ウマスギゴケ Polytrichum commune  Hedw. スギゴケ科 スギゴケ属
湿生植物
Fig.1 (西宮市・粘土質の斜面 2006.10/16)

日当たりの良い湿地やその周辺、しめった粘土質の土壌、棚田の用水路脇などに生える蘚類。
大型のコケで、茎は長さ5〜20cm、あまり枝分かれはしない。
葉は乾くと茎に接着して縮れず、卵状の鞘部から線状披針形にのび、長さ6〜12mm。鞘部を除き葉身全体が密に薄板で覆われる。
中肋は葉先から短く突出し、葉縁は平らで内曲せず、鋭い歯がある。鞘部の細胞は細い矩形〜線形。
剳ソは5〜10cmの長さがあり、頂端に角張った凾ェ傾いてつく。凾フ頚部は浅くくびれる。
雌雄異株で、雄株は雌株よりも細い。

ウマスギゴケは低地でもよく生育し、群生する姿が美しいためオオスギゴケなどとともに苔庭の植栽として利用されている。

■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 世界各地
■生育環境:湿地やその周辺部、湿った粘土質の土壌上など。
■西宮市内での分布:1ヶ所で確認できただけで稀。

Fig.2 拡大した茎葉の様子。(西宮市・粘土質の斜面 2006.10/16)
  茎はほとんど枝分かれせず、葉縁は内側に内曲しない。

Fig.3 雄花盤を生じた雄株の群落。(西宮市・粘土質の斜面 2007.5/27)
  雄株の雄花盤では3角形の苞葉の間に多数の雄器ができ、雄器の内部には精子が詰まっている。
  降雨があると雄器は破れて雨水中に泳ぎ出して、雌株の雌器内にある卵細胞を目指す。
  雄花盤は役割を終えると、その中心部から新たな新芽を出す。

Fig.4 雄花盤の拡大。(西宮市・粘土質の斜面 2007.5/27)
  3角形の苞の内側にある、色の薄い部分が雄器。
  雄花盤は雨水が溜まりやすいように椀形になっている。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.5 棚田の石垣に生育するウマスギゴケ。(西宮市・棚田の斜面 2011.2/25)
自然度の高い里山棚田の日当たり良い用水路脇や棚田の石垣ではウマスギゴケを見かけることが多い。
ここではハイゴケやギンゴケ、地衣類のコフキカラタチゴケなどとともに石垣の表面を被っていた。
同所的にノキシノブ、ミツデウラボシ、イヌシダ、ゲジゲジシダ、ベニシダ、ヤブソテツ、テイカカズラ、センニンソウなどが見られた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
岩槻善之介, 1972. スギゴケ科スギゴケ属. 岩槻善之介・水谷正美 『原色日本鮮苔類図鑑』 43〜45. 保育社
長田武正. 1974. コケの性生活. 『カラー自然ガイド こけの世界』 98〜109. 保育社

最終更新日:24th.Mar.2011

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