ツリフネソウ | Impatiens textoti Miq. | ツリフネソウ科 ツリフネソウ属 |
湿生植物 |
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Fig.1 (兵庫県篠山市・休耕田 2015.9/22) |
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Fig.2 (兵庫県香美町・湿地 2009.9/21) やや山地よりの湿地や渓流畔、用水路脇、湿った林縁などに生える柔らかな1年草。 茎は直立し、高さ40~80cmで、花序を除いて毛がなく、多汁質で紅紫色、節は肥厚する。 葉は互生し、葉身は菱状楕円形で、長さ6~14cm、幅4~7cm、先はとがり、基部はくさび形、縁には鋸歯がある。 鋸歯は丸みを帯び、先は小突起となる。葉柄は長さ10~45mmで、多くは上側が赤味を帯びる。 花序は花が2~10数個つく総状で、葉腋から斜上し、花軸には紅紫色の腺毛がある。 花柄は紅紫色で長さ10~15mm。苞は卵状披針形で長さ約4mm。 萼片は3個で、下の1個は大きく、長さ2~3cmで嚢状となり、後部は渦巻き状の距となり、その先端の内部には蜜腺がある。 花弁は3個で紅紫色、上方の1個は小型で卵状方形、側方の2個はゆがんだ倒卵形で、長さ約2cm、基部はくびれ、内側は黄色を帯び、 紅紫色の斑点があり、その上縁には披針形の小裂片(小花弁)がつき、濃紫色の小突起がある。 雄蕊は5個あり、、長さ約4mmで、葯は互いに合着して柱頭を囲む。柱頭は針状で、長さ約1.6mm。 蒴果は披針形で長さ1~2.5cm、熟すと種子をはじき出す。 白花品をシロツリフネ(f. pallescens)といい、稀にツリフネソウに混じって見出される。 また、花軸に腺毛のないものをナメラツリフネソウ(f. nudipeduncula)とすることがあり、ツリフネソウと同様な場所に生育する。 キツリフネ(I. noli-tangere)はツリフネソウよりの更に山地に見られ、花は淡黄色、鋸歯は鈍頭で葉先も鈍頭。 ハガクレツリフネ(I. hyupoohylla)は花が紅紫色、花序は下垂して葉の下方に隠れる。また葉の両面に縮れた白毛がある。 ハガクレツリフネの変種にエンシュウツリフネソウ(var. microhypophylla)があり、花は小さく15~20mmで、紫色の斑点がない。 ワタラセツリフネソウ(Impatiens sp.)は近年見出された種で、小花弁が卵形で短く先が萎縮することが多いという。 また、花には4型あり、分布は関東地方の低地に限られる。 近年になって逸出が報告されているものにアカボシツリフネ(I. capensis)があり、関東地方の低地の水辺に広がりつつあるという。 花はオレンジ色で、葉はキツリフネに似て鋸歯、葉先ともに鈍頭。 また西ヒマラヤ原産のハナツリフネソウ(I. balfourii)も寒地で帰化しているという。 花弁は紅色で、萼は白色~淡紅色、葉は鋸歯、葉先ともにとがる。 近似種 : キツリフネ、ハガクレツリフネ、エンシュウツリフネソウ、ワタラセツリフネソウ、アカボシツリフネ、ハナツリフネソウ ■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島、中国東北部 ■生育環境:湿地、渓流畔、用水路脇、湿った林縁など。 ■花期:7~10月 ■西宮市内での分布:市内では見られない。兵庫県下では南部では山地の限られた場所に生育するが、中北部では普通に見られる。 |
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↑Fig.3 花序。(兵庫県香美町・湿地 2009.9/21) 花序は葉腋から斜上し総状で、花は互生してつき、節で少し屈曲する。花軸の基部寄りには腺毛が生えている。 花柄の基部には長卵形の苞がついている。 |
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↑Fig.4 側面から見た花。(兵庫県香美町・湿地 2009.9/21) 萼は3個。上の2個は小さく卵形、紅紫色で鋭頭。下の1個は大きく、前半部は紅紫色で嚢状となり、後半部は淡紅色で黄色を帯び、 急に細くなって渦巻状の距となる。距の内部には蜜腺がある。 萼と花弁は同色で区別しにくいが、萼の前方に見かけ上、上方に1個、側方に2個、計3個の花弁がついている。 花の形は典型的な這い込み型で、長い舌や口吻をもった昆虫類、とくにハナバチ類に特化した形態となっている。 ハナバチ類が花に潜り込むと、蕊柱が背中に触れて、取り難い背中に沢山の花粉がつく仕組みとなっている。 |
