カガシラ Scleria caricina  (R. Br.) Benth. カヤツリグサ科 シンジュガヤ属
湿生植物  環境省絶滅危惧U類(VU)・兵庫県RDB Bランク種
Fig.1 (兵庫県三田市・湿地 2008.9/28)

Fig.2 (兵庫県神崎郡・湿地 2011.9/17)

湿地や湿原に稀に生える小型で軟弱な1年草。
茎は単生またはまばらに基部から分枝し、高さ5〜20、やや多数の葉を互生してつける。根生葉はない。
葉は柔らかく、長披針形、幅1〜2mm、先は急にとがるボート状、葉鞘ははなはだ短い。基部の鞘は短く、赤褐色。
花序は短い柄があって葉腋につき、長さ幅ともに3〜5mm、淡緑色で、密に小穂をつける。花は雌雄別の単性花。
雄鱗片は長卵形。雌鱗片は楕円形、長さ1.5〜2mm、上端は鋭頭または3裂し、凹頭となる。
痩果は灰白色で球形、長さ0.6〜1mm、粗いやや不規則な形の格子紋があり、情報には微毛があり、合わさった2個の鱗片とともに脱落する。

シンジュガヤ属中でも独特の形態をしており、同定に迷うことは無く、花序の形態などからカガシラ属(Diplacrum R. Br.)として分けられることもある。

■分布:本州(栃木県以西)、四国、九州、沖縄 ・ 台湾、インド、マレーシア、オーストラリア
■生育環境:湿地、湿原。
■果実期:7〜10月
■西宮市内での分布:甲山湿原に見られるというが、確認はしていない。

Fig.3 全草標本。(兵庫県加東市・溜池畔 2010.9/29)
  草体はシンジュガヤ属中もっとも小型で軟弱である。茎は基部でまばらに分枝する。

Fig.4 カガシラの花茎。(兵庫県三田市・湿地 2008.9/28)
  葉は互生してつき、先は急にとがるボート状になる。花序は葉腋につく。

Fig.5 花序。(三田市・湿地 2008.9/28)
  花序には短い柄があり、雄小穂と雌小穂が密集してつく。

Fig.6 充分に熟した雌小穂。(三田市・湿地 2008.9/28)
  鱗片は2個あって痩果をはさみ、先は3裂して、中央の裂片が大きく、先端に短い芒がある。
  痩果は、この2個あわさった鱗片とともに脱落する。


Fig.7,8 痩果。(三田市・湿地 2008.9/28)
  長さ0.6〜1mm、灰白色で球形、光沢があって、粗く形のやや不規則な格子紋がある。
  痩果の上方には微毛が生える。

Fig.9 成長期の草体。(三田市・湿地 2008.8/17)
  三角形の茎、小さな葉が互生する点、茎は葉鞘につつまれる、葉先がボート状などの特徴で、花序がなくとも区別が容易である。

西宮市内での生育環境と生態
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他地域での生育環境と生態
Fig.10 貧栄養な土壌に群生するカガシラ。(兵庫県加東市・溜池畔 2010.9/29)
溜池畔の礫混じりの粘土質土壌に多数群生していた。このような場所に生育するため地下部は貧相で、根は発達しない。
同様な環境でも生育できる1年生草本のヒメカリマタガヤ、シロイヌノヒゲが多く、ヒナザサ、サワトウガラシなども見られ、
多年生草本では小型のヒメヒラテンツキ、クロテンツキ、ミミカキグサ、ハイニガナなどが生育していた。

Fig.11 野生動物による攪乱を受けたカガシラ。(兵庫県三田市・湿地 2008.9/28)
イトイヌノヒゲやサギソウとともに土塊が放り出されていた。
この湿地ではサギソウ、トキソウ、カキラン、イシモチソウ、モウセンゴケ、ミミカキグサ、ホザキノミミカキグサ、ノハナショウブ、イヌノハナヒゲ、
コイヌノハナヒゲ、イトイヌノハナヒゲ、コシンジュガヤ、マネキシンジュガヤ、ハリイ、ヤマイ、イヌシカクイ、ノテンツキ、ヌマガヤ、チゴザサ、
ヒメカリマタガヤ、トダシバ、イトイヌノヒゲ、シロイヌノヒゲ、イグサ、アオコウガイゼキショウ、ハリコウガイゼキショウ、スイラン、サワシロギク、
サワヒヨドリ、アリノトオグサなどが湿生植物群落を形成している。

Fig.12 湿原に生育するカガシラ。(兵庫県神崎郡・湿原 2011.9/17)
湿原の草本のまばらな場所からイヌノハナヒゲ群落の株元まで、多数のカガシラが群生していた。
この湿原ではサギソウ、トキソウ、カキラン、ミズトンボ、モウセンゴケ、ミミカキグサ、ホザキノミミカキグサ、ノハナショウブ、イヌノハナヒゲ、
コイヌノハナヒゲ、イトイヌノハナヒゲ、ハリイ、ヤマイ、イヌシカクイ、ヌマガヤ、イガクサ、コマツカサススキ、アブラガヤ、コマツカサアブラガヤ、
チゴザサ、ヒメカリマタガヤ、トダシバ、イトイヌノヒゲ、シロイヌノヒゲ、イグサ、アオコウガイゼキショウ、ハリコウガイゼキショウ、ヒナノカンザシ、
アイナエ、ミズスギ、スイラン、サワシロギク、サワヒヨドリ、アリノトウグサなどが湿生植物群落を形成している。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大井次三郎, 1982. カヤツリグサ科シンジュガヤ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 p.168〜169. pls.150〜151. 平凡社
小山鐡夫, 2004 カヤツリグサ科カガシラ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.254. pl.64. 保育社
星野卓二・正木智美, 2003. カガシラ. 星野卓二・正木智美・西本眞理子『岡山県カヤツリグサ科植物図譜(U)』 222,223. 山陽新聞社
谷城勝弘, 2007. シンジュガヤ属. 『カヤツリグサ科入門図鑑』 116,117. 全国農村教育協会
牧野富太郎, 1961 カガシラ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 762. 北隆館
近藤浩文, 1982 甲山周辺の湿地植物. 『六甲の自然』 85〜87. 神戸新聞出版センター
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. カガシラ. 『六甲山地の植物誌』 70〜71,253. (財)神戸市公園緑化協会
黒崎史平・松岡成久・高橋晃・高野温子・山本伸子・芳澤俊之 2009. カガシラ. 兵庫県産維管束植物11 カヤツリグサ科. 人と自然20:180.
       兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:9th.Mar.2013

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