ナズナ | Capsella brusa-pastoris Medik. var.triangularis Grunner | アブラナ科 ナズナ属 |
湿生植物 |
Fig.1 (西宮市・畑地 2009.3/7) 低地の道端、畑地、畦などに生育する越年草。 根は円柱形で地中に長く伸びる。根生葉は頭大羽状裂葉で、形や大きさに変化が多い。 茎葉は基部が矢じり形で茎を抱く。茎は直立して分枝し、高さ10〜50cm。 花は総状花序にまばらにつき、萼片は長楕円状卵形で、外面に毛がある。 花弁は萼片より明らかに長く、白色、卵形、長さ1.5〜2.5mm、幅1〜1.3mm。 短角果は長さ5〜8mm、種子は広卵形で扁平、黄褐色で、長さ1〜2.5mm、幅0.5〜0.75mm。 過去にナズナはナズナとオオナズナに分ける見解があったが、現在は同一種と見るのが大勢を占めている。 ナズナ属ではナズナただ1種が国内に分布するが、以下のような同属の外来種が確認されている。 ホソミナズナ(C. bursa-pastoris)は果実が長倒3角形。北半球に広く分布。 ハートナズナ(Capsella sp.)短角果は小型で、丸みを帯び、頂部は浅裂するように切れ込む。果柄は短く、花軸に狭い間隔でつく。 ルベラナズナ(C. rubella)は花弁がわずかに萼片より長いかほぼ同長、果実は長倒3角形、短角果の外縁はやや内曲気味、花弁の辺縁は赤味を帯びる。 近似種 : ホソミナズナ、ルベラナズナ ■分布:日本全土 ・ 北半球に広く分布。 ■生育環境:道端、畑地、休耕田、畦など。 ■果実期:3〜6月・秋冬にも開花を見る ■西宮市内での分布:山地帯をのぞいた全域に普通。 |
||
↑Fig.2 直立した茎の上部に花をつける。(西宮市・管理休耕田 2009.2/15) |
||
↑Fig.3 冬期に開花したナズナ。(西宮市・管理休耕田 2009.1/6) ナズナは秋期〜冬期に開花する個体も多い。 |
||
↑Fig.4 馴染み深い短角果(刮ハ)。(西宮市・管理休耕田 2009.2/15) 短角果はアブラナ科ではナズナ属、イヌナズナ属、グンバイナズナ属、マメグンバイナズナ属に見られ、種を区別するのに重要となる。 ナズナの短角果は倒三角形で、長さ5〜8mm、先端が少しくぼむ。 |
||
↑Fig.5 割れた短角果。(西宮市・管理休耕田 2009.2/15) 熟すと短角果の外壁は落ち、2室を分ける隔壁の部分が残る。 |
||
↑Fig.6 種子の付き方(目盛りは1mm)。(西宮市・管理休耕田 2009.2/15) 種子は外壁に付かず、全て隔壁の外縁部分につく。 |
||
↑Fig.7 種子。(西宮市・管理休耕田 2009.2/15) 広卵形で扁平、中央より少し外側に浅い溝があり、表面には細かい皺がある。 |
||
↑Fig.8 茎と茎についた葉。(西宮市・管理休耕田 2009.2/15) 茎には毛が生える。茎につく葉は無柄で、基部が耳状となって茎を抱く。 |
||
↑Fig.9 ナズナのロゼット。(西宮市・刈り取り後の水田 2008.11/23) ロゼット葉の最下裂片はくさび形となって葉柄へと流れる。葉柄は紫色を帯びることが多い。 |
||
↑Fig.10 七草粥の時期の全草。(西宮市・管理休耕田 2011.1/4) ナズナは七草粥の時期には多くはロゼットを形成している。主根は深く地中に垂直に伸び、長さは根生葉のおよそ2倍となる。 葉と同様、根も食用となり、味は良い。中国や韓国では野菜として流通している。 |
||
↑Fig.11 開花初期の個体。(兵庫県篠山市・空き地 2009.3/1) まだ果実は形成されていない。葉の変異が激しい個体で、裂片が細長く別種のように見えるものがある。 |
西宮市内での生育環境と生態 |
Fig.12 休耕中の畑地に生育するナズナ。(西宮市・畑地 2009.3/1) コハコベ、ホトケノザなどとともに畑地を埋めていた。 |
||
Fig.13 乾田の管理休耕田中に生育するナズナ。(西宮市・管理休耕田 2008.3/16) 時折耕起される休耕田で、コオニタビラコ、コハコベ、タネツケバナ、スイバ、ヒメオドリコソウなどとともに生育している。 |
||
【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 北川政夫, 1982. アブラナ科ナズナ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.124. pls.129. 平凡社 北村四郎, 2004 アブラナ科ナズナ属. 北村四郎・村田源 『原色日本植物図鑑 草本編(2) 離弁花類』 p.172. pls.40. 保育社 牧野富太郎, 1961 ナズナ、オオナズナ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 213. 北隆館 吉田多美枝・城川四郎. 2001. アブラナ科ナズナ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 753〜755. 神奈川県立生命の星・地球博物館 中井秀樹. 2001. ルベラナズナ. 清水建美(編)『日本の帰化植物』 p.85. 平凡社 清水矩宏・森田弘彦・廣田伸七. 2001. ルベラナズナ. 『日本帰化植物写真図鑑』 93. 全国農村教育協会 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ナズナ. 『六甲山地の植物誌』 128. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. ナズナ. 『近畿地方植物誌』 101. 大阪自然史センター 黒崎史平 2006. ナズナ. 兵庫県産維管束植物3 アブラナ科. 人と自然12:155. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:30th.Jun.2009 |