ダンチク Arundo donax  L. イネ科 ダンチク属
湿生植物
Fig.1 (西宮市・休耕田脇 2009.11/21)

暖地の海岸や川岸などに生育する大型の多年草。
根茎は横走し、茎は太く、節が多く中空、高さ2〜4mになり、直立または斜上し、緑色。
1年目に出た茎につく葉は長さ50〜70cm、幅2〜5cm、粉緑色で厚く、平滑無毛、先端は長く、糸状にとがり、上半部はふつう垂れ下がる。
葉鞘は大型で茎を包み、葉舌は半月形で細毛がある。
2年目以降の茎は硬く、節から枝を分け、さらに分枝して、タケに似た小型の葉をつける。
円錐花序は茎頂に単生し大型で、長さ30〜70cm、淡色ときに赤褐色、縦に中軸が通り、多数の小穂を密生する。
小穂は長さ8〜12mm、3〜5個の小花からなり、苞頴2個はほぼ同長、もろい膜質で、長楕円状披針形、3脈がある。
護頴は苞頴とほぼ同長また短く、長さ7〜10mm、かすかに2歯があり、背に長い絹様の毛が生え、長さ1〜3mmの短い芒を持つ。

栽培されるフイリダンチク(var. versicolor)は、葉に白い縞があり、ヨーロッパ原産でセイヨウダンチクともいう。
近似種 : セイコノヨシ(セイタカヨシ)

■分布:本州(関東以西)、四国、九州、沖縄、小笠原 ・ 中国南部、台湾、インド〜地中海沿岸、北アメリカ
■生育環境:海岸、川岸など。
■果実期:8〜11月
■西宮市内での分布:市内では1ヶ所で見られるが、かつて栽培されていたものが残った可能性が高い。兵庫県下では淡路島に多産する。

Fig.2 ダンチクの1年目の茎につく葉。(西宮市・休耕田脇 2009.11/21)
  節は短く、長さ50〜70cmの大型の葉が密につく。葉身は平滑無毛で、ふつう上半部が垂れる。

Fig.3 茎は円柱形で中空。(西宮市・休耕田脇 2009.11/21)
  葉鞘と取り除いて茎断面を撮影したもの。
  画像の右手には節が見えているが、節間よりも葉鞘のほうが長いため、普段は節は見えない。

Fig.4 葉鞘の口部付近。(西宮市・休耕田脇 2009.11/21)
  葉鞘は硬く、無理に開くと葉ごと縦に裂けてしまうことが多い。   葉身基部の葉舌は縁に向かうにつれて短くなる半月形。

Fig.5 2年目以降の茎。(西宮市・休耕田脇 2009.11/21)
  2年目以降の茎は硬く、節から枝を分け、さらに分枝して、タケに似た小型の葉をつける。

Fig.6 円錐花序は1年目の茎頂に単生する。(西宮市・休耕田脇 2009.11/21)
  この日は気温も上がらず、しかも夕方であったため花序は開ききっていなかった。
  機会があれば開ききった花序を撮影して掲載したい。

Fig.7 花序は多数の分枝する花序枝を持ち、密に小穂をつける。(西宮市・休耕田脇 2009.11/21)
  花序枝はざらつき、小穂には柄がある。

Fig.8 小穂。(西宮市・休耕田脇 2009.11/21)
  小穂は長さ8〜12mm、2個の苞頴に包まれた、3〜5個の小花からなる。小花群は苞頴から脱落しやすい。
  苞頴2個は膜質でほぼ同長。小花の護頴の背面には絹のような長い毛が生え、先は短い芒となる。

西宮市内での生育環境と生態
現在、画像はありません。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大井次三郎, 1982 イネ科ダンチク属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 p.107. pls.90. 平凡社
小山鐡夫, 2004 イネ科ダンチク属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.340. pls.86. 保育社
牧野富太郎, 1961 ダンチク. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 722. 北隆館
古川冷實. 2001. イネ科ダンチク属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 314〜315. 神奈川県立生命の星・地球博物館
桑原義晴, 2008 ダンチク属. 『日本イネ科植物図譜』 p.74. pls.12. 全国農村教育協会
藤本義昭. 1995. イネ科ダンチク属. 『兵庫県イネ科植物誌』 50〜52. 藤本植物研究所
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ダンチク. 『六甲山地の植物誌』 225. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. ダンチク. 『近畿地方植物誌』 169. 大阪自然史センター

最終更新日:22nd.Nov.2009

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