ヒメシダ | Thelypteris palustris (Salisb.) Schott | ヒメシダ科 ヒメシダ属 |
湿生植物 |
Fig.1 (西宮市・水田の畦 2007.5/13) 水田や畦、湿地、溜池畔などに生える夏緑性シダ。多年草。 地下には横走する根茎があり、まばらに叢生して、ときに大きな群落をつくることがある。 根茎は径1.5mm前後で、無毛か、若い部分にまばらに鱗片をつけ、黒っぽい。 葉柄はわら色で無毛、基部は黒味を帯び、まばらに鱗片がある。 鱗片は3角状広楕円形、長さ約2.5mm、幅約0.8mm、淡褐色膜質で、ごく稀に縁にかがある。 葉身は広披針形、15〜60cm、1回羽状複葉で、葉身先端の羽片は序々に小さくなり、葉身下部の羽片は序々に小さくなる。 羽片は披針形で鋭頭、短い柄があり、羽状に深裂〜全裂する。 裂片は鋭頭〜鈍頭、ほぼ全縁かわずかに鋸歯縁、毛はごくわずかにあり、腺毛はない。 裂片の葉脈は2叉して葉縁に達する。 秋になると、やや細身で長い胞子葉を出し、裂片が内に巻き、その中に多数の胞子嚢をつける。 本種は低地の湿地を構成する重要種である。 近似種 : ヤワラシダ、ハシゴシダ、コハシゴシダ ■分布:北海道、本州、四国、九州 ■生育環境:水田とその周辺の湿地など。 ■胞子形成期:9〜10月 ■西宮市内での分布:中・北部の棚田や湿地周辺に普通。 |
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↑Fig.2 ヒメシダの栄養葉(上)と胞子葉(下)。(兵庫県篠山市・用水路脇 2010.7/18) |
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↑Fig.3 春先の休耕田から萌え出たヒメシダ。(西宮市・休耕田 2007.4/30) |
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↑Fig.4 水田の斜面に群生するヒメシダ。(西宮市・水田 2007.6/5) |
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↑Fig.5 ヒメシダの胞子葉。(西宮市・水田 2007.10/28) 胞子葉は栄養葉よりもやや細身で、長く、羽片の間はやや間延びした感じを受ける。 |
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↑Fig.6 胞子葉の羽片を拡大。表面(上)と裏面(下)。(西宮市・水田 2007.10/28) 羽片の縁は裏側に巻き、その内側に胞子嚢の並ぶ円形のソーラスをつける。 |
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↑Fig.7 成熟した胞子嚢。(西宮市・水田 2007.10/28) 胞子嚢は成熟すると暗褐色〜黒色となり、無数の胞子を飛散する。 |
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↑Fig.8 栄養葉の羽片裂片裏面の一部拡大。(兵庫県篠山市・用水路脇 2010.7/19) 羽片中軸は裏面に突出し、表面には毛がある。裂片の側脈は2叉分岐し、わずかに毛が生える |
西宮市内での生育環境と生態 |
Fig.9 棚田の用水路脇を囲むように群生するヒメシダ。(西宮市・水田 2006.8/2) このような場所では頻繁に刈り込みに遭うが、すぐに新芽を用意できるヒメシダは真っ先に葉を出してくる。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 岩槻邦男, 1992. ヒメシダ科ヒメシダ属. 岩槻邦男(編)『日本の野生植物 シダ』 p.209〜221. pls.133〜143. 平凡社 光田重幸, 1986. ヒメシダ. 『しだの図鑑』 pls.75. p.77. 保育社 山本明. 2001. ヒメシダ. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 p.107 pls.109. 神奈川県立生命の星・地球博物館 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ヒメシダ. 『六甲山地の植物誌』 95. (財)神戸市公園緑化協会 白岩卓巳・鈴木武 1999. ヒメシダ. 兵庫県産維管束植物1 ヒメシダ科. 人と自然10:104. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:28th.Feb.2011 |