ミズトラノオ | Eusteralis yatabeana (Makino) Panigrahi | シソ科 ミズトラノオ属 |
湿生植物 環境省絶滅危惧U類(VU)・兵庫県RDB Bランク種 |
Fig.1 (兵庫県加西市・溜池畔 2010.9/28) |
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Fig.2 (兵庫県加西市・溜池畔 2008.10/5) |
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Fig.3 (兵庫県小野市・溜池畔 2014.9/23) 湿地や溜池畔などに生える多年草。 匍匐茎を地下または地表に横走させ、茎を立ち上げて群生する。茎はやわらかく無毛、直立してほとんど分枝せず、高さ30〜50cm。 葉はふつう3〜4輪生し、長さ3〜7cm、幅2〜7mmで線形〜線状披針形、無毛でやわらかく、無柄。 花序には花が密生してつき、幅1cm以上。花にはほとんど花柄がなく、萼は長さ2.5mmで5裂し、ほぼ同長の苞とともに軟毛がある。 花冠は4裂し、長さ3〜4mm、淡紅紫色。雄蕊は4個で、全て同長で長さ7〜8mm、花冠の外に突き出し、花糸の中部には密に長い毛がある。 種子は卵形〜楕円形で長さ0.5〜0.7mm。 似たものにミズネコノオ(E. stellata)があり、匍匐茎はなく、花序の幅5mm前後、花冠は白色で長さ約2mm。茎の中部でよく分枝する。 1年草で、湿地や二次的自然度の高い水田、休耕田、用水路脇などに見られる。 近似種 : ミズネコノオ ■分布:本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島 ■生育環境:湿地、溜池畔など。 ■花期:8〜10月 ■西宮市内での分布:市内には分布しない。 |
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↑Fig.4 花序。(兵庫県加西市・溜池畔 2008.10/12) 花序には花が密生してつき、幅は1cm以上と太くて、淡紅紫色の花がよく目立つ。 花冠が開く前に、まず雌蕊が水平に飛び出してくる(雌性期)、後に花冠が開くと雄蕊が現れ、雌蕊は徐々にしなだれはじめる(雄性期)。 画像では花序の上部が雌期で、雌蕊が長く水平に突き出している。 沢山の花の間に埋もれて、小さなハナバチが蜜を漁っていた。 |
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↑Fig.5 花序の一部を拡大。(兵庫県加西市・溜池畔 2008.10/12) 花冠は長さ3〜4mmで4裂し、裂片の長さはほぼ同長。雄蕊は花冠よりも長く飛び出す。 飛び出した花糸の装飾的な長い毛が目立ち、ふんわりとした柔らかな印象を受ける。 |
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↑Fig.6 茎と葉。(兵庫県加西市・溜池畔 2008.10/12) 茎、葉ともに無毛。茎には稜があり、やわらかい。 |
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↑Fig.7 葉。(兵庫県加西市・溜池畔 2008.10/12) 葉はふつう3〜4輪生し、葉柄はなく、線状披針形。葉縁にはまばらに切れ込みの浅い不明瞭な鋸歯がある。 |
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↑Fig.8 匍匐茎。(兵庫県加西市・溜池畔 2008.10/12) 浅い地中や地表に沢山の匍匐茎が横走する。節から発根し、まばらに茎を立ち上げる。 |
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↑Fig.9 紅葉期に開花したもの。(兵庫県加西市・溜池畔 2008.10/12) 背の低い地表近くの茎はまだ紅葉が始まっていない。 |
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↑Fig.10 花後、寒気を浴びて紅葉した草体。(兵庫県加西市・溜池畔 2008.10/5) 秋には草体が紅葉し、群生地では池畔の一画が赤く染まる。 |
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↑Fig.11 花後の果実形成期の花序。(兵庫県加西市・溜池畔 2008.10/12) 萼は閉じて、中で子房が充実しつつある。 |
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↑Fig.12 熟して開いた果実。(兵庫県加西市・溜池畔 2008.11/2) 萼の中で種子が熟すと、5裂した萼片は大きく開いて種子が落ちる。 |
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↑Fig.13 種子。(兵庫県加西市・溜池畔 2008.11/2) 長さ0.5〜0.7mm、卵形〜楕円形で、黒褐色。表面には光沢がある。 |
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↑Fig.14 晩秋に形成された越冬芽。(兵庫県加西市・溜池畔 2009.10/30) 晩秋になると、匍匐茎の節から出た側枝先端に小さな葉を密着して肥厚した越冬芽を形成する。 地中に形成されたものは白色だが、地表にあるものでは紫色を強く帯びる。 |
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↑Fig.15 初夏の成長初期。(滋賀県・内湖畔 2009.6/11) 泥上を横走する匍匐茎の節から茎を立ち上げ、同時に発根する。 |
生育環境と生態 |
Fig.16 溜池畔に群落をつくるミズトラノオ。(兵庫県加西市・溜池畔 2008.10/5) 池畔ではトダシバ、カモノハシ、ミカワシンジュガヤ、チゴザサが優占するが、所々にミズトラノオの大きな純群落がある。 |
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Fig.17 アシ群落の外側を埋めるミズトラノオ。(滋賀県・池畔 2007.11/8) |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑や一般書籍を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 村田源, 1981. シソ科ミズトラノオ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本3 合弁花類』 p.83. pl.69. 平凡社 北村四郎・村田源・堀勝, 2004 ミズトラノオ属. 『原色日本植物図鑑 草本編(1) 合弁花類』 p.172. pl.52. 保育社 牧野富太郎, 1961 ムラサキミズトラノオ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 540. 北隆館 関口克己. 2001. ミズトラノオ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1218〜1219. 神奈川県立生命の星・地球博物館 村田源. 2004. ミズトラノオ. 『近畿地方植物誌』 43. 大阪自然史センター 関岡祐明・中本学. 2001. 表土移植によるミズトラノオ群落の保全 -3年間モニタリングの結果-. 日本緑化工学会誌 27(1):357〜358. 黒崎史平 2005. ミズトラノオ. 兵庫県産維管束植物6 シソ科. 人と自然15:134. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:7th.Nov.2014 |