ヒメナミキ Scutellaria dependens  Maxim. シソ科 タツナミソウ属
湿生植物  兵庫県RDB Bランク種
Fig.1 (自宅植栽 2008.7/13)

Fig.2 (兵庫県西播磨・河口 2013.8/8)

水田の畦、休耕田、湿地、溜池畔などに生育する多年草。
地下に細長い根茎を横走させ、茎は方形でよく分枝し、細く軟弱で高さ10〜50cm、長く徒長するものは他の草にもたれかかる。
葉には短い柄があり、狭卵状三角形、少数の鋸歯があり、長さ1〜2cm、幅6〜10mm。
花は白色、淡紅色、淡青色と変異に富み、ふつう葉腋に1個づつつき、長さ約7mm、基部はわずかに曲がる。
果実は長さ3mmで2〜4分果。分果は長さ約0.7mm、細粒点のある小鈍突起がある。

似たものにコナミキS. guilielmii)があり、海岸近くの草地などに生える。葉は心形で両面に毛が生え、萼には腺のある開出毛がある。
近似種 : コナミキ

■分布:北海道、本州、九州 ・ 朝鮮半島、満州、シベリア
■生育環境:水田の畦、休耕田、溜池畔、湿地など。
■花期:6〜8月。秋に開花が見られることも多い。
■西宮市内での分布:市内には分布しない。

Fig.3 ヒメナミキの花。(滋賀県・内湖畔 2007.11/8)
  花は対生する葉の葉腋に1個づつ付くので、2個並んで咲く。この個体の花は、わずかに紅色を帯びている。

Fig.4 花冠。(自宅植栽 2008.7/13)
  淡青色を帯びた花冠。左側は開花中だが、右のものはまだ蕾の状態である。
  花冠はやや扁平な唇形で、下唇には切れ込みがなくやや鋭頭。上唇は2浅裂する。筒部には白軟毛が生える。


Fig.5,6 分果。(自宅植栽 2008.7/13)
  分果は淡褐色〜茶褐色、長さ0.7mm前後、鈍突起があり、その表面を細粒が覆う。

Fig.7 発芽したヒメナミキ。(自宅植栽 2009.3/26)
  子葉は広卵形で、1〜2対の不明瞭な側脈があり、基部は心形、葉柄がある。本葉は成葉とほぼ同形。

Fig.8 茎と葉裏。(滋賀県・内湖畔 2007.11/8)
  茎は方形で、稜が少し翼状に張り出す。
  葉裏はやや紫色を帯び、中央脈上と葉柄には短毛がある。

Fig.9 葉身。(滋賀県・内湖畔 2007.11/8)
  狭卵状三角形、鋸歯は少数。表面にはほとんど毛がない。


Fig.10,11 茎の上部に付く葉(上)と下部に付く葉(下)。(自宅植栽 2008.7/13)
  茎の下方の葉には鋸歯が見られるが、上方のものにはほとんどない。葉柄と葉縁にはごく短い毛が生えていた。

生育環境と生態
Fig.12 徒長するヒメナミキ。(滋賀県・内湖畔 2007.11/8)
徒長する茎は倒れ込んで横に伸び、他の草にもたれかかる。

Fig.13 河口の湿地に生育するヒメナミキ。(兵庫県西播磨・河口 2013.8/8)
大潮の満潮時には海水の影響を受けるのではないかと思われるような、アシ群落の縁の河口の砂礫上に生育している。
同所的にはフクド、ハナマツナ、シバナ、シオクグ、ウラギク、ホソバハマアカザ、ドロイといった河口部に特有な種のほか、
ヒメナミキが生育する周辺ではホソムギ、ギシギシ、キツネノボタンが生育しており、地下に湧水もあるのだろう。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
村田源, 1981. シソ科タツナミソウ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本3 合弁花類』 p.75〜78. pls.60〜63. 平凡社
北村四郎・村田源・堀勝, 2004 シソ科タツナミソウ属. 『原色日本植物図鑑 草本編(1) 合弁花編』 p.183〜187. pls.56〜57. 保育社
牧野富太郎, 1961 ヒメナミキ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 524. 北隆館
福留正明 2001. シソ科タツナミソウ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1198〜1201. 神奈川県立生命の星・地球博物館
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ヒメナミキ. 『六甲山地の植物誌』 187. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. ヒメナミキ. 『近畿地方植物誌』 46. 大阪自然史センター
黒崎史平 2005. ヒメナミキ. 兵庫県産維管束植物6 シソ科. 人と自然15:143. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:21st.Mar.2014

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