ヒトモトススキ | Cladium chinense Nees | カヤツリグサ科 ヒトモトススキ属 |
湿生植物 |
Fig.1 (西宮市・河畔 2009.7/24) |
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Fig.2 (兵庫県姫路市・海岸の林縁 2013.8/1) 主に海岸の湿地や沼畔などに生える剛強で大型の多年草。 叢生し大株をつくり匍匐枝がある。茎は剛硬で、高さ1〜2m、横断面は円形〜鈍い3稜形、平滑で多くの葉をつける。 ときに茎の節から不定芽に似た、新鞘を出す。葉は幅8〜10mm、硬くて厚く、中肋と縁に鋸歯状の粗いざらつきがある。 花序は円錐形、散房状に5〜7個頂生し、長さ4〜8cm、密に多数の小穂をつける。 小穂は長楕円形〜卵形、褐色で長さ3mm、、鋭頭、茶褐色。痩果は卵形〜広卵形、長さ2.5mmで、黄褐色。柱頭は3岐。 ■分布:本州(関東地方、能登半島以西)、四国、九州、沖縄 ・ 朝鮮南部、中国、マレーシア、オーストラリア ■生育環境:海岸の湿地、溜池畔など。 ■果実期:8〜10月 ■西宮市内での分布:市内では中部の中河川の河畔で3株確認できた。兵庫県下では南部に生育する。 |
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↑Fig.3 ヒトモトススキの花茎など。(西宮市・河畔 2009.3/19) 画像のものは花茎が2m20cmに及んだ。花茎には多数の葉がつく。 |
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↑Fig.4 花茎上部。7個の散房状の花序が側生している。(西宮市・河畔 2009.3/19) |
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↑Fig.5 開花中の花序。(西宮市・河畔 2009.7/24) |
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↑Fig.6 開花中の小穂。(西宮市・河畔 2009.7/24) 雄性期の小穂で、2個の淡黄色の葯が2個出ているのが見える。 |
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↑Fig.7 花序の一部。(西宮市・河畔 2009.3/19) 花序の軸は扁平。花序軸の先には苞葉があり、そこから花序枝が1〜2回分枝する。分枝点には小苞がある。 花序枝の先には小穂が数個集まった小穂群があるが、画像のものは年を越した花序であり、多くの小穂が脱落してしまっている。 |
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↑Fig.8 小穂。(西宮市・河畔 2009.3/19) 小穂は数個の鱗片からなる。鱗片の内側にはふつう両性の2花があるが、結実に到るのは上方の1〜2花だけである。 鱗片は卵形、茶褐色で、鋭頭。 |
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↑Fig.9 痩果。(西宮市・河畔 2009.3/19) 花被片は無い。痩果は長さ2.5mmで黄褐色、卵形〜広卵形。外果皮はコルク質。 |
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↑Fig.10 痩果の横断面。(西宮市・河畔 2009.3/19) 外果皮はコルク質、内果皮の部分の断面は3稜形。 |
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↑Fig.11 茎葉の下部。(西宮市・河畔 2009.3/19) 茎につく葉の下方は両縁が合着して鞘となる。鞘の表面は平滑。 |
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↑Fig.12 花茎の断面。(西宮市・河畔 2009.3/19) 茎は中空、太く、硬質で平滑。横断面は円形だった。 |
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↑Fig.13 節から出た新鞘。(西宮市・河畔 2009.3/19) 新鞘は大きく、長さ50cmを越えた。不定芽であるようにも思えるが、詳細は不明。 これは現在、水に浸して発根するのかどうか調べている。 |
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↑Fig.14 根生する葉。(西宮市・河畔 2009.3/19) 葉幅は10mm前後で、縁と中脈に上向きの鋸歯状のざらつきがある。 |
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↑Fig.15 根生する葉の断面。(西宮市・河畔 2009.3/19) 左は下部、右は中部の断面。上部は褐色となり枯れていた。葉は硬くてもろいため薄く切断するのが難しい。 |
西宮市内での生育環境と生態 |
Fig.16 河畔に生育するヒトモトススキ。(西宮市・砂防ダム内の河畔 2009.3/18) 河川は数m先に砂防ダムがあり、水深がかなり深くなって淵となり、その岸辺に2株生育しているのが見られた。 河川周辺にはドジョウツナギ、キシュウスズメノヒエ、ママコノシリヌグイ、セリ、オランダガラシ、オオバタネツケバナなどが生育しており、 ヒトモトススキの背後や周りは雑木とネザサからなる進入しがたいヤブとなっており、反対の岸からウェーダーを履いてしか近づけなかった。 |
他地域での生育環境と生態 |
Fig.17 海岸の後背湿地の池畔に生育するヒトモトススキ。(兵庫県姫路市・後背湿地 2013.8/1) 砂浜の後背湿地の浅い池の周囲を囲むようにヒトモトススキの群生が見られた。 同所的に生育する湿生植物はアシ、フトイ小型品、アメリカセンダングサと種数は限られていた。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 大井次三郎, 1982 カヤツリグサ科ヒトモトススキ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本T 単子葉類』 p.151. pl.169. 平凡社 小山鐡夫, 2004 ヒトモトススキ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.250. pl.63. 保育社 牧野富太郎, 1961 ヒトモトススキ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 773. 北隆館 堀内洋. 2001. ヒトモトススキ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 440. 神奈川県立生命の星・地球博物館 星野卓二・正木智美, 2003 ヒトモトススキ. 星野卓二・正木智美・西本眞理子『岡山県カヤツリグサ科植物図譜(U)』 208,209. 山陽新聞社 谷城勝弘, 2007 ヒトモトススキ. 『カヤツリグサ科入門図鑑』 118. 全国農村教育協会 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ヒトモトススキ. 『六甲山地の植物誌』 248. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. ヒトモトススキ. 『近畿地方植物誌』 161. 大阪自然史センター 松岡成久. 2009. 西宮市にヒトモトススキが生育. 兵庫県植物誌研究会・会報 80:4 黒崎史平・松岡成久・高橋晃・高野温子・山本伸子・芳澤俊之 2009. ヒトモトススキ. 兵庫県産維管束植物11 カヤツリグサ科. 人と自然20:162. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:19th.Mar.2013 |