マメスゲ Carex pudica  Honda カヤツリグサ科 スゲ属 ヌカスゲ節
湿生植物  兵庫県RDB Cランク種
Fig.1  (西宮市・溜池畔の日陰 2007.5/12)
Fig.2 (西宮市・小湿地脇 2010.4/26)

湿地周辺の草地や樹林内の細流脇、湿った場所に生育する多年草。日なたよりも半日陰になるような場所に好んで生える。
最近では生育環境の開発、雑木林や植林地の管理放棄による遷移によって減少傾向にある。
叢生し、匍匐枝はなく、葉は幅2〜3mm。
花茎は高さ5〜10cm。雄小穂は長い柄があって抽出するが、雌小穂は全て根際に付き、葉を掻き分けないと発見できない。
花期も後期になると葉が伸びて、雄小穂も葉の間に埋もれて目立たなくなる。
雄小穂は赤褐色を帯び、雌小穂の果胞は有毛で、多数の脈があり、長さ約3mm。

雄小穂が飛び出して目立ち、雌小穂が基部近くに集まるものにアズマスゲC. lasiolepis)があるが、花茎の中〜上部に1個の雌小穂がつき、
葉幅は3〜5mmと幅広く、乾いた場所に生育するので区別できる。


■分布:本州(関東以西)、伊豆諸島(神津島)・日本固有
■生育環境:湿地周辺の草地、樹林内の細流脇や湿った場所など。
■果実期:4〜5月
■西宮市内での分布:市内では北部の溜池畔の1ヶ所と、雑木林内の湿った山道の数ヶ所で確認できた。市内ではやや稀。

Fig.3 全体の様子。(西宮市・湧水のある林縁斜面 2008.5/1)
  根茎は短く叢生する。雄小穂だけが葉の間から飛び出して目立つ。

Fig.4 基部。(西宮市・小湿地脇 2010.4/26)
  古い斜上する根茎が残る。基部は褐色で、古い葉が繊維状に裂けて残る。

Fig.5 根際に見られる花序。(西宮市・溜池畔の日陰 2007.5/12)
  まだ出穂して間もない固体で、雄小穂も長く伸びていない。雄小穂は赤褐色を帯びている。
  雌小穂はこの位置のままで、開花結実する。果胞には毛が生えている様子がわかる。

Fig.6 雄小穂と雌小穂。(西宮市・小湿地脇 2010.4/26)
  花序は雄小穂が突出して伸びる。

Fig.7 雌小穂の拡大。(西宮市・小湿地脇 2010.4/26)
  果胞は有毛、有脈。口部は全縁。雌鱗片は果胞より短く、鋭頭、先は芒状に少し出る。

Fig.8 雄小穂の拡大。(西宮市・小湿地脇 2010.4/26)
  雄小穂は披針形。雄鱗片は赤褐色。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.9 林縁にある小湿地周辺に生育するマメスゲ。(西宮市・半日陰の湿地細流脇 2007.5/13)
画像には山道に生育するマメスゲのほかに、ノギラン、ミズギボウシ、ヒメアギスミレ、小さなイボクサの苗などが見られる。
このほか、マメスゲは水溜りがあるような水捌けの悪い樹林内の山道の脇などでも見かけることがある。

Fig.10 小湿地脇に生育するマメスゲ。(西宮市・小湿地脇 2010.4/26)
湧水によって成立した山際の小湿地の脇に生育していた。マメスゲの株元に見られるのはヒメアギスミレ。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大井次三郎, 1982. マメスゲ. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本T 単子葉類』 p.160. 平凡社
小山鐡夫, 2004 マメスゲ. 北村四郎・村田源・小山鐡夫『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.274. pls.69. 保育社
牧野富太郎, 1961 マメスゲ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 792. 北隆館
勝山輝男. 2001. スゲ属ヌカスゲ節. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 459〜472. 神奈川県立生命の星・地球博物館
勝山輝男, 2005. ヌカスゲ節. 『日本のスゲ』 170〜251. 文一総合出版
谷城勝弘, 2007. スゲ属ヌカスゲ節. 『カヤツリグサ科入門図鑑』 72〜94. 全国農村教育協会
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. マメスゲ. 『六甲山地の植物誌』 246. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. マメスゲ. 『近畿地方植物誌』 159. 大阪自然史センター
黒崎史平・松岡成久・高橋晃・高野温子・山本伸子・芳澤俊之 2009. マメスゲ. 兵庫県産維管束植物11 カヤツリグサ科. 人と自然20:158.
       兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:28th.Apr.2010

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