サワヒヨドリ Eupatorium lindleyanum  DC. キク科 ヒヨドリバナ属
湿生植物
Fig.1 (西宮市・溜池畔 2007.8/30)

Fig.2 (兵庫県小野市・溜池畔 2012.10/31)

水田の畦や用水路脇、休耕田、溜池畔、湿地などに生育する多年草。
茎は直立し、高さ40〜90cm、上部には縮れた毛を密生する。
葉は長さ6〜12cm、幅1〜2cmで先は細まり鈍頭、柄はなく、ときに3深裂し、両面に縮れた毛が多く、下面には腺点がある。
花序は密な散房花序。総苞は長さ4〜5mmで5小花からなる。
痩果は長さ2.5mm、冠毛は白色。

河川敷や堤防などに生育するフジバカマE. fortunei)に似る。
フジバカマの葉はやや硬く、柄があり、表面にはやや光沢があって、腺点はない。総苞は長さ7〜8mm。
園芸店などで売られているフジバカマは、ほとんどがフジバカマとサワヒヨドリの種間雑種であるという。

■分布:北海道、本州、四国、九州、沖縄 ・ 朝鮮半島、台湾、インド、東アジア
■生育環境:水田の畦や用水路脇、休耕田、溜池畔、湿地など。
■花期:8〜10月
■西宮市内での分布:中・北部の棚田周辺に比較的普通。

Fig.3 開花したサワヒヨドリ。(西宮市・溜池畔 2007.8/30)
  頭花は5個の筒状花からなり、淡紅色を帯びる。開花した筒状花からは2岐した長い柱頭が飛び出す。
  総苞は長さ4〜5mm。頭花は多数集まって散房花序を形成する。

Fig.4 訪花したハキリバチの仲間。(西宮市・溜池畔 2007.8/30)
  サワヒヨドリにはチョウやハチなどの昆虫類がよく吸蜜に訪れる。ハナバチやハキリバチの仲間は常連である。

Fig.5 花に集まったコアオハナムグリ。(西宮市・休耕田 2006.9/21)
  コアオハナムグリはキク科の花を好み、都市近郊でもハルジョオンやアザミ類などの花上で花粉を漁っている姿をよく見る。

Fig.6 訪花したアサギマダラ。(兵庫県香美町・湿地 2009.9/21)
  晩夏から初秋にかけての高原の草地や湿地に群生するサワヒヨドリには、アサギマダラが訪花しているのをよく見かける。

Fig.7 結実したサワヒヨドリ。(西宮市・農道脇 2008.11/23)


Fig.8 初夏の草体。(西宮市・溜池畔 2007.5/5)
  初夏の草体は毛深さが目立ち、同定も容易である。

Fig.9 葉身。(西宮市・溜池畔 2007.6/5)
  葉には葉柄がなく、両面に毛が生える。
  画像のように茎に白い開出毛が目立つのはケブカサワヒヨドリ(f. villosissimum)という品種として扱うことがある。

Fig.10 葉身が3全裂するもの。(西宮市・溜池畔 2007.6/27)
  葉身が3全裂するものをミツバサワヒヨドリ(f. trisectifolium)とすることがある。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.11 溜池土堤最下部と休耕田が接する部分に生育するサワヒヨドリ。(西宮市・溜池直下の休耕田 2007.8/30)
オミナエシ、コバギボウシといった盛夏の終わりを告げる花が咲き競っていた。
この休耕田にはハイヌメリグサ、ノギラン、カキラン、コジュズスゲ、アゼスゲ、シカクイ、ハリイ、ヒメヒラテンツキ、ウシクグ、
ヒロハノコウガイゼキショウ、オトコゼリ、ケキツネノボタン、ムカゴニンジン、ヌマトラノオ、ミソハギなどが生育し、湿生植物の豊富な場所である。

Fig.12 農道脇の用水路で生育するサワヒヨドリ。(西宮市・農道脇 2007.9/20)
初夏にはノテンツキが見られる場所と丁度同じ位置でサワヒヨドリが群落をつくっていた。

他地域での生育環境と生態
Fig.13 棚田の斜面に群生するサワヒヨドリ。(兵庫県三田市・棚田 2007.8/30)

Fig.14 用水路脇の草地で見られた紅花品と白花品の混生。(兵庫県加東市・用水路脇 2008.10/19)
サワヒヨドリにはときに色素を全く欠いたかのような白い花冠をもつものがある。
ここでは、そのような白花品が、通常の紅花品に混じって生育していた。
画像手前の紫色の花はホソバリンドウのもの。画像右上端は花期もほとんど終わったキツネノマゴの群生。

Fig.15 湿原に群生するサワヒヨドリ。(兵庫県香美町・湿原 2009.9/21)
山間にある湧水によって成立した湿原に大きな群落が見られた。
県下ではサワヒヨドリは普通に見られるが、これほど密度の高い群落は少ない。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
山崎敬, 1981. キク科ヒヨドリバナ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本3 合弁花類』 p.211〜212. pl.186. 平凡社
北村四郎・村田源・堀勝, 2004 キク科ヒヨドリバナ属. 『原色日本植物図鑑 草本編(1) 合弁花編』 p.87〜88. pl.29. 
牧野富太郎, 1961 サワヒヨドリ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 619. 北隆館
長田武正・長田喜美子, 1984 キク科ヒヨドリバナ属. 『野草図鑑 8 はこべの巻』 p.122〜128. 保育社
大場達之. 2001. ヒヨドリバナ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1341〜1343. 神奈川県立生命の星・地球博物館
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. サワヒヨドリ. 『六甲山地の植物誌』 206. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. サワヒヨドリ. 『近畿地方植物誌』 23. 大阪自然史センター
矢野悟道・竹中則夫. 1978. 甲山湿原(仁川地区)の植生調査並びに保全に関する報告書. 西宮市自然保護課
小山博滋・黒崎史平・副島顕子・高野温子 2007. サワヒヨドリ. 兵庫県産維管束植物8. 人と自然17:164. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:3rd.Mar.2014

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