ヒナノカンザシ | Salomonia oblongifolia DC. | ヒメハギ科 ヒナノカンザシ属 |
湿生植物 兵庫県RDB Cランク種 |
Fig.1 (兵庫県加東市・溜池畔 2008.10/19) |
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Fig.2 (兵庫県篠山市・湿原 2014.8/14) 日当たりの良い湿地や溜池畔などに生える小型で繊細な1年草。 茎は細く、直立して、大きな草体では分枝して、隆起条があり、無毛、高さ6〜25cm。 葉はまばらに互生し、長楕円形で長さ3〜8mm、ほとんど柄はなく、上方のものは披針形で長さ14mmほどになり、全縁、ときに上縁に少数の刺毛がある。 花は細長い穂状花序につき、淡紫紅色、長さ1〜2mmで、柄は無い。萼片は5個、披針形で、うち2個はやや大きい。 花弁は3個、下方の1個は側方の2個よりも長く、雄蕊筒と合着する。雄蕊は4個で、花糸は合着する。 刮ハは扁平で腎形、径2mm程度で縁に小歯がある。種子は卵形または楕円形で黒色、長さ約0.6mm。 ■分布:本州、四国、九州 ・ 朝鮮南部、台湾、フィリピン、マレーシア、インド、オーストラリア ■生育環境:湿地、溜池畔など。 ■花期:8〜10月 ■西宮市内での分布:市内では仁川湿原に生育する。 |
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↑Fig.3 花序。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.10/12) 花序は穂状花序。多数の花が互生してつき、下方から順次咲きあがる。 |
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↑Fig.4 花序の拡大。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.10/19) 多くの花がついているが、どの状態のものが開花しており生殖状態にあるのか推し量れない。 3個ある花弁も画像では不分明だ。花は長さ1〜2mmで、あまりにも小さい。 |
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↑Fig.5 花序についた果実。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.10/19) 果実は腎形で、扁平、稜上には2列に小歯が並び、まるでカニの甲羅を2つ張り合わせたよう。 果実は花序軸に固くつく。 |
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↑Fig.6,7 果実(上)と種子(下)。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.10/19) 果実には2室あり、2列に並んだ小歯の間が裂けて、2個の種子がこぼれ出る。 種子は黒〜黒褐色でおおよそ卵形、長さ約0.6mmでつやがなく、縦に細い翼状の付属体が一筋ある。 |
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↑Fig.8 茎上部と葉。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.10/19) 茎にはやや捩じれて走る隆起条がある。葉は3脈が明瞭で、葉柄はほとんど無い。 茎上部の葉は多くの図鑑では披針形とあるが、この個体は広披針形だった。 |
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↑Fig.9 茎の中ほどについた葉。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.10/19) 葉は長楕円形、無毛でやや光沢がある。 |
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↑Fig.10 抽水状態で見られたヒナノカンザシ。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.10/12) おそらくは溜池の水位上昇のために抽水状態となったものだろうが、抽水状態に対して耐性があるかどうかは不明。 他にも同様の状態のものが数株見られ、同所的にタチモ、サワトウガラシ、ナガエフタバムグラ、ツクシクロイヌノヒゲなど、 抽水〜沈水状態に対して高い適応性をもつものが生育していることから、ヒナノカンザシも抽水状態に適応している可能性がある。 |
西宮市内での生育環境と生態 |
現在、画像はありません。 |
他地域での生育環境と生態 |
Fig.11 溜池畔に生育するヒナノカンザシ。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.10/12) この溜池畔では半裸地とアゼスゲ群落の境界付近で最も多くの個体が見られた。 このような場所ではハリイ、ヒメヒラテンツキ、スズメノコビエ、シロイヌノヒゲが見られ、それらの草本と混生している。 |
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Fig.12 池畔の湿地上部の裸地で群生するヒナノカンザシ。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.10/12) ナガエフタバムグラ、トキンソウ、ハリイ、ヒメヒラテンツキ、イヌノヒゲ、ヌメリグサなどと混生しながら群生していた。 |
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Fig.13 湿原上部のシバ地で群生するヒナノカンザシ。(兵庫県多可町・湿地 2011.9/19) 自然度の高い湿原上部の遊歩道わきの湿ったシバ地に多くのヒナノカンザシが生育していた。 周辺の半裸地状の場所にも多くの個体が生育しており、同所的に小型のトダシバ、マネキシンジュガヤ、イガクサ、イトイヌノハナヒゲなどが見られた。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑や一般書籍を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 佐竹義輔, 1982. ヒメハギ科ヒナノカンザシ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.234. pls.216. 平凡社 村田源, 2004 ヒナノカンザシ. 北村四郎・村田源『原色日本植物図鑑 草本編(2) 離弁花類』 p.82. pls.19. 保育社 牧野富太郎, 1961 ヒナノカンザシ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 342. 北隆館 近藤浩文, 1982 甲山周辺の湿地植物. 『六甲の自然』 85〜87. 神戸新聞出版センター 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ヒナノカンザシ. 『六甲山地の植物誌』 150. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. ヒナノカンザシ. 『近畿地方植物誌』 79. 大阪自然史センター 矢野悟道・竹中則夫. 1978. 甲山湿原(仁川地区)の植生調査並びに保全に関する報告書. 西宮市自然保護課 黒崎史平・高橋晃 2002. ヒナノカンザシ. 兵庫県産維管束植物4 ヒメハギ科. 人と自然13:184. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:11th.Nov.2011 |