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Fig.1 （西宮市・用水路脇 2007.10/14）
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Fig.2 （兵庫県小野市・溜池畔 2012.9/28）
湿地や溜池畔に生育する多年草。自然度の高い棚田の用水路脇にも見かけることがある。
鉱物質の貧栄養な湿地より、やや中栄養よりの湿地や溜池畔に見かけることが多い。
地下には太い根茎があり、冬期は根茎で越冬する。
茎は高さ50～100cmになり、無毛、直立して枝分かれせず、中空で、折ると白色の乳液を出す。
葉は互生してつき、柄がなく、長さ4～7cm、幅5～15mmの披針形で、低い鋸歯があり、先は鋭頭。
花期、茎の頂部の葉腋に柄のある花を多数つけ、総状花序をつくる。
花は鮮やかな紫色で美しく、2唇形で、上唇は2深裂して細く左右に伸び、下唇は3中裂し裂片は披針形で、縁には軟毛をつける。
蒴果は長さ8～10mm、やや扁平な球形で萼片と花柱は宿存する。
種子は長さ1.5mm～2mm、扁平な卵形で2面あり、片面は湾曲した凸面となり、もう一方の面は内側に凹む。色は濃赤紫色。
折ると分泌される乳液にはロベリン（lobeline）というアルカロイドが含まれる。
ロベリンは有毒成分であるが、呼吸困難の際に回復薬として使われ、また、ニコチンと分子構造が類似するため、
ニコチンの代替物質として禁煙プログラムに使用されるという。
キキョウ科にはアルカロイドを含む植物が多いが、このうちミゾカクシ属がもっとも毒性は強いといわれている。
■分布：日本全土 ・ 千島、樺太、台湾、朝鮮半島、満州、東シベリア
■生育環境：やや中栄養よりの湿地、溜池畔など。
■花期：8～10月
■西宮市内での分布：北部の低山の山間部にある湿地や溜池畔、棚田の用水路脇で見られる。
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↑Fig.3 サワギキョウの総状花序。（西宮市・溜池畔 2006.9/18）
花は互生する葉腋につき、2唇形で鮮やかな紫色で、形が鳥の飛ぶ姿にも見え山野草として人気が高い。
花柱は集葯雄蕊に囲まれ、雄性先熟で、雌蕊は雄蕊が花粉を出し切ってから出現する。
2深裂して左右に開いた間から長く伸びているのが、花柱と花糸がひとつになったものである。
画像のものは雄蕊期で、先端に見える白色の付属物は細い長毛の束で、虫がこれに触れると花粉が外に出るしくみとなっている。
このあたりの花の仕組みに関しては、webサイト「石川の植物」のサワギキョウのページに詳しい。
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↑Fig.4 正面から見た唇形花。（西宮市・湿田の水路脇 2006.9/21）
下唇は3中裂し、裂片の縁には軟毛が生える。
画像の花は雌蕊期に入っており、花柱と柱頭が見えている。
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↑Fig.5 蒴果はやや扁平な球形で、5裂する萼片と花柱は宿存する。（西宮市・小湿地 2007.10/14）
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↑Fig.6 結実期に黄葉した草体。（兵庫県加東市・湿原 2011.11/14）
風を遮るもののない湿原に生育するものは、秋も深まると黄葉することが多い。
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↑Fig.7 種子は2面ある扁平な卵形で、濃赤紫色。（西宮市・溜池畔 2007.11/13）
片面は湾曲して凸形となり、もう一方の面は内側に凹む。図鑑ではレンズ状と表現されている。
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↑Fig.8 湿地で見られたサワギキョウの実生苗。（西宮市・湿地 2007.5/13）
高密度で発芽しているのは、花茎が倒れ込んで蒴果が地表に着いたためだろう。
種子の発芽率はかなり高い。
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↑Fig.9 春先に根茎から出芽した新芽。（西宮市・溜池畔 2007.4/8）
地下には太い根茎があり、根茎で越冬する。
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↑Fig.10 成長期のサワギキョウ。（西宮市・溜池畔 2007.5/12）
サワギキョウは湿地や溜池畔で群生する傾向が強い。
葉は互生するが単純な互生ではなく、葉の付く箇所は茎を螺旋状に取り巻いている。
