ミズユキノシタ | Ludwigia ovalis Miq. | アカバナ科 チョウジタデ属 |
湿生〜抽水〜沈水植物 |
Fig.1 (兵庫県三田市・溜池畔 2007.8/16) |
||
Fig.2 (兵庫県三田市・溜池 2011.9/14) 湿地や溜池畔、河畔などの泥質の土壌に生える多年草。沈水状態で生育するものもよく目にする。 茎は分枝しながら地表を這って横にひろがり、節から発根して定着し、上部では斜上する。 葉は互生し、短い柄を持ち卵形で、長さ1〜2.5cm、幅0.7〜1.8cm。葉裏は紅紫色を帯び、数個の支脈が目立つ。 花期、気中葉の葉腋に花弁のない目立たない花をつける。 花は4裂する萼片からなり、約径5mm、淡黄色で、雌蕊1個、雄蕊4個がある。 刮ハは4室からなり、長さ3〜5mm、萼片は宿存する。 ミズユキノシタと似た同属のもので、逸出が報告されている外来種が2種ある。 アメリカミズユキノシタ(L. repens)は葉が対生してつき、ごく小型の黄色の花弁を持つ。 セイヨウミズユキノシタ(L. palustris)も葉が対生するが、花弁は無い。 近似種 : アメリカミズユキノシタ、 セイヨウミズユキノシタ ■分布:本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島、中国 ■生育環境:湿地、溜池畔、河畔など。 ■花期:7〜10月 ■西宮市内での分布:2010年にFさんから報告を受けて、市内北部の用水路内でようやく生育しているのを確認した。 |
||
↑Fig.3 葉は茎から互生し、花期には葉腋に目立たない花を付ける。(兵庫県三田市・溜池畔 2007.8/16) |
||
↑Fig.4 開花したミズユキノシタの花。(兵庫県三田市・溜池畔 2007.8/16) 花弁はなく、黄緑色〜緑色の4裂した萼片の中に、4個の雄蕊と1個の雌蕊がある。 |
||
↑Fig.5 水中に落下した果実。(自宅植栽 2007.8/19) 果実は刮ハで4室あり、倒卵状のたる形。萼片は宿存する。 内部が透けて種子がつまっている様子がわかる。 |
||
↑Fig.6 ミズユキノシタの種子。(自宅植栽 2007.8/19) 種子には海綿状でやや脆い付属物がある。これによって種子は水面上を数日間浮遊し、種としての生育領域を広める。 種子本体の表面には、非常に隆起の低い横長の網目模様が見られる。 |
||
↑Fig.7 成長期のミズユキノシタ。(兵庫県三田市・溜池畔 2007.5/10) みずみずしい草体の赤と緑の対比が美しい。 |
||
↑Fig.8 溜池畔で越冬中の個体。(兵庫県三田市・溜池畔 2007.2/4) 草体は赤く染まって小型化し、葉も少し縮れてやや厚味を増す。 |
||
↑Fig.9 落ち葉の下で越冬する個体。(兵庫県三田市・溜池畔 2007.2/1) 落ち葉のマットによる保温効果だろうか、草体は緑を保ちみずみずしかった。 やはり、夏期よりも葉の厚味は増している。 |
||
↑Fig.10 沈水状態で越冬中のミズユキノシタ。(兵庫県三田市・溜池畔 2007.3/22) 気中と較べて比較的温度変化の緩慢なやや深い水中では、生長は止まるが、画像のように繁ったままで越冬する。 水中に沈水状態で生育するものは、草体が赤味を帯びやすい。 |
西宮市内での生育環境と生態 |
現在、画像はありません |
他地域での生育環境と生態 |
Fig.11 溜池畔で群生するミズユキノシタ。(兵庫県篠山市・溜池畔 2008.7/27) 谷津田下部の溜池畔でミズワラビ、ミズニラ、イボクサ、ハリイ、コウガイゼキショウ類とともに生育していた。 |
||
Fig.12 溜池の浅瀬で沈水状態で群生するミズユキノシタ。(兵庫県三田市・溜池畔 2007.6/21) 山間にあるヤマトミクリが密生する溜池の、わずかな空間にミズユキノシタが群生していた。 小さな線形の草体はヤマトミクリの幼苗で、やがてはこの空間もヤマトミクリに覆われてしまうのかもしれない。 |
||
Fig.13 中栄養な溜池で沈水植物群落を形成するミズユキノシタ。(兵庫県三田市・溜池 2008.8/17) 西宮市には見られないが、ミズユキノシタは兵庫県下では貧栄養〜やや富栄養、腐植栄養な溜池まで広く生育が見られる。 画像左手の水中に見えるのがミズユキノシタ。それに続くモヤモヤとした部分にはヒロハトリゲモとタチモ、マツモが生育している。 画像右には小さなヒルムシロとイボクサが見える。水面にはヒシとジュンサイが生育し、他にイヌタヌキモとクロモが見られた。 |
||
Fig.14 湧水中に生育するミズユキノシタ。(兵庫県丹波市・湧水湿地 2010.5/14) 溜池畔に湧水湿地が見られ、その湧水中に紅葉したミズユキノシタが生育していた。 湧水中にはセリが多く、チドメグサ、イボクサ、ムツオレグサ、オオバタネツケバナ、ミソハギが沈水〜抽水状態で生育し、 このような環境を好むカワゴケの仲間や、チョウチンゴケの仲間が見られた。 |
||
Fig.15 溜池の浅水域に生育するミズユキノシタ。(兵庫県三田市・溜池 2011.9/14) 水中画像。自然度の高い溜池の浅水域のハリイsp.群落中に生育している。 画像中にはヒメタヌキモ、ヒツジグサ、ヒメホタルイが見られ、他にホッスモ、イトモ、ミズオオバコ、サイコクヒメコウホネ、イヌタヌキモが生育する。 |
||
【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 角野康郎, 1994. アカバナ科チョウジタデ属. 『日本水草図鑑』 p.132. pls.134. 文一統合出版 大滝末男, 1980. セイヨウミズユキノシタ、ミズユキノシタ. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 54〜55. 北隆館 北川政夫, 1982. アカバナ科チョウジタデ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.266〜267. pls.243. 平凡社 北村四郎・村田源, 2004 アカバナ科チョウジタデ属. 『原色日本植物図鑑 草本編(2) 離弁花編』 p.43〜44. pls.12. 村上司郎. 2001. アカバナ科チョウジタデ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1037〜1040. 神奈川県立生命の星・地球博物館 大場秀章. 2001. アカバナ科チョウジタデ属. 清水建美(編)『日本の帰化植物』 p.143〜144. pls.64. 平凡社 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ミズユキノシタ. 『六甲山地の植物誌』 163. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. ミズユキノシタ. 『近畿地方植物誌』 64. 大阪自然史センター 黒崎史平 2003. ミズユキノシタ. 兵庫県産維管束植物5 アカバナ科. 人と自然14:147. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:13th.Nov.2011 |