サワシロギク Aster rugulosus  Maxim. キク科シオン属
湿生植物
Fig.1 (兵庫県三田市・湿地 2008.9/28)

Fig.2 (兵庫県三田市・用水路脇 2011.8/15)

貧栄養な湿地や溜池畔、湿地由来の湿田の用水路脇などに見られる多年草。
晩夏〜秋の湿地を彩る花として馴染み深い。
根茎は地下を這って分枝し、先端から根生葉を生じる。
花期近くなると細い茎を直立し、高さ50〜80cmになり、上部の葉腋から普通2〜3個の花茎を分枝する。
根生葉は葉柄を持ち披針形で長い。茎に付く葉には葉柄がないか、または短く、狭披針形で、まばらで不規則な鋸歯がある。
葉は堅く皺があり、葉面の脈は凹み、縁には細かい毛が生え、ざらつく。
花冠は中心部の筒状花と、外周を取り囲む1列6〜17個の舌状花によって形成され、径2〜3cm、雌蕊柱頭は2岐する。
花冠の色は、はじめ白色だが、のちに紅色を帯び、ときに鮮紅色〜紅紫色となる。

シラヤマギクとの種間雑種にナガバシラヤマギクA. ×sekimotoi)がある。
両種の中間的な形質が見られ、葉幅はサワシロギクより少し広く、鋸歯がやや目立ち、花茎は上部でよく分枝して、花数はサワシロギクよりも多い。

■分布:本州、四国、九州
■生育環境:貧栄養な湿地、溜池畔、湿地由来の湿田の畦や用水路脇など。
■花期:8〜10月
■西宮市内での分布:市内では六甲山系周辺の湿地から、北部の棚田周辺や溜池畔、湿地などに、やや普通に見られる。

Fig.3 開花中のサワシロギク。(兵庫県小野市・湿原 2012.11/8)
  花冠は中心部が筒状花、外周を1列に取り巻く舌状花からなり、舌状花は6〜17個ある。
  開花初期では、筒状花は白色、または黄色、舌状花は白色である。

Fig.4 花冠の拡大。(西宮市・溜池畔 2007.8/5)
  筒状花の花弁は著しく外曲し、外側に巻く。
  雌蕊柱頭は2岐し、花柱を囲む葯は紅褐色。

Fig.5 開花も終わり近くなってくると、花は淡い紅色に色づく。(西宮市・湿地 2006.9/22)

Fig.6 紅紫色に美しく色づいたサワシロギク。(西宮市・湿地 2007.10/18)
  このように美しく色づくのは、その年の気候条件によってかなり左右されるようだ。

Fig.7 種子形成期のサワシロギク。(西宮市・湿地 2007.10/18)
  冠毛はタンポポのようには発達せず、短い。


Fig.8 サワシロギクの痩果。(西宮市・湿地 2007.10/18)
  上:左側のものは正常に稔った痩果。右側は不稔。
    冠毛の長さ4〜5mm、淡褐色。
  下:痩果は披針形で長さ3〜4mm、やや扁平で表面に剛毛があり、黄褐色。


Fig.9 冠毛(上)と、痩果の表面(下)。(西宮市・湿地 2007.10/18)
  上:冠毛にはごく短い小刺がまばらに生える。
  下:痩果表面の剛毛は下部ではまばらで、上部にいくほどやや密となり、上端近くではやや短い剛毛が多く生える。

Fig.10 野焼きされる場所で初夏に見られたロゼット。(兵庫県三田市・溜池畔 2008.5/30)
  ロゼット葉は厚味があり、ごわつく感じがある。

Fig.11 成長期の根生葉。(西宮市・溜池畔 2007.5/12)
  周囲の草の生長にあわせるように、葉身は長く伸びて立ち上がる。

Fig.12 花茎に付く葉は柄が短く、根生葉と較べると葉身自体も短く、鋸歯がやや目立つ。(西宮市・溜池畔 2007.5/12)
  葉身は堅く、皺があり、葉脈は細脈まで凹んで、下面に突き出す。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.13 山間の小湿地で満開のサワシロギク。(西宮市 2006.9/22)
ヌマガヤが優勢のやや遷移の進んだ湿地だが、ヌマガヤの周囲はサワシロギクで埋め尽くされている。
他にはアブラガヤ、コマツカサススキ、ミズギボウシ、サワギキョウ、オニスゲなどが生育していた。

他地域での生育環境と生態
Fig.14 里山の用水路脇に生育するサワシロギク。(兵庫県三田市・用水路脇 2011.8/15)
休耕田と雑木林の間を流れる素掘りの用水路脇にオオミズゴケ群落が成立し、そこに多くの湿生植物とともにサワシロギクが群生していた。
用水路脇には大株のヌマガヤ、ホソバリンドウ、ヤマラッキョウ、アブラガヤなどの湿地に生育するものと、ミゾソバ、ヤノネグサ、ボントクタデ、
キツネノボタン、イボクサなどの水田雑草が入り混じって生育していた。

Fig.15 溜池土堤下部で生育するサワシロギク。(兵庫県小野市・溜池土堤 2013.10/18)
溜池土堤下部にチゴザサ、ミズギボウシ、サワヒヨドリ、ホソバリンドウ、アブラガヤなどとともに生育していた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑や一般書籍を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
北村四郎, 1981. キク科シオン属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本3 合弁花類』 p.193〜198. pls.166〜171. 平凡社
北村四郎・村田源・堀勝, 2004. キク科シオン属. 『原色日本植物図鑑 草本編(1) 合弁花類』 p.79〜83. pls.26〜28. 保育社
牧野富太郎, 1961 サワシロギク. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 623. 北隆館
長田武正・長田喜美子, 1984. サワシロギク. 『野草図鑑 4 たんぽぽの巻』 68〜69. 保育社
田中徳久. 2001. キク科シオン属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1354〜1365. 神奈川県立生命の星・地球博物館
近藤浩文, 1982 甲山周辺の湿地植物. 『六甲の自然』 85〜87. 神戸新聞出版センター
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. サワシロギク. 『六甲山地の植物誌』 202. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. サワシロギク. 『近畿地方植物誌』 18. 大阪自然史センター
小山博滋・黒崎史平・副島顕子・高野温子 2007. サワシロギク. 兵庫県産維管束植物8. 人と自然17:150. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:27th.July. 2014

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