サギスゲ | Eriophorum gracile Koch var. coreanum Ohwi |
カヤツリグサ科 ワタスゲ属 |
湿生植物 兵庫県RDB Aランク種 |
Fig.1 (兵庫県芦屋市・湿地 2003.6/10) 山地から亜高山の湿地に生育する多年草。 横走する根茎があり、茎は株立ちとならず単生して、まばらに群生し、高さ20〜50cm、鈍い3稜があり、細くてやわらかい。 根生葉はときに茎よりも長く伸び、茎の葉は1〜2個、刺針状で短く、基部は鞘となる。 花序は単純、小穂は2〜5個ついて、花時は長楕円形、長さ5〜10mmで、柄には短毛がある。 鱗片は鈍頭、膜質で淡灰黒色、細い脈がある。 痩果は狭長楕円形、長さ3〜3.5mm。 花被片は綿毛状で多数あって、果時(6〜8月頃)には長さ2cmほどに伸びて、小穂は倒卵状のかたまりとなる。 似たワタスゲ(E. vaginatum var. fauriei)は茎が硬く直立し、匍匐枝はなく、密な大株をつくる。小穂は1個を頂生する。 ミネハリイ属(Trichophorum)のヒメワタスゲ(T. alpinum)は葉が無葉身の鞘に退化し、小穂はワタスゲより小形で頂生する。 ■分布:北海道、本州 ■生育環境:山地〜亜高山帯の湿地。 ■果期:6〜8月 ■市内では分布しない。 |
生育環境と生態 |
Fig.2 氷河期の遺存種として隔離分布するサギスゲ。(兵庫県芦屋市・湿地 2003.6/10) サギスゲは近畿地方では氷河期の遺存種として隔離分布し、芦屋市の自生地が最南西限となる。 自生地は厳重にフェンスによって囲まれ、地元の人々によって保全されているが、年々生育領域が狭まっているという。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑や一般書籍を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 大井次三郎, 1982 カヤツリグサ科ワタスゲ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 pp.176. pls.159. 平凡社 小山鐡夫, 2004 カヤツリグサ科ワタスゲ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 pp.222〜223. pls.55. 保育社 牧野富太郎, 1961 サギスゲ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 762. 北隆館 勝山輝男・堀内洋. 2001. ワタスゲ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 439〜440. 神奈川県立生命の星・地球博物館 谷城勝弘, 2007 ワタスゲ属. 『カヤツリグサ科入門図鑑』 198. 全国農村教育協会 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. サギスゲ. 『六甲山地の植物誌』 pp.250. pls.42. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. サギスゲ. 『近畿地方植物誌』 164. 大阪自然史センター 小西哲・室井綽, 1982 生き残り植物 エビゴケとサギスゲ. 『六甲の自然』 14〜16. 神戸新聞出版センター 岡島一允, 1984. 兵庫県六甲山に自生するサギスゲ. 水草研究会会報 17:30〜31. 黒崎史平・松岡成久・高橋晃・高野温子・山本伸子・芳澤俊之 2009. サギスゲ. 兵庫県産維管束植物11 カヤツリグサ科. 人と自然20:170. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:17th.Jan.2011 |