ミツバ (ウシミツバ含む) Cryptotaenia canadensis  DC. ssp. japonica  (Hassk.) Hand. Mzt. セリ科 ミツバ属
湿生植物
Fig.1 (西宮市塩瀬町名塩・用水路 2007.6/5)

用水路脇、渓流畔、河川敷、丘陵部の半日陰の湿地や休耕田、湿った林縁などに生育する多年草。。
茎は直立し、高さ30〜90cm、無毛。根生葉や下部の葉には長い葉柄がある。
葉身は3小葉からなり、小葉は無柄で長さ4〜10cm、幅2〜6cm、毛はなく、裏面に光沢があり、葉縁は重鋸歯となる。
小散形花序は2〜5個の花があり、花柄は不同長。小総苞葉は小さく狭披針形。
果実は長さ4〜5mmで毛はなく、分果は円柱状楕円形。

小葉に深い切れ込みのあるものはウシミツバ(f. dissecta)という品種とされる。

■分布:北海道、本州、四国、九州、沖縄 ・ 朝鮮半島、中国、満州、千島
■生育環境:用水路脇、渓流畔、河川敷、丘陵部の半日陰の湿地や休耕田、湿った林縁など。
■花期:6〜7月
■西宮市内での分布:中・北部の低山や棚田周辺に比較的普通に見られる。
          兵庫県の三田市以北ではところによってウシミツバと呼ばれるタイプが出現する。

Fig.2 花序。(西宮市・河川敷 2008.7/7)
  大散形花序、小散形花序ともに柄は少なく、不同長。

Fig.3 花冠。(西宮市・河川敷 2008.7/7)
  萼は発達せず、花弁5個で白色、倒披針形、鋭頭。雄蕊5個。雌蕊2個。

Fig.4 果実とその断面。(西宮市・林縁 2008.7/7)
  果実は4〜5mm、無毛、平滑で光沢がある。

Fig.5 茎に付く葉の葉柄基部は茎を抱き、葉腋から側枝を出す。(西宮市・河川敷 2008.7/7)

Fig.6 葉身。(西宮市・林縁 2008.7/7)
  無柄の3小葉からなり、重鋸歯がある。

Fig.7 幼植物。(兵庫県丹波市・渓流畔 2011.5/7)

Fig.8 春先に動きはじめたミツバのロゼット。(兵庫県篠山市・休耕田 2008.3/25)
  冬期、ミツバはロゼットを形成し、地表に張り付くように常緑越冬する。

Fig.9 春先の水際の個体。(兵庫県篠山市・湧水池畔 2008.3/25)
  水際の個体のロゼットは不完全で、葉身を地表につけない。

Fig.10 ウシミツバ(f. dissecta)とされる個体の根生葉。(兵庫県三田市・社寺林林床 2011.4/13)
  小葉の葉縁の切れ込みが深くなり、見かけは2回3出複葉状となる小葉が現われる。
  こういった変異個体群のこの時期の葉はキツネノボタンの根生葉と非常に良く似ているが、草質であり厚味がないこと、
  葉柄はミツバ同様細いこと、手で揉むとミツバ特有の芳香があることによって区別できる。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.11 用水路脇に生育するミツバ。(西宮市・用水路 2007.6/5)
水田の用水路脇に生育するものは、栄養条件が良いため大きく育ち、ほかの草達にも負けてはいない。
ここでは、ヤブカンゾウ、カモジグサ、イチゴツナギ、ドジョウツナギ、トボシガラ、ツルヨシ、ミゾソバ、ドクダミなどとともに生育が見られた。

Fig.12 やや湿った林縁に生育するミツバ。(西宮市・林縁 2008.7/7)
低山では湿った半日陰のような林縁などでよく見かける。ヒカゲイノコズチ、チジミザサ、マスクサなどと生育。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
北川政夫, 1982. セリ科ミツバ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.281. pl.256. 平凡社
村田源, 2004 セリ科ミツバ属. 北村四郎・村田源『原色日本植物図鑑 草本編(2) 離弁花編』 p.10. pl.2. 保育社
牧野富太郎, 1961 ミツバ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 439. 北隆館
長田武正・長田喜美子, 1984 ミツバ. 『野草図鑑 6 おきなぐさの巻』 p.80. pl.78. 保育社
河済英子. 2001. セリ科ミツバ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1078〜1079. 神奈川県立生命の星・地球博物館
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ミツバ. 『六甲山地の植物誌』 167. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. ミツバ. 『近畿地方植物誌』 60. 大阪自然史センター



最終更新日:24th.Feb.2014

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