ゲンゲ (レンゲソウ) Astragalus sinicus  L. マメ科 ゲンゲ属
湿生植物 ・ 帰化植物
Fig.1 (兵庫県三田市・管理休耕田 2008.4/23)

Fig.2 (西宮市・休耕田 2010.5/3)

耕起前の水田で緑肥として栽培、また休耕田、畦や道端に帰化生育する越年草。
茎は基部で盛んに分枝し、下部は地表を這い、高さ10〜25cm。
葉は羽状複葉で、小葉は9〜11個、質は薄く、長さ6〜20mm、幅3〜15mm、円頭またはやや凹頭。
花は紅紫色で長さ12mm、4稜ある花柄の先に7〜10個輪状につく。
果実は黒熟し長さ2〜2.5cm、幅約6mm、無毛で2室に分かれる。

ゲンゲの根には根粒バクテリアが共生し、空中の窒素を固定して蓄えるため水田の緑肥として使用される。
稲の品種改良に伴う作付けの変化や、化学肥料の使用などで随分少なくなっていたが、最近また見直されはじめたのか、
春先の水田でぽつぽつと見かけるようになった。田園地帯の園芸店などでは種子を販売しているのを見ることがある。
ゲンゲは緑肥として使用されるほか、飼料、薬用、食用にもなる。

■分布:各地で帰化 ・ 台湾、中国
■生育環境:耕起前の水田、水田の畦、休耕田、用水路、耕作地周辺の湿った場所、湿った道端など。
■花期:4〜5月
■西宮市内での分布:山地帯を除いた市内全域に普通。

Fig.3 開花したゲンゲ。(兵庫県三田市・管理休耕田 2008.4/23)
  緑肥から化学肥料への転換、イネの品種改良による早生化によって一時期は水田で見られることは少なくなった。
  管理休耕田では相変わらず春の風物詩らしい光景が見られる。


Fig.4,5 花冠。(西宮市鷲林寺町・休耕田 2007.4/20)
  花は花柄頂部に螺旋状につき、輪生しているかに見える。
  花は下から順次開花してゆく。Fig.4画像では最下の2個が開花中である。

Fig.6 花のつくり。(西宮市・水田 2009.3/29)
  ゲンゲの花は蝶形花の集まり。
  ひとつひとつの花は、大きく立ち上がった旗弁、2枚合わさった竜骨弁(舟弁)、それを両側から包む翼弁とからなる。
  つぼみは大きな旗弁が上からすっぽりとかぶさって、縁がしっかり合わさっている。

Fig.7 白花のゲンゲ。(西宮市・水田 2010.5/3)
  稀に全草が赤い色素を欠いた白花の個体を見ることがある。

Fig.8 茎と葉。(兵庫県三田市・管理休耕田 2008.4/23)
  茎の上部は立ち上がる。
  葉は羽状複葉で互生してつき、基部には托葉がある。

Fig.9 熟した果実。(兵庫県三田市・休耕田 2008.5/22)
  一つの花からは2室ある豆果ができ、熟すと黒くなる。豆果の先は鋭くとがる。

Fig.10 発芽したゲンゲ。(神戸市北区・水田 2008.11/11)
  発芽は秋。双葉は長楕円形で葉柄はない。最初の1〜2枚の本葉は心形の単葉で葉柄がある。
  続いて小さな3小葉が1〜3枚展開し、以後は羽状複葉となる。

Fig.11 羽状複葉を展開しはじめた幼苗。(神戸市北区・水田 2008.11/11)
  複葉の上方の小葉が小さい、3小葉から羽状複葉への過渡的ともいえる葉が見える。

Fig.12 冬期のゲンゲ。(西宮市山口町・管理休耕田 2007.1/5)
  冬期はロゼットを形成して越冬する。ロゼット葉の小葉は先が少し凹む。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.13 トラクターの耕起から逃れて開花した管理休耕田のゲンゲ。(西宮市山口町・管理休耕田 2007.5/5)
スズメノテッポウ、オランダミミナグサ、ノミノフスマなどとともに生育していた。

Fig.14 休耕田で見られたゲンゲ畑。(西宮市段上町・休耕田 2010.5/3)
休耕田を利用しての見事なゲンゲ畑が出来ていた。道行く人々の癒しの場となっている。縁にはアメリカアワゴケが見られた。

他地域での生育環境と生態
Fig.15 管理休耕田のゲンゲ。(兵庫県三田市・管理休耕田 2008.4/23)
ノミノフスマ、ケキツネノボタン、セリなどとともに生育。
夏にはヘラオモダカ、チョウジタデ、イヌホタルイ、ハリイなどが生育する。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大橋広好, 1982. マメ科ゲンゲ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.190〜192. pls.180〜181. 平凡社
村田源, 2004 マメ科ゲンゲ属. 北村四郎・村田源『原色日本植物図鑑 草本編(2) 離弁花編』 p.112〜114. pl.27. 
牧野富太郎, 1961 ゲンゲ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 306. 北隆館
大橋広好. 2001. マメ科ゲンゲ属. 清水建美(編)『日本の帰化植物』 p.103. pl.40. 平凡社
清水矩宏・森田弘彦・廣田伸七. 2001. ゲンゲ. 『日本帰化植物写真図鑑』 123. 全国農村教育協会
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ゲンゲ. 『六甲山地の植物誌』 141. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. ゲンゲ. 『近畿地方植物誌』 82. 大阪自然史センター
赤井賢成・福岡誠行・黒崎史平 2002. ゲンゲ. 兵庫県産維管束植物4 マメ科. 人と自然13:158. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:22nd.Sept.2014

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