ヌマダイコン | Adenostemma lavenia (L.) O.Kuntze | キク科 ヌマダイコン属 |
湿生植物 |
Fig.1 (長崎県・農道の溝脇 2009.10/25) |
||
Fig.2 (兵庫県小野市・溜池畔 2010.11/15) 河畔、用水路脇、湿地、溜池畔、林縁の湿った場所などに生える多年草。暖地に多い。 茎は高さ20〜100cm。葉は対生し、有柄で、卵形〜卵状長楕円形、長さ4〜20cm、鈍鋸歯があり、両面にまばらに短毛がある。 頭花は小さく、まばらな散房状につき、開花時には径5〜6mm、のちに7〜8mmとなる。 総苞は半球形、総苞片は2列でほぼ同長、鈍頭、花後に反り返る。 小花は筒状の両性花で、長さ2.5mm、下部に腺毛があり、上部に毛が生え、先は5歯に分かれる。 花柱は長く突き出て、枝は長さ約2mm、先は平たくなり円い。 痩果は棍棒状、長さ4mm、密に小さい瘤があるか腺点があり、側面は不整なかさぶた状の隆起がある。 冠毛は4本、長さ1mm、棍棒状。花床は後に凸出する。 オカダイコン(A. madurense)はヌマダイコンより乾いた場所に生育し、痩果側面は平滑。近畿以西の暖地に分布する。 近似種 : オカダイコン ■分布:本州(関東以西)、四国、九州、沖縄 ・ 朝鮮、中国、マレーシア、インド、オーストラリア ■生育環境:河畔、用水路脇、湿地、林縁の湿った場所など。比較的半日陰を好む。 ■花期:9〜11月 ■西宮市内での分布:市内では未確認だが、見つかる可能性は高い。兵庫県下では中南部に分布する。 |
||
↑Fig.3 葉は茎に対生してつき、葉柄がある。(長崎県・溜池畔の林縁 2009.10/4) |
||
↑Fig.4 葉は卵形〜卵状長楕円形。(長崎県・溜池畔の林縁 2009.10/4) |
||
↑Fig.5 葉の表面。(長崎県・溜池畔の林縁 2009.10/4) 表面にはまばらに短毛が生え、縁は鈍鋸歯が並ぶ。 |
||
↑Fig.6 葉の裏面。(長崎県・溜池畔の林縁 2009.10/4) 裏面は短毛が表面ほど顕著ではなく、脈上に微短毛が並ぶ。 |
||
↑Fig.7 花序。(長崎県・林道の溝脇 2009.10/25) まばらな散房花序。花柄は互生してつき、下部の柄ほど長く伸びる。 |
||
↑Fig.8 開花初期の頭花。(長崎県・溜池畔の林縁 2009.10/4) 総苞はまだ完全に開ききっておらず球状に近いが、後に開いて半球状となる。 飛び出している白色で扁平な棒状のものは花柱で、筒状花の中から2本づつ出ており、先は円い。 |
||
↑Fig.9 果実形成期の頭花。(長崎県・溜池畔の林縁 2009.10/4) 花後、痩果がふくらみはじめると筒状花の花筒は押し出されて、固まった状態で落ちる。画像ではクモの糸にぶらさがった花筒の塊が見える。 総苞片は外反し、花床は凸出しはじめ、熟すにつれて痩果は放射状に開く。 |
||
↑Fig.10 熟した頭花。(長崎県・溜池畔の林縁 2009.10/4) 総苞は完全に外反し、痩果は開いて、頭花(果実)は球状となる。 |
||
↑Fig.11 果実の拡大。(長崎県・溜池畔の林縁 2009.10/4) 痩果の先には宿存性の短い棍棒状の冠毛があり、そこから粘液が分泌され、他のものに引っ付く。 |
||
↑Fig.12 痩果。(兵庫県小野市・溜池畔 2010.11/15) 痩果は棍棒状で、表面には不整なかさぶた状の隆起があるほか、さらに拡大すると全面に密に腺点が見られ、粘つく。 |
生育環境と生態 |
Fig.13 半日陰の渓流畔で生育するヌマダイコン。(長崎県・渓流畔 2009.10/20) 棚田脇を流れる小さな渓流畔のセキショウやアキカサスゲの群生の中に点々と生えていた。 ヌマダイコンは日当たり良い用水路脇で見ることもあるが、多少樹林がかぶるような半日陰の場所に多い。 |
||
Fig.14 半日陰の林道脇に群生するヌマダイコン。(長崎県・農道の溝脇 2009.10/25) 半日陰の農道脇に素掘りの溝が掘られ、その周りに立派な群生が見られた。 後方に見えている黄色い花はツワブキ。同所的にキツネノマゴ、コブナグサ、ヒメアシボソ、イヌタデ、テンツキ、ヒデリコが生育していた。 |
||
Fig.15 溜池畔の湿地に生育するヌマダイコン。(兵庫県小野市・溜池畔 2010.11/15) 溜池畔のアゼスゲ群落を主体とする湿地の一画に小群生が見られた。 ヌマダイコンはどの個体も強度の草刈りに遭っており、切断された主茎の下方の節から多数分枝して地表に広がるように生育していた。 同所的には画像中に見られるキセルアザミ、テリハノイバラの他、ホソバノウナギツカミ、ヤノネグサが見られた。 |
||
【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 北村四郎, 1981. キク科ヌマダイコン属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本3 合弁花類』 p.212. pl.187. 平凡社 北村四郎・村田源, 2004 キク科ヌマダイコン属. 『原色日本植物図鑑 草本編(1) 合弁花類』 p.69. pl.22. 保育社 牧野富太郎, 1961 ヌマダイコン. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 617. 北隆館 大場達之. 2001. キク科ヌマダイコン属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1345. 神奈川県立生命の星・地球博物館 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ヌマダイコン. 『六甲山地の植物誌』 200. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. ヌマダイコン. 『近畿地方植物誌』 17. 大阪自然史センター 小山博滋・黒崎史平・布施静香 2007. ヌマダイコン. 兵庫県産維管束植物8 キク科ヌマダイコン属. 人と自然17:144. 兵庫県立・人と自然の博物館 小川誠. 2006. オカダイコン. 小川誠のページ その他の徳島県の植物. 徳島県立博物館 WEBサイト 最終更新日:11th.Dec.2011 |