ハイヌメリグサ(ハイヌメリ) Sacciolepis indica  (L.) Chase. イネ科 ヌメリグサ属
湿生植物
Fig.1 (西宮市塩瀬町名塩・用水路脇 2007.9/22)

水田の畦、農耕地周辺の湿地、溜池畔などに生える1年草。
茎の下部は地を這い、分枝して広がり、節から発根し、上部ではやや斜上、または直立し、高さ10〜40cmになる。
葉は柔らかく、線形で、長さ4〜10cm。変種であるヌメリグサの葉よりも短い。
花序は柄が長く、穂状で直立し、長さ1〜6cm、径4〜6mm、淡緑色で、多数の小穂を密生する。
小穂は両性小花1個からなり、穎が5個あって、そのうち第3穎は退化した小花の名残である。
第1苞穎は2脈あり、小さく、第2苞穎の1/4以下。第2苞穎(第2穎)と第3穎(退化小花の第1護穎)には多数の脈が明瞭。
痩果は第4穎と第5穎に堅く包まれ剥離し難い。痩果は暗褐色で、長さ1.5mm前後。

和名の「滑り草」は、葉をもむとぬめりがでてくることに由来する。
本種は東アジア一帯にかけて広く分布し、史前帰化植物だとされる。

変種ヌメリグサ(var. oryzetorum)はハイヌメリグサよりもやや自然度の高い湿地や溜池畔に生育する。茎の基部は匍匐せず直立し、草体は叢生する。
花序は6〜12cmと長く、紫色をおびることが多い。
近似種 : ヌメリグサ

■分布:本州、四国、九州、沖縄 ・ 朝鮮半島、中国南部、台湾、マレーシア、インド、オーストラリア
■生育環境:水田の畦や農耕地周辺の湿地、溜池畔など。
■花期:8〜10月
■西宮市内での分布:中・北部の棚田中心に広く分布し、普通。

Fig.2 全草の様子。(西宮市山口町・休耕田 2007.8/30)
  茎の下部は地表を這いながら分枝して広がり、節から発根する。
  頂部に花序をつけた花茎は長く、葉は線形で短い。

Fig.3 基部付近では茎は横に這い、節から発根する。(西宮市山口町・休耕田 2007.8/30)
  似た環境に生えるヌメリグサは、茎が這うことはなく、節から発根しない。

Fig.4 花序。(西宮市山口町・休耕田 2007.8/30)
  淡緑色で長さ1〜6cm。変種のヌメリグサよりも短い。

Fig.5 花序の拡大。(西宮市山口町・休耕田 2007.8/30)
  多数の小穂が密に付く。小穂は第2穎と第3穎の脈がよく目立ち、軟毛がまばらに生えていることが多い。

Fig.6 小穂を展開したところ。(西宮市山口町・休耕田 2007.8/30)

西宮市内での生育環境と生態
Fig.7 刈り取りを待つ水田の畦に生えるハイヌメリグサ。(西宮市塩瀬町名塩 2007.9/22)

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大井次三郎, 1982. イネ科ヌメリグサ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 pp.100. pls.82. 平凡社
小山鐡夫, 2004 イネ科ヌメリグサ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 pp.370. pls.97. 保育社
牧野富太郎, 1961 ハイヌメリ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 743. 北隆館
桑原義晴, 2008 イネ科ヌメリグサ属. 『日本イネ科植物図譜』 pp.428〜430. pls.30. 全国農村教育協会
藤本義昭. 1995. イネ科メリグサ属. 『兵庫県イネ科植物誌』 211〜212. 藤本植物研究所
佐藤恭子. 2001. イネ科キビ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 334〜335. 神奈川県立生命の星・地球博物館
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ハイヌメリグサ. 『六甲山地の植物誌』 237. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. ハイヌメリ. 『近畿地方植物誌』 183. 大阪自然史センター

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