ショウジョウスゲ Carex blepharicarpa  Franch. カヤツリグサ科 スゲ属 イワカンスゲ節
湿生植物
Fig.1 (西宮市・湿地 2008.5/28)

Fig.2 (西宮市・水路脇 2011.4/24)

低山〜高山の湿地、湧水のある斜面、草地に生育する多年草。
密に叢生して大株となる。基部の鞘は褐色または暗褐色で、後に繊維状に細かく裂ける。
葉幅2〜4mm。有花茎は高さ20〜50cm。頂小穂は雄性、根棒状で、長さ1〜3cm。
側小穂は雌性、長さ1〜3cm、やや長い柄があり、直立する。苞葉は小穂よりも短い。
雌鱗片は果胞よりも短く、濃栗褐色で縁に透明部分があり、先は円形または浅い凹形で突端、または短い芒となる。
果胞は長さ4〜6mmで短毛を密生、嘴の口部は凹形または2小歯。雌蕊柱頭は3岐する。

■分布:北海道、本州、九州、伊豆諸島、屋久島?
■生育環境:低山〜高山の湿地、湧水のある斜面、草地など。
■果実期:4〜8月
■西宮市内での分布:北部の1ヶ所の湿地、中部の甲山周辺の沢沿いや棚田の湿った場所に見られる。
■ホストとする種:ヒメヒカゲ

Fig.3 全草標本。(西宮市・棚田斜面 2010.3/26)
  根茎は短く叢生する。前年の葉は上半は枯れるが、下半部は緑色を保って残る(半常緑越冬)。

Fig.4 基部。(西宮市・棚田斜面 2010.3/26)
  鞘は褐色〜暗褐色。鞘は古くなると繊維状に細かく裂ける。

Fig.5 密に叢生して大株となったショウジョウスゲ。(西宮市・湿地 2008.5/28)

Fig.6 花序。(西宮市・湿地 2008.5/28)
  頂小穂は雄性で根棒状。
  側小穂は雌性で、やや長い柄がある。

Fig.7 雌小穂。(西宮市・湿地 2008.5/28)
  雌鱗片は栗褐色で、この色から猩々スゲの名が出た。

Fig.8 雌鱗片(左)、果胞(中)、痩果(右)。(西宮市・湿地 2008.5/28)
  鱗片の先端は浅く凹み、芒が出ている。
  果胞には短毛が密生している。
  この個体の痩果は全て内部の胚乳が腐敗してブヨブヨになっていた。何かの病気だろうか?

Fig.9 開花中のショウジョウスゲ。(西宮市・湿地 2009.4/6)
  花茎頂端の雄小穂の鱗片からは長い淡黄色の葯が飛び出し、側小穂(雌小穂)の鱗片からは白い柱頭が出ている。

Fig.10 ヒメヒカゲ。(兵庫県播磨地方・湿性草原 2015.6/1)
  ヒメヒカゲはスゲ類の草本を広くホストとする広食性昆虫であるが、減少が著しい種である。
  生息環境は植生の乏しい貧栄養なハゲ山や湿地であり、近年このような場所は遷移が進むことにより急激に減少している。
  兵庫県内では湿性草原に生息し、このような場所ではヒカゲスゲ、アオスゲ、ノゲヌカスゲ、ショウジョウスゲの出現頻度が高く、
  これらのスゲ類がホストとなっていると考えられるが、当サイトではヒカゲスゲとショウジョウスゲのページで掲載することとした。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.11 湿地に群がって生育するショウジョウスゲ。(西宮市・湿地 2008.5/28)
草地の一部が湧水によって涵養される湿地となっており、そこに数十株の生育が見られた。
同所的にアブラガヤ、クサスゲ、イヌノハナヒゲ、イヌドクサ、ホソバリンドウ、ハナニガナなどが見られ、
湿地上部ではノギラン、ソクシンラン、モウセンゴケが多い。

Fig.12 ショウジョウスゲ群落。(西宮市・湿地 2009.4/6)
湿地の一部では大株が群落をつくっている。

Fig.13 棚田斜面の石垣に生育するショウジョウスゲ。(西宮市・棚田斜面 2010.3/26)
石垣の間からは上段の田の水がしみ出す。石垣の間には他にシケシダ、イヌツゲ、モチツツジなどが見られる。

他地域での生育環境と生態
Fig.14 溜池土堤の最下部に生育するショウジョウスゲ。(兵庫県三田市・湿地 2011.5/15)
溜池土堤の最下部に湧水がしみ出す草地となっており、そこにタチスゲ、ゴウソ、ヤマラッキョウ、ナンテンハギとともに生育していた。
土堤は春先に野焼きが行われ、イシモチソウ、ミツバツチグリ、ワレモコウ、オミナエシ、スズサイコ、ツリガネニンジン、キキョウ、ミヤコアザミ、
ノハナショウブ、ユウスゲ、マツバスゲ、コシンジュガヤなど、様々な湿生〜草原性植物が生育している。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大井次三郎, 1982. ショウジョウスゲ. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 p.160. pls.140. 平凡社
小山鐡夫, 2004 ショウジョウスゲ. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.265. pls.67. 保育社
牧野富太郎, 1961 ショウジョウスゲ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 791. 北隆館
勝山輝男. 2001. スゲ属イワカンスゲ節. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 459〜472. 神奈川県立生命の星・地球博物館
勝山輝男, 2005. ショウジョウスゲ. 『日本のスゲ』 274. 文一総合出版
谷城勝弘, 2007. ショウジョウスゲ. 『カヤツリグサ科入門図鑑』 95. 全国農村教育協会
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ショウジョウスゲ. 『六甲山地の植物誌』 242. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. ショウジョウスゲ. 『近畿地方植物誌』 154. 大阪自然史センター
黒崎史平・松岡成久・高橋晃・高野温子・山本伸子・芳澤俊之 2009. ショウジョウスゲ. 兵庫県産維管束植物11 カヤツリグサ科. 人と自然20:141.
       兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:26th.Feb.2017

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