ノダケ Angelica decursiva  (Miq.) Fr. et Sav. セリ科 シシウド属
湿生植物
Fig.1 (西宮市・用水路脇 2006.9/25)

Fig.2 (兵庫県三田市・用水路脇 2011.9/17)

里山の農耕地周辺の湿った場所や草原に生育する多年草。
根は肥厚し、茎は高さ80〜150cm、稜線があり上部でわずかに分枝する。
葉は3出羽状複葉で下部のものには長い葉柄があり、小葉は3〜5個、ふつう少数の羽状の欠刻があり、基部は翼ろなって羽軸に沿下する。
上部の葉はきわめて小さくなり、葉柄は広い鞘となって球状にふくらむ。
花はふつう暗紫色(稀に白色)、花序の径は4〜10cm、総苞片は1個で、花序がつぼみの時は球形にふくらんで花序をつつむ。
果実は長さ4〜6mm、扁平で油管は肋間に1〜4個。

山間の草原などにはヒメノダケ (ツクシノダケ)A. cartilaginomarginata)が生育するが、花は白色で、総苞片はない。
近似種 : ヒメノダケ

■分布:北海道、本州(岩手県以西)、四国、九州 ・ 朝鮮半島、中国、満州、ウスリー、インドシナ
■生育環境:里山の農耕地周辺の湿った場所や草原など。
■花期:9〜11月
■西宮市内での分布:北部の棚田周辺に見られるがあまり多くはない。

Fig.3 花序を上から見る。(西宮市・用水路脇 2006.9/25)
  花序はセリ科に多い複散形花序。花弁は小さく、長くのびた雄蕊がよく目立つ。雄性先熟。

Fig.4 花序を横から見る。(兵庫県三田市・溜池土堤 2007.9/16)
  西宮市と周辺市域で見られるものは花茎、花序枝、小花柄、花弁ともに暗紫色を強く帯びている。
  複散形花序の基部には大きな総苞片が1枚つく。

Fig.5 ほとんど紫色を帯びない個体。(長崎県・海岸の土手 2009.10/25)
  地域によっては紫色を帯びない個体を多く見ることがあり、これをシロバナノダケ(f. albiflora)とすることがある。
  画像のものはその中間的な個体である。

Fig.6 総苞片の変異。(兵庫県小野市・溜池土堤手 2011.10/29)
  溜池土堤で草刈り後に生育した個体に総苞片の変異のいちじるしい個体が数多く見られた。
  複散形花序基部の大きな総苞片は見られず、小散形花序基部の総苞片が数枚発達している。

Fig.7 未成熟な果実。(西宮市・農道脇 2008.11/16)

Fig.8 果実。背面(左)と合生面(右)。(西宮市・湿った草地 2009.11/10)
  果実は楕円形で、ふつう長さ4〜6mm、背面には肋(背隆条)が3個ある。
  西宮市内のノダケは『原色日本植物図鑑 2』p.27の図版のように扁平とならず、両縁(側隆条)の部分は翼状に発達せずにドーム状となる。
  したがって強風が吹いても、飛ばされることなく落下するのみであろう。そのためかどうか、1ヶ所に固まって見られる。

Fig.9 果実の横断面。上が背面で、下が合生面。(西宮市・湿った草地 2009.11/10)
  セリ科の草本の果実の多くには油管があって精油が貯蔵されている。画像の外果皮下に見える褐色の部分が油管である。
  ノダケでは油管は肋の間に1〜4個の油管があり、うち肋間の背溝中央にある1個は縦に途切れることなくあるが、他のものは途切れるものが多い。

Fig.10 春先に出芽した個体。(西宮市・棚田の土手 2010.4/5)
  春先には3小葉の根生葉を出芽する若い個体も見られる。

Fig.11 ノダケの葉。(西宮市・休耕田 2007.5/17)
  3出羽状複葉で、根生葉の小葉は羽状の欠刻が著しい。鋸歯は明瞭で硬い。

Fig.12 成長期のノダケ。(西宮市・休耕田 2007.5/17)
  根生葉を大きく広げた草体は一抱えほども広がる。

Fig.13 キアゲハ幼虫の食害を受けるノダケ。(兵庫県三田市・溜池土堤 2011.9/17)
  ノダケの結実期の花序がキアゲハ幼虫の食害を受けていた。セリ科草本の多くはキアゲハの幼虫の食害に遭っていることが多い。
  画像のものは多くの小散形花序がすっかり食べられて、複散形花序の柄だけが食い残されている。

西宮市内での生育環境と生態
現在、画像はありません。

他地域での生育環境と生態
Fig.14 溜池土堤に生育するノダケ。(兵庫県三田市・溜池土堤 2011.9/24)
ネザサ、ススキを主体とする溜池土堤に多数のノダケが生育していた。
ノダケは土堤の中部から下部にかけて生育しており、中部ではワレモコウ、オミナエシ、ツリガネニンジンなどとともに、
下部ではヤマラッキョウ、ホソバリンドウ、ゼンマイなとともに生育している。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
北川政夫, 1982. セリ科シシウド属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.286〜289. pls.262〜269. 平凡社
村田源, 2004 セリ科シシウド属. 『原色日本植物図鑑 草本編(2) 離弁花編』 p.23〜29. pls.6〜7. 保育社
牧野富太郎, 1961 ノダケ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 446. 北隆館
長田武正・長田喜美子, 1984 ノダケ. 『野草図鑑 6 おきなぐさの巻』 p.60. pls.58. 保育社
河済英子. 2001. セリ科シシウド属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1082〜1086. 神奈川県立生命の星・地球博物館
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ノダケ. 『六甲山地の植物誌』 166. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. ノダケ. 『近畿地方植物誌』 59. 大阪自然史センター

最終更新日:19th.Nov.2011

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