ミゾイチゴツナギ Poa acroleuca  Stued. イネ科 イチゴツナギ属
湿生植物
Fig.1 (西宮市鷲林寺町・道端の溝脇 2008.5/1)

普通、林縁などに多いが、水田の畦でもよく見かける1年草。
草体は高さ30〜80cmになり、少し株となる。茎は下部で曲がり、上部は直立して、細長く平滑、横断面はやや扁平。
葉は線形で先は次第にとがり、平開または斜開し、柔らかく、長さ10〜15cm、幅1.5〜3mm、多少ざらつく。葉舌は長さ1.5〜3mm、鈍頭細裂。
花序は長さ10〜20cmで、上方はすこし先が垂れ、長円形、枝は双生して細く、ざらつき、枝の上半に小穂をつける。
小穂は卵形で淡緑色、長さ3〜5mm、5〜6個の小花からなり、緑色。第1苞頴は卵状披針形、長さ1.5mm、白色膜質の縁があり、1脈ある。
第2苞頴は卵状で鋭頭、長さ2〜2.5mm、3脈がある。護頴は舟形の長楕円形、先端は白膜質で鈍頭、5脈あり、側面には密に白い圧毛がある。

茎(稈)の基部が肥厚するものは、変種タマミゾイチゴツナギ(var. submoniliformis)とされる。
ヤマミゾイチゴツナギ(タチミゾイチゴツナギ)P. hisauchii)は山地の日陰の湿地に生育し、花序枝は短く、花序中軸に寄り添い、
花序の先は垂れる。全体に明るい緑色。護頴の圧毛はほとんど無い。
コイチゴツナギP. compressa)は帰化種で、全体が濃緑色。茎の基部は倒伏して節から発根し、地下には長い根茎を横走する。
茎は扁平で2面あり、葉は先が急にとがる。葉舌は切形で1〜2mm。花序枝は短く、花序中軸の各節から1〜3個でて、少数の小穂をつける。
近似種 : イチゴツナギ、 コイチゴツナギ

■分布:日本全土 ・ 朝鮮半島、中国、台湾
■生育環境:林縁、畑地や畦など。
■花期:5〜7月
■西宮市内での分布:中・北部に普通。

Fig.2 花序。(西宮市山口町・林縁の湿った場所 2007.6/27)
  花序中軸の各節から1〜2個の花序枝をだし、まばらに小穂をつける。

Fig.3 小花が開花中の小穂。(西宮市山口町・棚田の畦 2007.6/3)
  小穂は3〜5個の小花からなる。画像のものは4小花ある。
  護穎は苞穎よりも長く、脈上に軟毛がある。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大井次三郎, イネ科ナガハグサ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)『日本の野生植物 草本1 単子葉類』
       pp.110〜112. pls.94〜96. 平凡社
小山鐡夫, 2004 イネ科イチゴツナギ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 pp.321〜325. pls.80〜81. 保育社
牧野富太郎, 1961 ミゾイチゴツナギ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 717. 北隆館
藤本義昭. 1995. イネ科イチゴツナギ属. 『兵庫県イネ科植物誌』 194〜207. 藤本植物研究所
木場英久. 2001. イネ科イチゴツナギ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 272〜277. 神奈川県立生命の星・地球博物館
桑原義晴, 2008 イチゴツナギ属. 『日本イネ科植物図譜』 pp.388〜412. pls.28〜29. 全国農村教育協会
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ミゾイチゴツナギ. 『六甲山地の植物誌』 236. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. ミゾイチゴツナギ. 『近畿地方植物誌』 182. 大阪自然史センター


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