ヒエガエリ Polypogon fugax  Steud. イネ科 ヒエガエリ属
湿生植物
Fig.1 (西宮市山口町・渓流畔 2008.6/12)

水田や畦、休耕田、中栄養な湿地や溜池畔、河川敷、溝、湿った道端などいたるところで見られる1年草。
茎は束生し高さ30〜50cm。葉は長さ5〜15cm、幅3〜7mmで粉白味を帯びてややざらつき、葉舌は大きい。
花序は長さ3〜8cm、多数の細かい小穂がやや密につき、はじめは隙間なく、後に花序枝が開いて隙間ができる。
小穂は長さ3mm、白緑色でふつう紫色を帯び、1小花からなる。
苞穎2個は同形、ほぼ同長で膜質、ざらつき、長さ約2mm、背側は円く、上部は2浅裂して、その間から苞穎と同長の芒が出る。
小花は苞穎よりも短く、長さ0.8mm。小穂は熟すと柄とともにそのまま落ちる。
ヒエガエリとコヌカグサの種間雑種とされるヌカボガエリAgropogon hondoensis)が稀に自生し、芒がはなはだ短い。
近似種 : ハマヒエガエリ、ヌカボガエリ

■分布:本州、四国、九州、沖縄 ・ 東アジア、シベリア、インド、アフリカ
■生育環境:水田や畦、休耕田、中栄養な湿地や溜池畔、河川敷、溝、湿った道端などいたるところ。
■花期:5〜8月
■西宮市内での分布:市内全域で普通に見られる。

Fig.2 出穂しはじめた花序。(西宮市山口町・砂防ダム内の湿地 2007.6/5)
  開花直前まで、花序は開かない。

Fig.3 開きはじめた花序。(西宮市山口町・休耕田 2007.5/17)
  花序は下方から開いて、小花が開花する。花序は赤紫色をおびることが多い。

Fig.4 花序の一部を拡大。(西宮市山口町・休耕田 2007.5/17)
  小穂は1小花からなり、苞穎2個はほぼ同形で、苞穎とほぼ同長の芒がある。

Fig.5 花後の花序。(西宮市塩瀬町生瀬・砂防ダム内 2008.7/27)
  クサヨシなどと同様、花後には花序を再び閉じてしまう。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.6 休耕田で生育するヒエガエリ。(西宮市山口町・休耕田 2007.5/17)
裸地気味の場所に生えるものは、葉、茎ともに放射状に広げることが多い。太陽光を効率よく植物体に当てるためだろう。
周囲には濃緑色線形の葉を広げるコウガイゼキショウやイグサ、ミゾソバとチョウジタデの実生苗などが見える。

Fig.7 道端の側溝内で生育するヒエガエリ。(西宮市門戸荘・側溝 2007.6/4)

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大井次三郎, 1982. イネ科ヒエガエリ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 pp.124. pls.109. 平凡社
長田武正・長田喜美子, 1984 ヒエガエリ. 『野草図鑑 3 すすきの巻』 pls.136. pp.134. 保育社
古川冷實. 2001. イネ科ヒエガエリ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 298〜300. 神奈川県立生命の星・地球博物館
村田源. 2004. ヒエガエリ. 『近畿地方植物誌』 183. 大阪自然史センター

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