オギノツメ | Hygrophila salicifolia (Vahl) Nees | キツネノマゴ科 オギノツメ属 |
湿生植物 兵庫県RDB Cランク種・西宮市絶滅種 |
Fig.1 (兵庫県神戸市・用水路脇 2010.10/20) |
||
Fig.2 (兵庫県福崎町・溜池畔 2011.11/29) 低地の湿地や溜池畔、用水路脇、休耕田などに生える多年草。 根茎を地下に横走し、節から多数の根と地上茎を出し、群生することが多い。 地上茎は方形で直立し、高さ30〜70cm、ほとんど無毛。節や葉柄の基部には長毛がある。 葉は長さ3〜15cmで線状披針形、鈍頭、基部はしだいに細くなって短い柄となり、全縁ときに縁は波打つ。 花は夏〜秋に開花し、葉腋に柄のない数個の花を束生する。 苞は披針形で萼と同長かやや短く、小苞は線形で萼より短い。 萼裂片は線形でとがり、花期に長さ約6mm、果期には10mmほどになり、線状の結晶体と長毛が散生する。 花冠は淡紫色で、長さ1〜1.3cm、外面には軟毛が散生し、唇弁は長さ3〜5mm。 刮ハは長さ7〜10mm、幅1.5〜2mm。種子は長さ1mm。 【メモ】 本種は暖地系の湿生植物で、県南部の沖積平野に記録があるが、開発により激減している。 過去に西宮市内の平野部にも記録があったが、現在では確認できず絶滅したと思われる。 ■分布:北海道、本州、四国、九州 ■生育環境:湿地、溜池畔、用水路脇など。 ■花期:8〜10月 ■西宮市内での分布:市内の古い標本があるが、現在は絶滅したと考えられる。 |
||
↑Fig.3 茎。(兵庫県神戸市・用水路脇 2010.10/20) 茎は方形で、直立し、稜はやや張り出す。茎下部で分枝し、基部近くでは節から発根することが多い。 |
||
↑Fig.4 茎と葉の毛。(兵庫県神戸市・用水路脇 2010.10/20) 節と、葉面中央脈の基部近くには明瞭な毛が生える。 |
||
↑Fig.5 葉。(兵庫県神戸市・用水路脇 2010.10/20) 葉は対生してつき、線状披針形で、全縁だが、縁は波打つことが多い。 |
||
↑Fig.6 葉裏の拡大。(兵庫県神戸市・用水路脇 2010.10/20) 葉縁には短毛が並ぶ。葉面は基部中央脈上に毛が生えるほか、葉裏の脈上にも伏毛が生える。 |
||
↑Fig.7 オギノツメの花。(兵庫県神戸市・用水路脇 2010.10/20) 花は無柄で、葉腋に数個が束生する。花冠は唇形で、長さ1〜1.3cm、唇弁は長さ3〜5mm。 花冠の花筒部の2/3は萼裂片に包まれるため、花はあまり大きくは見えない。 |
||
↑Fig.8 花冠。(兵庫県神戸市・用水路脇 2010.10/20) 花冠の外面には軟短毛がやや密に生える。上唇は浅2裂し、下唇は浅3裂し、下唇の幅が少し広い。 下唇の中央裂片の基部には2本の隆条がある。雄蕊は長短それぞれ2本ずつ(計4本)あり、雌蕊は1個。 |
||
↑Fig.9 果実形成期。(兵庫県神戸市・用水路脇 2010.10/20) 花後、萼裂片は刮ハとともに伸長する。花柱は刮ハが熟すまで宿存する傾向が強い。 |
||
↑Fig.10 未熟な刮ハ。(兵庫県神戸市・用水路脇 2010.10/20) 刮ハは披針形。画像の刮ハは下半部が線形の萼裂片と、それよりも短い長卵形〜卵形の小苞に包まれている。 萼裂片、小苞ともに長軟毛が生えている。 |
||
↑Fig.11 熟した刮ハ。(兵庫県福崎町・溜池畔 2011.11/29) 刮ハは熟すとやや光沢を帯びた茶褐色となる。刮ハは2室あり、よく熟した刮ハは乾くと2裂する。 |
||
↑Fig.12 種子。(兵庫県福崎町・溜池畔 2011.11/29) 種子は扁平な卵円形、濃褐色、径約1mm、表面には短毛が生えている。 |
生育環境と生態 |
Fig.13 用水路内に群生するオギノツメ。(兵庫県神戸市・用水路 2010.10/20) やや広い用水路内はアゼスゲ群落が発達し、ボントクタデ、サクラタデ、マコモ、キシュウスズメノヒエなどとともにオギノツメが生育していた。 |
||
Fig.14 護岸された水路内に生育するオギノツメ。(兵庫県加古川市・水路 2011.10/29) 溜池から続く3面コンクリートの護岸された水路内にオギノツメの小群生が見られた。 溜池内にも生育するが個体数は少なく、水路内では浅い泥の溜まった場所にかたまって生育している。 同所的にツユクサ、ヌカキビ、キシュウスズメノヒエ、キツネノマゴが見られ、ツユクサとオギノツメの茎の上部は、ヌートリアの食害に遭っていた。 |
||
【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 山崎敬, 1981. キツネノマゴ科オギノツメ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本3 合弁花類』 p.126. pl.109. 平凡社 北村四郎・村田源, 2004 オギノツメ. 『原色日本植物図鑑 草本編(T) 合弁花類』 p.118. pl.38. 保育社 三輪徳子・城川四郎. 2001. オギノツメ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1276. 神奈川県立生命の星・地球博物館 牧野富太郎, 1961 オギノツメ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 576. 北隆館 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. オギノツメ. 『六甲山地の植物誌』 188. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. オギノツメ. 『近畿地方植物誌』 46. 大阪自然史センター 黒崎史平・高野温子 2006. オギノツメ. 兵庫県産維管束植物7 キツネノマゴ科. 人と自然16:112. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:8th.Dec.2011 |