カズノコグサ Beckmannia syzigachne (Steud.) Fernald. イネ科
湿生植物
Fig.1 (西宮市・休耕田 2007.5/5)

Fig.2 (大阪府高槻市・河川敷 2013.5/1)

春の耕起以前の水田、休耕田などに生育する越年草。
茎はやや軟弱で太く、高さ30〜90cm、無毛で平滑。葉は粉緑色で扁平、葉面はざらつき、長さ10〜25cm、幅5〜15mm、縁に微細な鋸歯がある。
葉鞘は節間よりも長く、無毛。葉舌は半透明膜質で長さ3〜6mm、鈍頭。
花序は太い花軸があって直立し、長さ15〜35cm、花序枝は短く、ほとんど基部から密に2列に小穂がつく。
小穂は長さ3〜3.5mm、ほぼ円形、1〜3小花からなり、苞頴2個は同形で、背面が著しくふくれて袋状となり、左右に扁平、熟すと黄色となって基部の関節から落ちる。
護頴と内頴は小形で花を包み、護頴のとがった先端が、短く両苞頴の上に突出する。頴果はきわめて小さい。
花序、特に小穂には他のイネ科植物には見られないような特徴があり、一度憶えると他種と間違えることはない。

■分布:日本全土 ・ 朝鮮半島、樺太、シベリア東部
■生育環境:水田や休耕田など。
■花期:4〜5月
■西宮市内での分布:市内全域に広く分布。普通種だが平野部の水田では裏作が行われるため、目にする機会は随分と減ってしまった。。

Fig.3 花序の拡大。(西宮市・休耕田 2007.5/5)
  花序枝は短い。小穂は2列に花序枝に密に並ぶ。

Fig.4 小穂。(西宮市・休耕田 2010.6/6)
  苞頴2個は背面がふくらんで袋状となって小花を包む。

Fig.5 小穂を展開したところ。(西宮市・休耕田 2010.6/6)
  苞頴2個を開くと、護頴と内頴からなる小花がある。護頴は内頴より長く、先が短い芒状に突出する。
  護頴と内頴を開くと、中からかなり熟した頴果が現われた。

Fig.6 春先の草体。(西宮市・水田 2009.3/31)
  種子は前年に発芽して常緑越冬しながら生育して、春先には草体が目立つようになる。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.7 水田の耕起の時期、畦に残ったカズノコグサの群生。(西宮市・水田 2007.5/17)

Fig.8 耕起前の水田に生育するカズノコグサ。(西宮市・水田 2010.5/3)
ヒメコウガイゼキショウがおびただしく群生する水田内にタガラシ、ノミノフスマ、カワヂシャ、タネツケバナなどと点在している。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大井次三郎, 1982. イネ科ミノゴメ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 p.124. pl.108. 平凡社
小山鐡夫, 2004 イネ科カズノコグサ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.336〜337. 保育社
牧野富太郎, 1961 カズノコグサ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 727. 北隆館
藤本義昭. 1995. イネ科ミノゴメ属. 『兵庫県イネ科植物誌』 57〜58. 藤本植物研究所
古川冷實 2001. イネ科カズノコグサ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 300〜303. 神奈川県立生命の星・地球博物館
桑原義晴, 2008 カズノコグサ. 『日本イネ科植物図譜』 p.84. pl.13. 全国農村教育協会
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. カズノコグサ. 『六甲山地の植物誌』 225. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. カズノコグサ. 『近畿地方植物誌』 170. 大阪自然史センター
藤本義昭・布施静香・黒崎史平・高橋晃・高野温子 2008. カズノコグサ. 兵庫県産維管束植物7 イネ科. 人と自然19:168. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:8th.Mar.2014

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