ヌマカゼクサ Eragrostis aquatica  Honda イネ科 スズメガヤ属
湿生植物
Fig.1 (兵庫県加東市・溜池畔 2008.10/12)

溜池畔、湿地などに生える多年草。
草体は叢生して、数本の花茎を倒伏気味に斜上し、高さ30〜50cm、腺体はない。
葉は線形で幅2〜6mm。葉も葉鞘もともにざらつかない。葉耳の縁には長毛がまばらに生える。
円錐花序は広卵形で、花序中軸の下部の節には2〜数本の花序枝がつく。
小穂は長さ5〜15mm、灰汚紫〜紫褐色を帯び、花序枝に数個が寄り添うように側生し、柄は無いか、あっても短い。

似たものにイトスズメガヤ(E. bulbillifera)がある。
花序枝は花序中軸の各節から単生し、小穂の長さ5〜15mmで暗緑色〜褐色を帯び、葉幅は1〜2.5mm。
■分布:本州(近畿・東海地方と四国北東部) ・ 日本固有
■生育環境:溜池畔、湿地など。
■花期:8〜11月
■西宮市内での分布:市内では確認できていない。兵庫県内では分布は南西部に偏り、特に播磨地方に多い。

Fig.2 茎下部は倒伏気味。花茎は斜上して横に広がる。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.11/23)

Fig.3 花序。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.10/12)


Fig.4 花序枝。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.10/12)
  花序枝はまばらに分枝し、先端に小さな小穂をまばらに付ける。小穂は花序枝に寄り添うように側生し、開出しない。

Fig.5 小穂。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.10/12)
  長さ長さ5〜15mm、灰汚紫〜紫褐色を帯びる。
  小穂から小花を取り外そうとしたが、内頴と頴果は小軸に固着し、護頴だけが外れてきた。

Fig.6 茎と葉身の基部付近。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.10/12)
  葉鞘は節間よりも短く、節は無毛で、肥厚しない。

Fig.7 葉耳の外縁には長毛がある。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.10/12)

Fig.8 紅葉したヌマカゼクサ。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.10/19)
  画像には雨後の増水によって抽水状態となったものが見える。

生育環境と生態
Fig.9 溜池畔に生育するヌマカゼクサ。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.10/19)
溜池畔の裸地に点々と生育することが多い。ここでは、ヌメリグサ、スズメノコビエなどのイネ科草本、オオホシクサ、ホシクサ、
ツクシクロイヌノヒゲ、イヌノヒゲなどのホシクサ科草本、ナガエフタバムグラ、トキンソウ、サワトウガラシ、アゼナ、アリノトウグサなどの
裸地〜半裸地環境を好む湿生植物とともに生育するのが見られた。画像はヌメリグサとともに生育するヌマカゼクサ。

Fig.9 湿生植物群落中のヌマカゼクサ。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.10/19)
横に花茎を長く伸ばしているのがヌマカゼクサ。
画像にはサワトウガラシ、イヌノヒゲ、ツクシクロイヌノヒゲが見える。

Fig.10 溜池畔に見られたヌマカゼクサ群落。(兵庫県加東市・溜池畔 2010.9/29)
減水した溜池畔の比較的上部に形成されていたヌマカゼクサ群落。
群落中にはスズメノコビエがまばらに見られ、草丈の低いイトイヌノヒゲ、アゼナ、ミゾカクシ、サワトウガラシが亜群落を形成していた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大井次三郎, 1982. イネ科スズメガヤ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 p.105〜106. pls.88. 平凡社
小山鐡夫, 2004 ヌマカゼクサ. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.332,334. 保育社
藤本義昭. 1995. イネ科スズメガヤ属. 『兵庫県イネ科植物誌』 109〜113. 藤本植物研究所
桑原義晴, 2008 ヌマカゼクサ. 『日本イネ科植物図譜』 pp.216. 全国農村教育協会
小林禧樹. 1989. ヌマカゼクサ. 『西神戸の植物』 29. 自費出版
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ヌマカゼクサ. 『六甲山地の植物誌』 229. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. ヌマカゼクサ. 『近畿地方植物誌』 174. 大阪自然史センター
藤本義昭・布施静香・黒崎史平・高橋晃・高野温子 2008. ヌマカゼクサ. 兵庫県産維管束植物10 イネ科. 人と自然19:180. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:31st.Dec.2010

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