ニオイタデ	Persicaria viscosa 　(Buch.-Hum. ex D.Don) H.Gross ex T.Mori	タデ科 イヌタデ属
湿生植物　　兵庫県RDB Cランク種

Fig.1　（兵庫県播磨・溜池畔　2011.10/29） 原野環境的な湿地に生える1年草。 茎は丈が高くなり、多くの枝をわけ、葉とともにあらい長毛と腺点を密生し、香気があり、高さ50〜150cmになる。 葉は有柄、披針形〜広披針形、先は鋭尖頭、基部はくさび形で葉柄に沿って流れ、長さ5〜15cm、幅1.5〜4cm、葉柄には波状の翼がある。 托葉鞘は長い筒形で、膜質、毛が多く、長さ7〜15mm。 総状花序は密に花をつけ、頂生ときに腋生し、長さ約5cmになる。萼（花被）は5深裂し、紅色、長さ2〜3mm。 痩果は3稜形、広卵形、黒褐色で、長さ2.5〜3mm。 全体が多毛なイヌタデ属に以下のものがある。 ネバリタデ（P. viscofera）は総状花序は細い穂状で、直立し、花被片は淡紅色〜緑白色、長さ約2mm。痩果は3稜形で、長さ1.5〜2mm。 山野の湿った草地や日当たりよい林縁などに生育する。 オオネバリタデ（P. makinoi）はネバリタデに似るが、高さ1mを超え、枝は細く、葉は長披針形。山野の湿った草地や日当たりよい林縁などに生育する。 オオケタデ（P. pilosa）は帰化種。大型で、葉は広卵形〜卵形で基部は円形〜心形。托葉鞘上部は葉状となって開出する。花被片は淡紅色〜白色。 オオベニタデ（P. orientalis）はオオケダテに似るが観賞用として栽培され、高さ2mを超え、花序は垂れ下がり、花も大きく紅色。 近似種　：　ネバリタデ、オオネバリタデ、オオケダテ ■分布：本州（関東以西）、四国、九州　・　朝鮮半島、中国、ウスリー、インド ■生育環境：原野環境的な河畔や溜池畔、休耕田など。 ■花期：8〜10月 ■西宮市内での分布：市内では確認されていない。県下でも自生地は局所的である。

↑Fig.2　地上部の一部標本。（兵庫県播磨・溜池畔　2011.10/29） 　 茎はよく分枝し、粗い毛がよく目立つ。

↑Fig.3　茎の拡大。（兵庫県播磨・溜池畔　2011.10/29） 　 茎には粗い毛と、短い腺毛が生えている。

↑Fig.4　葉。（兵庫県播磨・溜池畔　2011.10/29） 　 葉は有柄、披針形〜広披針形、先は鋭尖頭、基部はくさび形で葉柄に沿って流れる。

↑Fig.5　葉表。（兵庫県播磨・溜池畔　2011.10/29） 　 葉表には伏した粗い毛と、微小な腺点がある。

↑Fig.6　葉裏。（兵庫県播磨・溜池畔　2011.10/29） 　 葉裏には脈上に長い毛があり、細かい腺点を密布する。

↑Fig.7　托葉鞘。（兵庫県播磨・溜池畔　2011.10/29） 　 托葉鞘は筒形で、膜質、毛が多い。

↑Fig.8　下方の節は肥厚する。（兵庫県播磨・溜池畔　2011.10/29）

↑Fig.9　花序。（兵庫県播磨・溜池畔　2011.10/29）

↑Fig.10　花序の拡大。（兵庫県播磨・溜池畔　2011.10/29） 　 画像のものは果実期の花序で、すでに開花は終わっている。花被は鮮やかな紅色。

↑Fig.11　痩果。（兵庫県播磨・溜池畔　2011.10/29） 　 痩果は3稜形、広卵形、黒褐色で、長さ2.5〜3mm。

生育環境と生態

Fig.12　溜池畔に生育するニオイタデ。（兵庫県播磨・溜池畔　2011.10/29） 平野部の大規模な皿池の池畔の浅水域にヨシ群落が広がっており、その陸地側の縁やアシの切れ目にニオイタデが群生している。 ニオイタデはヤナギタデとともに池畔の広い範囲にわたって生育しており、ところによりゴキヅル、サデクサ、ミゾソバなどと混生している。

【引用、および参考文献】（『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。） 北川政夫, 1982.　タデ科イヌタデ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 （編） 　　　　　　　『日本の野生植物 草本2 離弁花類』　p.19〜24. pls.16〜22.　平凡社 北村四郎, 2004　タデ科タデ属. 北村四郎・村田源『原色日本植物図鑑　草本編（�U）　離弁花類』　p.299〜316. pl.65.　保育社 牧野富太郎, 1961　ニオイタデ. 前川文夫・原寛・津山尚（補遺・編） 『牧野 新日本植物図鑑』　119.　北隆館 長田武正・長田喜美子, 1984　タデ科. 『野草図鑑　8　はこべの巻』　154〜160.　保育社 林辰雄.　2001. タデ科イヌタデ属. 神奈川県植物誌調査会（編）『神奈川県植物誌　2001』　600〜616. 神奈川県立生命の星・地球博物館 村田源. 2004. ニオイタデ. 『近畿地方植物誌』 120.　大阪自然史センター 黒崎史平・高野温子・土屋和三 2001. ニオイタデ. 兵庫県産維管束植物3 タデ科. 人と自然12:112. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日：11th.Nov.2011

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