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↑Fig.11 葉は螺旋状に互生してつくため、上から見ると一見輪生しているかのように見える。（西宮市・溜池畔 2007.5/12）
サワギキョウの間に見える、葉を対生する草体はヒメシロネ。
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Fig.13 中栄養な溜池畔の湿地に生育するサワギキョウ。（兵庫県加東市・湿地 2008.10/19）
湿地自体は貧栄養だが、溜池はガガブタやノタヌキモが生育する中栄養な溜池であり、湿地には池畔に生育するサワギキョウやミズオトギリ、
カモノハシなども侵入して生育している。画像の黄色の花はスイラン、桃色を帯びた花はサワヒヨドリ、線形の大きな草体はヌマガヤ。
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Fig.14 湿地化した休耕田に生育するサワギキョウ。（兵庫県篠山市・湿地 2010.10/7）
溜池直下にある休耕して40年程経過した水田跡が、溜池からの湧水によりオオミズゴケ群落の発達した湿地となり、サワギキョウが生育している。
サワギキョウが生育する場所はチゴザサ、アゼスゲ、シカクイ（狭義）が優勢で、そこにアブラガヤ、コマツカサススキ、キセルアザミ、ゴウソ、ヒメゴウソ、
ハイニガナ、タチカモメヅル、ショウジョウバカマ、サワヒヨドリなどとともに生育している。
付近の用水路脇にもサワギキョウが見られ、そこではアギナシ、ヌマトラノオ、チゴザサ、サワオグルマ、ハシカグサなどとともに見られる。
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Fig.15 遷移の進みつつある休耕田に生育するサワギキョウ。（兵庫県小野市・休耕田 2011.10/29）
遷移の進みつつある湿地環境に生育するサワギキョウは、進入した高茎草本と競合するため、丈は高く伸び1m以上におよび、多数の開花結実が見られる。
画像の休耕田ではガマとセイタカアワダチソウの勢力が勝り、サワギキョウが減少しつつある休耕田である。
現在はまだ地表面が多湿であるが、植物遺体の蓄積・分解により、湿地状の部分は次第に後退して、サワギキョウは見られなくなるだろう。
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Fig.16 溜池畔の湿原に群生するサワギキョウ。（兵庫県小野市・溜池畔 2012.9/28）
中栄養な溜池畔にある、湧水によって涵養された湿原にサワギキョウの群落が発達していた。
ここはサワギキョウの群生地であると同時に、ヤマラッキョウの群生地でもあり、サワギキョウの開花が終わると、ヤマラッキョウが一面に開花する。
湿原内には他にスイラン、サワヒヨドリ、アキノウナギツカミ、ツルマメ、タチカモメヅル、ワレモコウ、キセルアザミ、シロイヌノヒゲ、ヒメガマ、カモノハシ、
チゴザサが生育している。
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【引用、および参考文献】（『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。）
佐竹義輔, 1981. キキョウ科ミゾカクシ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 （編）
『日本の野生植物 草本3 合弁花類』 p.154～155. pl.128. 平凡社
北村四郎・村田源・堀勝, 2004. キキョウ科ミゾカクシ属. 『原色日本植物図鑑 草本編（3） 合弁花類』 p.91. pl.30. 保育社
牧野富太郎, 1961 サワギキョウ. 前川文夫・原寛・津山尚（補遺・編） 『牧野 新日本植物図鑑』 617. 北隆館
田中肇, 1997 ハナバチたち サワギキョウ. 『エコロジーガイド 花と昆虫がつくる自然』 p.38～41. 保育社
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. サワギキョウ. 『六甲山地の植物誌』 199. （財）神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. サワギキョウ. 『近畿地方植物誌』 30. 大阪自然史センター
黒崎史平・高橋晃 2006. サワギキョウ. 兵庫県産維管束植物7 キキョウ科. 人と自然16:127. 兵庫県立・人と自然の博物館
最終更新日：2nd.Feb.2014
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