、ところどころにイガクサが生育している。 |
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Fig.12 湿原周縁部の草地に生育するイガクサ。(兵庫県多可郡・草地 2011.9/17) 湿原周縁部の農道脇の刈り込まれた草地斜面にイガクサが点在していた。 草地斜面は刈り込まれたネザサ主体で、ミズスギとともにイガクサがまばらに生育している。 斜面直下は湿ったシバ地となっており、そこでは小さなヒナノカンザシが無数に生育していた。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 大井次三郎, 1982 カヤツリグサ科ミカヅキグサ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本T 単子葉類』 p.170〜171. pls.152〜153. 平凡社 小山鐡夫, 2004 カヤツリグサ科イヌノハナヒゲ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.251〜254. pls.63〜64. 保育社 牧野富太郎, 1961 イガクサ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 775. 北隆館 星野卓二・正木智美, 2003 イガクサ. 星野卓二・正木智美・西本眞理子『岡山県カヤツリグサ科植物図譜(U)』 194,195. 山陽新聞社 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. イガクサ. 『六甲山地の植物誌』 252. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. イガクサ. 『近畿地方植物誌』 166. 大阪自然史センター 黒崎史平・松岡成久・高橋晃・高野温子・山本伸子・芳澤俊之 2009. イガクサ. 兵庫県産維管束植物11 カヤツリグサ科. 人と自然20:175. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:26th.Sept.2013 |