ゴマクサ Centranthera chevalieri  Bonati ゴマノハグサ科 ゴマクサ属
湿生植物  環境省絶滅危惧U類(VU)・兵庫県RDB Bランク種
Fig.1 (兵庫県加西市・湿原 2008.10/12)

Fig.2 (兵庫県稲美町・溜池畔の湿地 2015.8/30)

日当たりの良い湿地や溜池畔、用水路脇などに生える1年草。
茎は直立して硬く、全体に短剛毛があってざらつき、高さ20〜40cm、分枝は少ない。
葉は長さ2〜5cm、幅3〜7mmの披針形、短剛毛があってざらつき、葉柄はない。
花は茎上部に互生する葉の葉腋に単生し、ほとんど柄はない。萼は全面で2浅裂し、長さ7〜10mm。
花冠は長さ15〜20mm、釣鐘状で先は5裂して平開する。雄蕊は5個で、花糸には毛が生える。
刮ハは楕円形で萼に包まれ、長さ1cm前後。種子は楕円形で、長さ約0.7mm。

生育環境の消滅や悪化により激減し、各地で絶滅危惧種に指定されている。
本種を半寄生植物としていることがあるが、詳細は不明である。

■分布:本州、四国、九州、沖縄 ・ 朝鮮半島、中国、インドシナ、フィリピン、タイ
■生育環境:湿地、溜池畔、用水路脇など。
■花期:8〜10月
■西宮市内での分布:市内には分布しない。

Fig.3 花序。(兵庫県加西市・湿原 2008.10/12)
  花は茎上方の葉腋に単生する。茎には短剛毛がある。
  花冠は先が斜めに2浅裂した萼から出る。萼の基部には小さな苞葉が2対ある。

Fig.4 花冠。(兵庫県加西市・溜池畔の湿地 2008.10/5)
  花冠は黄色、釣鐘状で先は5裂する。ふつう平開するが、降雨のためか時期が遅いためか半開している。
  画像の花は雨滴に濡れている。

Fig.5 花筒の内部をのぞく。(兵庫県加西市・溜池畔 2010.9/28)
  雄蕊が見えている。花糸は内に向って湾曲し、開出する軟毛が密生し、葯の下端はとがる。

Fig.6 茎。(兵庫県加西市・湿原 2008.10/12)
  茎下部につく葉は対生し、葉身は細長い披針形となる。
  茎上部につく葉や分枝部分の葉は互生する。

Fig.7 茎上部の葉。(兵庫県加西市・溜池畔の湿地 2008.10/5)
  葉は披針形で、短剛毛があり、ざらつき、鈍頭。葉柄はない。

Fig.8 果実形成期のゴマクサの果実(刮ハ)。(兵庫県加西市・湿原 2008.10/12)
  萼は1〜1.5cmにふくらみ、刮ハを包みこんでいて、外部からは見えない。

Fig.9 萼から取り出した刮ハ。(兵庫県加西市・湿原 2008.10/12)
  刮ハは長さ約1cm、楕円形で、表面は平滑で光沢がある。

Fig.10 種子。(兵庫県加西市・湿原 2008.10/12)
  長さ約0.7mm、楕円形、縦に数条の条線があり、条線間には非常に細かい横皺があって、淡灰褐色で鈍い光沢がある。

Fig.11 幼苗。(兵庫県稲美町・溜池畔の湿地 2014.7/2)

生育環境と生態
Fig.12 湿原内のトダシバ−イヌノハナヒゲ群落中に混生するゴマクサ。(兵庫県加西市・湿原 2008.10/12)
ヤマラッキョウ、スイラン、サワシロギク、サワヒヨドリ、ホソバリンドウ、カリマタガヤなどと混生していた。
草高のある他種とともに生育するものは、背丈が高くなり葉腋から分枝するものが多くなる。

Fig.13 裸地に生育するゴマクサ。(兵庫県加西市・湿原 2008.10/12)
裸地に生育し、充分に陽光のあたるものは低い背丈で開花する。
周囲に奇主となるようなものがない裸地にも生えることから、半寄生植物かどうか疑問が湧くが、逆に奇主がないため矮小化したとも考えられる。
周辺ではヒメカリマタガヤ、ハリイ、ヒメヒラテンツキ、イヌセンブリなどが見られた。

Fig.14 チゴザサ、ミカワシンジュガヤ、シロイヌノヒゲ、ヒメヒラテンツキとともに混生するゴマクサ。(兵庫県加西市・湿原 2008.10/12)

Fig.15 溜池畔の湿原で他の草本とともに湿生植物群落を形成するゴマクサ。(兵庫県姫路市・湿原 2011.8/30)
比較的大きな溜池畔に広がるコシンジュガヤ、イヌノハナヒゲ、ヤマイを主体とした貧栄養な湿原に、サギソウ、ミズトンボ、イヌシカクイ、
アオコウガイゼキショウ、タヌキマメ、オミナエシ、ワレモコウなどとともに生育していた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
山崎敬, 1981. ゴマノハグサ科ゴマクサ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本3 合弁花類』 p.113. pl.97. 平凡社
北村四郎・村田源・堀勝, 2004 ゴマノハグサ科ゴマクサ属. 『原色日本植物図鑑 草本編(1) 合弁花類』 p.150. pl.46. 保育社
牧野富太郎, 1961 ゴマクサ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 565. 北隆館
城川四郎. 2001. ゴマノハグサ科ゴマクサ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1270. 神奈川県立生命の星・地球博物館
村田源. 1998. ゴマクサ. 矢原徹一(監修)『絶滅危惧植物図鑑 レッドデータプランツ』 106. 山と渓谷社
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 2003. ゴマクサ. 『六甲山地の植物誌』 190. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. ゴマクサ. 『近畿地方植物誌』 38. 大阪自然史センター
黒崎史平・高野温子 2006. ゴマクサ. 兵庫県産維管束植物7 ゴマノハグサ科. 人と自然16:103. 兵庫県立・人と自然の博物館.

最終更新日:26th.Feb.2017

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