コハコベ(ハコベ) | Stellaria media (L.) Villars | ナデシコ科 ハコベ属 |
湿生植物 帰化植物 |
Fig.1 (西宮市鷲林寺町・水田の畦 2004.4/5) ヨーロッパ原産の帰化植物で、水田の畦や耕作地周辺、休耕田、道端など、到るところに普通な越年草。 茎は下部から盛んに分枝し、下部は地表を這い、上部は斜上して高さ10〜20cm、片側に列毛が生える。 葉は卵形〜長卵形、鋭頭、長さ1〜2cm、深緑色で無毛、下部や葉柄には少し毛があり、全縁、ときに波状、下部のものは長い柄があるが、上部では無柄。 花は集散花序につき、苞は葉状。花柄は短毛が生え、花後に下向し長さ7〜14mm。 萼片は5個、楕円形で鈍頭、長さ3〜4mm、縁は白膜質で、背には毛がある。 花弁はふつう5個、白色で2深裂し、ふつう萼より少し短い。花柱は3個。雄蕊は1〜7個。 果実は刮ハ、長楕円形で長さ4〜5mm、6裂する。種子は腎円形、径1〜1.2mm、半透明の低いいぼ状の突起がある。 酷似するものに史前帰化植物のミドリハコベ(S. neglecta)があり、コハコベよりも撹乱の少ない場所に生育し、 葉がより大きく、雄蕊は5〜10個、種子はやや大きく、とがったいぼ状の突起がある。 比較的近年帰化したイヌコハコベ(S. pallida)は、花に花弁はなく、萼片基部に紫色の斑点があり、種子はやや小さく六角状で突起は低い。 近似種 : ミドリハコベ、イヌコハコベ、ウシハコベ、ミミナグサ、オランダミミナグサ、ノミノフスマ、ノミノツヅリ ■分布:日本全土 ・ 世界の寒帯〜熱帯まで広く分布する。 ■生育環境:冬期の水田、水田の畦、休耕田、用水路、溜池畔、耕作地周辺の湿った場所、湿った道端、側溝など。 ■花期:1〜12月 ■西宮市内での分布:山地帯を除いた市内全域に普通。 |
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↑Fig.2 花茎と花序。(西宮市山口町・休耕田 2008.12/28) 花茎は茎とともに赤紫色を帯び、片側に軟らかい列毛が生える。 花序は集散花序で、ふつう2叉状に分枝し、分枝基部には葉状の苞がつく。 花柄は開花時には短いが、果実が熟すにつれて伸張し、下向きに垂れる。 |
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↑Fig.3 花冠と萼片。(西宮市山口町・休耕田 2008.3/9) 萼片は花弁より少し長く、鈍頭、縁は薄膜質となる。 花弁はふつう5個で、2深裂するため、花弁が10個あるかのように見える。 花柱は3個。雄蕊は1〜7個あり、対するミドリハコベの5〜10個の重要な区別点となる。 |
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↑Fig.4 葉と茎。(西宮市山口町・休耕田 2008.12/28) 葉は卵形〜長卵形で先はとがる。葉縁は全縁ときに波状縁となる。葉柄にはまばらに毛が生える。 茎には片側に軟らかい列毛がある。 |
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↑Fig.5 果実。(西宮市山口町・休耕田 2008.12/28) 果実は刮ハで、熟すと6裂する。 |
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↑Fig.6,7 種子。(西宮市山口町・休耕田 2008.12/28) 種子は腎円形で、長さ1〜1.2mm、表面には半透明の低いいぼ状の突起がある。 |
西宮市内での生育環境と生態 |
Fig.8 休耕田を覆い尽くして開花するコハコベ。(西宮市山口町・休耕田 2008.3/16) 定期的に耕起の撹乱を受ける肥沃な湛水することのない管理休耕田で、ほとんど全面を覆っている。 他には少数のヒメオドリコソウ、タネツケバナ、ウシハコベ、ハハコグサ、コオニタビラコ、ナズナ、オランダミミナグサが見られる程度である。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 北川政夫, 1982. ナデシコ科ハコベ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 pp.36〜39. pls.33〜36. 平凡社 北村四郎, 2004 ナデシコ科ハコベ属. 北村四郎・村田源『原色日本植物図鑑 草本編(2) 離弁花編』 pp.270〜276. pls.59〜60. 長田武正・長田喜美子, 1984 ナデシコ科. 『野草図鑑 8 はこべの巻』 pp.70〜92. 保育社 田中徳久. 2001. ナデシコ科ハコベ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 634〜638. 神奈川県立生命の星・地球博物館 清水矩宏・森田弘彦・廣田伸七. 2001. コハコベ、イヌコハコベ. 『日本帰化植物写真図鑑』 50,51. 全国農村教育協会 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ハコベ. 『六甲山地の植物誌』 115. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. コハコベ. 『近畿地方植物誌』 114. 大阪自然史センター |