ミゾカクシ Lobelia chinensis  Lour. キキョウ科 ミゾカクシ属
湿生〜抽水植物
Fig.1 (西宮市・水田 2007.9/6)

Fig.2 (兵庫県姫路市・溜池畔 2011.8/30)

水田や畦、休耕田、用水路、農耕地周辺の湿地、中栄養〜富栄養な溜池畔に生える多年草。
茎は細く地表を這い、先は斜上、または直立して、高さ3〜15cm。茎は葉の基部でやや屈曲する。
葉は互生し無柄で、長さ12〜2cm、幅2〜4mm、披針形で低い鋸歯がある。
花は細長い柄があり、葉腋に単生し、花冠は径7〜10mm、白色〜淡紅色で、中部まで5裂し、上側2片は開出する。
刮ハは長さ5〜7mm。
やや水深のある場所で沈水状態で生育するものは、匍匐枝の節から茎を直立し、葉身は小型化し、節間が長くなる。
沈水状態のものは、茎の屈曲もほとんど見られない。

■分布:北海道、本州、四国、九州、沖縄 ・ 台湾、中国、朝鮮半島、インド、マレーシア
■生育環境:水田や畦、休耕田、用水路、農耕地周辺の湿地など。
■花期:6〜10月
■西宮市内での分布:ほぼ市内全域で、ごく普通に見られる。

Fig.3 ミゾカクシの花冠。(兵庫県三田市・休耕田 2007.8/23)
  花冠下部は筒状で、中部で5中裂し、上側2片は開出する、唇形花。
  下唇の基部付近には緑色の斑紋がある。

Fig.4 雄花期と雌花期の両期が見られる。(兵庫県三田市・休耕田 2007.6/15)
  サワギキョウと同様な花のつくりで、花柱は最初、集葯雄蕊によってつつまれ、葯から花粉を出すだけの雄花期と、
  花粉を出したあと、雌蕊柱頭が出現する雌花期とがある。
  白く丸い柱頭が見えているのが雌花期の花で、それ以外の紫色のものは雄花期の花。雄花期の花の花冠の方が新鮮で紫色味を帯びる。

Fig.5 良く発達した株は、多数の花をつける。(兵庫県三田市・休耕田 2007.6/15))

Fig.6 晩秋以降の草体は地表に張り付き、茎は短くつまる。(西宮市・水田 2008.11/23))

Fig.7 早春の草体。(西宮市・休耕田 2015.3/17))
  地表に匍匐した茎を伸ばし、小さな葉を開き始めている。

Fig.8 沈水形。(兵庫県三田市・溜池 2011.9/14))
  水中画像。中栄養〜富栄養な溜池の浅水域では、ミゾカクシの沈水形が見られることがある。
  茎の屈曲は弱まり、節間は長く伸びて、茎頂は水面を目指しているように見える。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.9 休耕田の一画を覆い尽くしたミゾカクシ。(西宮市山口町・休耕田 2007.10/11)
地表を埋め尽くす様は、まるでムシロのように見えるため「アゼムシロ」の別名がある。

他地域での生育環境と生態
Fig.10 溜池畔で群生するミゾカクシ。(兵庫県姫路市・溜池畔 2011.8/30)
コイが養殖されているやや富栄養な溜池畔のヒメガマ群落の切れ目で群生していた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
佐竹義輔, 1981. キキョウ科ミゾカクシ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本3 合弁花類』 p.154〜155. pl.128. 平凡社
北村四郎・村田源・堀勝, 2004. キキョウ科ミゾカクシ属. 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 合弁花類』 p.91. pl.30. 保育社
牧野富太郎, 1961 ミゾカクシ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 617. 北隆館
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ミゾカクシ. 『六甲山地の植物誌』 199. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. ミゾカクシ. 『近畿地方植物誌』 30. 大阪自然史センター
黒崎史平・高橋晃 2006. ミゾカクシ. 兵庫県産維管束植物7 キキョウ科. 人と自然16:127. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:10th.May. 2015

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