ヒロクチゴケ Physcomitrium eurystomum  Sendtn. ヒョウタンゴケ科 ツリガネゴケ属
湿生植物
Fig.1 (西宮市山口町・水田 2008.2/28)

稲刈り後の水田や管理休耕田、畑地、湿った庭先の土上などの裸地で見られる蘚類。
茎は高さ3〜5mm。葉は卵状披針形で長さ5mm弱、鋭頭で、中肋は葉頂に終わるか、突出する。
葉縁には2〜3列の細長い細胞からなる舷があり、ほとんど全縁か、または不明瞭は小さな歯がある。
葉身細胞は矩形、または六角形、薄膜質。
剳ソは長さ4〜8mm。凾ヘ洋ナシ形で相称、蓋には短い嘴がある。蓋が取れた凾ヘ大きく開口し、剋浮ヘ欠く。
胞子は25μ前後、胞子表面には小さな刺が密生する。
近似種 : コツリガネゴケ、アゼゴケ

■分布:本州、四国、九州、沖縄、小笠原 ・ 朝鮮半島、台湾、ベトナム、インド、ヨーロッパ、アフリカ
■生育環境:刈り取り後の水田、管理休耕田、畑地、湿った庭先など。
■発生期:ほぼ1年中
■西宮市内での分布:刈り取り後の水田で見られることが最も多く、平野部の水田から北部の棚田まで広く分布する。

Fig.2 未熟な凾つけたヒロクチゴケ。(西宮市山口町・水田 2008.2/28)


Fig.3 葉身。(西宮市山口町・水田 2008.2/28)
  葉身は卵状披針形で、先端は鋭頭、中肋は突出することが多い。

Fig.4 葉先の拡大。(西宮市山口町・水田 2008.2/28)
  中肋は突出している。
  葉の上半部の葉縁は不明瞭な鋸歯状となる。

Fig.5 葉縁部。(西宮市山口町・水田 2008.2/28)
  葉縁には2〜3列の細長い細胞からなる舷がある。
  葉身細胞はやや長い矩形〜六角形。

Fig.6 葉身の基部付近。(西宮市山口町・水田 2008.2/28)
  基部付近の細胞は長く伸びる。

Fig.7 凵B(西宮市山口町・水田 2008.2/28)
  胞子体は直立し、凾ヘ成熟すると大きく口を開く。
  画像のものは、すでに胞子を飛ばした後のもので、どうしたものか蓋が凾フ横に残っていた。
  内部の壁面にはわずかに胞子が残っていた。

Fig.8 胞子体が伸びる以前の、成長期のヒロクチゴケ。(西宮市山口町・水田 2008.2/28)
 

Fig.9 胞子体が伸び、凾つくりはじめたヒロクチゴケ。(西宮市山口町・水田 2008.2/28)
 

西宮市内での生育環境と生態
Fig.10 冬期の水田で見られたヒロクチゴケ。(西宮市山口町・水田 2008.2/28)
比較的自然度が高く環境条件のよい水田では、同時期にウキゴケ類やツノゴケ類などとともに見られる。
右手前の葉状体を扇状に広げたものがハタケゴケ(ウキゴケ科ハタケゴケ属)。
画像中央左の葉縁が不規則に切れ込んだ暗緑色の葉状体を持つものがナガサキツノゴケ(ツノゴケ科ツノゴケ属)。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
水谷正美, 1972. ウキゴケ科ウキゴケ属. 岩槻善之介・水谷正美 『原色日本鮮苔類図鑑』 368〜369. 保育社

<<<戻る TOPページ