オヘビイチゴ Potentilla sundaica  (Bl.) O. Kuntze
  var. robusta  (Franch. et Savat.) Kitag.
バラ科 キジムシロ属
湿生植物
Fig.1 (西宮市・農道脇)

Fig.2 (兵庫県篠山市・用水路脇 2011.5/4)

水田の畦のような湿った場所を好むが、乾いた林道脇などにも見られ適応範囲の広い多年草草本。
中栄養な湿地にも自生していることがある。
茎には軟毛があり、地面を這って横に広がる。
花はヘビイチゴに似るが、イチゴのような果実はつくらず、褐色の種子の集合果となる。
萼片の外側には副萼片と呼ばれる萼状の葉茎が変化したものがある。
根生葉は掌状複葉で、小葉は5枚。花茎の上部に付く葉は3小葉となる。

■分布:本州、九州 ・ 朝鮮半島、中国、マレーシア
■生育環境:湿地、水田の畦や、ややしめった道端。
■花期:5〜6月
■西宮市内での分布:中・北部の水田の畦などで普通に見られる。

Fig.3 オヘビイチゴの根生葉。(兵庫県三田市・農道 2007.5/11)
  掌状複葉で小葉は5枚。外縁には毛が生じる。

Fig.4 開花がはじまったばかりのオヘビイチゴ。(兵庫県三田市・農道 2007.5/11)
  蕾のものは副萼片がよく観察できる。

Fig.5 果実期。(神戸市・用水路脇 2014.6/20)
  キジムシロ属であるためヘビイチゴのように果床はふくらまない。

Fig.6 Fig.5の拡大。(神戸市・用水路脇 2014.6/20)
  すでに多くの種子が落ちていた。

Fig.7 オヘビイチゴの越冬態。(兵庫県篠山市・河畔 2009.1/11)
  冬期は紅葉したロゼットを広げているものが多い。
  画像のものは毛がほとんどなく、葉には光沢があるが、有毛の個体も見かけることがある。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.8 水田の畦に広がったオヘビイチゴ。(西宮市・水田の畦 2007.6/10)
アキノタムラソウやミミナグサ、アオスゲ、オオジシバリなどとともに畦に生育していた。

Fig.9 水田の縁に生育するオヘビイチゴ。(西宮市・水田の畦 2010.6/24)
コンクリートで造られた畦の脇のわずかな盛り土部分にチガヤやシロツメクサとともに見られた。

他地域での生育環境と生態
Fig.10 休耕田で群生するオヘビイチゴ。(兵庫県三田市・休耕田 2008.5/22)
湛水する部分の少ない休耕田の一画をオヘビイチゴの群生が埋めていた。
同じ休耕田内でも湛水状態の場所ではイヌビユやコウガイゼキショウ、イボクサ、カサスゲ、アゼスゲ、コジュズスゲなどの単子葉類が多かった。

Fig.11 湿地に生育するオヘビイチゴ。(兵庫県三田市・湿地 2009.5/11)
セリ、キツネノボタン、ネコノメソウ、アカバナ、オタルスゲ、タニガワスゲ、オニスゲが生育するやや中栄養な湿地に見られた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
籾山泰一, 1982. バラ科キジムシロ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.177〜181. pls.168〜172. 平凡社
村田源, 2004 バラ科キジムシロ属. 『原色日本植物図鑑 草本編(2) 離弁花類』 p.132〜136. pls.32〜33. 保育社
牧野富太郎, 1961 オヘビイチゴ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 274. 北隆館
長田武正・長田喜美子, 1984 バラ科. 『野草図鑑 6 おきなぐさの巻』 110〜126. 保育社
堀内洋. 2001. バラ科キジムシロ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 840〜841. 神奈川県立生命の星・地球博物館
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. オヘビイチゴ. 『六甲山地の植物誌』 137. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. オヘビイチゴ. 『近畿地方植物誌』 93. 大阪自然史センター
福岡誠行・池田博・川崎哲也・黒崎史平・高野温子・鳴橋直弘 2002. オヘビイチゴ. 兵庫県産維管束植物4 バラ科. 人と自然13:146. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:15th.Nov.2014

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