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↑Fig.5 花弁の内側。(兵庫県香美町・湿地 2009.9/21) 見かけ上3個の花弁のうち、側方の2個はそれぞれ2個の花弁が合着したもので、その名残が小裂片(小花弁)として内側に残っている。 小裂片は披針形で、表面には濃紫色の小突起がある。側方の花弁の中部には黄色の大きな斑紋があり、紅紫色の小さな斑点を散らす。 |
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↑Fig.6 果実形成期の花序。(兵庫県香美町・用水路脇 2010.10/11) 花後、果実は熟すにつれて下向きとなる。果実は蒴果で、披針形~長楕円形、先は紫色を帯び、凸状に狭くなり鋭尖頭、長さ1~2.5cm、光沢がある。 完熟した蒴果は、何かに触れると裂開して、その裂片がゼンマイのように急激に丸まって種子を周囲に弾き飛ばす。 |
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↑Fig.7 弾けた蒴果と種子。(兵庫県香美町・湿地 2014.10/9) 種子を弾いたあとの果皮はゼンマイのように巻いて縮こまっている。種子は楕円形で、長さ約4mm。 |
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↑Fig.8 種子の拡大。(兵庫県香美町・湿地 2014.10/9) 種子の表面には腐蝕されたような断続的な網目模様がある。 |
生育環境と生態 |
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Fig.9 半日陰の渓流畔に生育するツリフネソウ。(兵庫県香美町・渓流畔 2009.10/10) 温帯林下の半日陰の湧水起源の渓流畔に点々と生育している。周辺にはノカンゾウ、ノブキ、ハナタデ、ミズタマソウなどの草本が見られた。 流れの向こう側のものは開花中であるが、手前のものは開花期が終わって沢山の蒴果をつけている。 渓流中に見える暗緑色の沈水植物はバイカモである。 |
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Fig.10 棚田の水路を埋めるツリフネソウ。(兵庫県香美町・棚田 2009.10/10) 山間の棚田脇の水路で、ミゾソバ、コアカソ、メヤブマオとともにツリフネソウの群落が見られた。 |
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Fig.11 休耕田に群生するツリフネソウ。(兵庫県篠山市・休耕田 2015.9/22) 山間の谷津の休耕田で埋め尽くすほどに群生するツリフネソウを見た。 ほとんど純群落に近いものだが、イノコヅチやカナムグラ、クズなどの侵入が始まっており、数年後にはこの光景も無くなるのだろう。 ツリフネソウは遷移の初期に現れることも多く、開削された1年後の林道脇の湿った場所で群落をつくっていることがある。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 佐竹義輔 1982. ツリフネソウ科ツリフネソウ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.235~236. pl.217. 平凡社 村田源 2004 ツリフネソウ科ツリフネソウ属. 北村四郎・村田源『原色日本植物図鑑 草本編(2) 合弁花類』 p.72~73. pl.17. 保育社 牧野富太郎 1961 ツリフネソウ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 375. 北隆館 青木清勝 2001. ツリフネソウ科ツリフネソウ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 967~968. 神奈川県立生命の星・地球博物館 河野昭一 2007. ツリフネソウ. 『植物生活史図鑑3 夏の植物1』 40~47. 北海道大学出版会 田中肇 1997 ハナバチたち, きずなを断つ. 『エコロジーガイド 花と昆虫がつくる自然』 p.36~45,142~153. 保育社 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也 1998. ツリフネソウ. 『六甲山地の植物誌』 153. (財)神戸市公園緑化協会 村田源 2004. ツリフネソウ. 『近畿地方植物誌』 73. 大阪自然史センター 黒崎史平・高野温子 2003. ツリフネソウ. 兵庫県産維管束植物5 ツリフネソウ科. 人と自然14:117. 兵庫県立・人と自然の博物館 大和田真澄 2005. 特集 ワタラセツリフネソウ. 渡良瀬遊水地の植物 WEBサイト 最終更新日:5th.Aug.2016 |