ケヒツジゴケ | Brachythecium garovaglioides Mull.Hal. | アオギヌゴケ科 アオギヌゴケ属 |
陸生〜抽水蘚類 |
Fig.1 (兵庫県篠山市・休耕田 2015.2/27) 地上、路傍から水田の土手や畦、経年した休耕田にも出現し、鮮緑色〜淡黄色の柔らかいマットを作る大型の蘚類。雌雄異株。 茎は多くの枝を上方に出し、先端はときに長く伸びる。 葉は乾くとやや展開し、枝は葉を含めて幅2〜3mm。 茎葉は卵形の基部から先に向けてしだいに狭くなり、先端は細長くのびて鋭尖頭、葉面は丸く凹み、長さ3〜4mm。 葉縁全周に細かい鋸歯があり、中肋は葉の中部付近で終わる。 枝葉は茎葉に似るが小さい。葉身細胞は線形で幅5〜8μ。葯柄は平滑。染色体数n=10。 ヒロハフサゴケ(B. salebrosum)はケヒツジゴケより小型で、雌雄同株、葉は乾くと茎にやや接着する。 ナガヒツジゴケ(B. buchananii)は茎葉がほぼ全縁、あっても目立たず、葉身細胞の長さ50〜80μ、幅約5μ。 ヒモヒツジゴケ(B. helminthocladum)は葉先が急に狭くなり長い鋭尖部に移行し、葉は乾くと茎に接し縮れない。 コマノヒツジゴケ(B. coreanum)は茎葉が卵状披針形、葉縁全周に微かな2歯が並び、中肋は細長く1/2〜2/3で終わり、葉身細胞の幅3〜5μ。 タニゴケ(B. rivulare)はコマノヒツジゴケに似るが茎はしばしば鞭枝を出し、葉はややまばらにつき、3角状卵形で短くとがり長さ2〜2.5mm、 基部は下延して、大きな翼細胞が明瞭な区画をつくる。 ハネヒツジゴケ(B. plumosum)は茎葉が卵形〜卵状披針形、長さ約2mm、葉縁に微かな鋸歯があり、中肋は葉長の2/3〜4/5で終わり、葉身細胞の幅3〜5μ。 アオギヌゴケ(B. populeum)はハネヒツジゴケに似るがより小型で、中肋が葉の先端に達し、葉身細胞がやや幅広くて短い。 カギヤノネゴケ(B. uncinifolium)は茎葉が広卵形で先が急に細長くなって横に曲がり、長さ約1.5mm、基部および下延部の細胞は密で方形。 アラハヒツジゴケ(Kurohimehypnum ctenidioides)は葉長2.5〜3mm、中肋は葉長の2/3〜3/4、翼部は下延してその部分は長方形の薄膜細胞となる。 近似種 : ヒロハフサゴケ、ナガヒツジゴケ、ヒモヒツジゴケ、コマノヒツジゴケ、タニゴケ、ハネヒツジゴケ、アオギヌゴケ、カギヤノネゴケ、アラハヒツジゴケ ■分布:本州、四国、九州 ・ 中国、台湾、ネパール。 ■生育環境:地上、路傍から水田の土手や畦、経年した休耕田など。 ■西宮市内での分布:市内では中部から北部にかけて見かける。 |
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↑Fig.2 全体。(兵庫県篠山市・休耕田 2015.2/27) 茎は多くの枝を上方に出し、先端はときに長く伸びる。 |
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↑Fig.3 茎と枝の拡大。(兵庫県篠山市・休耕田 2015.2/27) 湿った場所にあるものは葉が茎に接するが、乾くとやや展開する。茎の幅は葉を含めて、湿時に2〜2.5mm。 葉先が細長く伸びるため、茎や枝の先は毛羽立ったように見える。 |
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↑Fig.4 茎葉。(兵庫県篠山市・休耕田 2015.2/27) 茎葉は卵形の基部から先に向けてしだいに狭くなり、先端は細長くのびて鋭尖頭、葉面は丸く凹み、長さ3〜4mm。 葉縁全周に細かい鋸歯があり、中肋は葉の中部付近で終わる。画像のものは気泡に押されて葉先が曲がってしまっている。 |
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↑Fig.5 細長く伸びた葉先。(兵庫県篠山市・休耕田 2015.2/27) |
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↑Fig.6 枝葉は茎葉に似るが小さい。1目盛=26μ。(兵庫県篠山市・休耕田 2015.2/27) |
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↑Fig.7 葉身細胞。1目盛=1.6μ。(兵庫県篠山市・休耕田 2015.2/27) 葉身細胞は線形で長さは82〜104μ、幅5〜8μだった。 |
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↑Fig.8 翼細胞。(兵庫県篠山市・休耕田 2015.2/27) 葉の基部は翼部から中肋基部にかけて、矩形の細胞が明瞭な区画を作る。 |
他地域での生育環境と生態 |
Fig.9 湿地化した経年休耕田に生育するケヒツジゴケ。(兵庫県篠山市・休耕田 2015.2/27) 放棄されて40年ほど経て湿地化した休耕田のアゼスゲ群落中にマットを形成している。 山際から湧水が供給されて湿地化しているもので、ケヒツジゴケは抽水状態で生育している。 山際寄りの多くの部分はオオミズゴケが密生しチゴザサが優占するが、農道寄りではアゼスゲ群落が発達し、そこでハイゴケsp.、ツボゴケ、 アカミノハリガネゴケ、ミズゼニゴケモドキと混生している。 この湿地化した休耕田ではアギナシ、サワギキョウ、ハイニガナ、サワオグルマ、キセルアザミなどの数多くの湿生植物が見られる。 |
【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 岩槻善之助, 1972. アオギヌゴケ科. 岩槻善之助・水谷正美『原色日本蘚苔類図鑑』 p.212〜223. pl.30. Figs.108〜116. 保育社 最終更新日:15th.Mar.2015 |