ヤマアワ Calamagrostis epigeios 　(L.) Roth イネ科 ノガリヤス属
湿生植物
Fig.1　（兵庫県稲美町・溜池畔　2014.6/20）
Fig.2　（西宮市・海浜の湿地　2008.6/30）

湿地、休耕田、河川敷、海岸、湿った草地に生える多年草。
地下に根茎があり、茎は高さ60〜150ｃｍ、やや硬く、直立して、群生することが多い。
葉はやや扁平で、長さ20〜40cm、幅5〜12mm、両面ともにざらつき、縁には細かな縁歯がある。葉舌は長さ3〜6mmあってよく目立つ。
花序は直立し、長さ10〜30cm、花序枝は短く、密に多数の小穂をつけ、狭卵形または披針形、枝は半輪生でざらつく。
小穂は狭披針形で際立って細長く、長さ5〜8mm、1小花からなる。
苞穎は線状披針形でほぼ同長で長さ6mm前後、淡緑色またはわずかに赤紫色を帯びる。
小花の基部には白色の起毛があって、護穎よりも長く、苞頴よりも短い。護穎は薄膜質で、苞穎よりも明らかに短く、ごく短い芒がつく。

■分布：北海道、本州、四国、九州　・　ヨーロッパ、アジア、北アメリカ
■生育環境：湿地、休耕田、溜池畔、河川敷、海岸、湿った草地など。
■果実期：7〜9月
■西宮市内での分布：甲子園浜と、北部の溜池畔の2ヶ所で確認。
↑Fig.3　地上部標本。（西宮市・池畔の湿原　2010.7/3）
　 茎は直立してやや大型で1mを超えることが多い。根茎は写っていない。
↑Fig.4　ヤマアワの花序。（西宮市・海浜　2008.6/30）
　 直立し、狭卵形〜披針形、多数の小穂を密につける。
↑Fig.5　花序の一部拡大。（西宮市・海浜　2008.6/30）
　 小穂は花序枝に半輪生する。
↑Fig.6　穂の先端部。（西宮市・海浜　2008.6/30）
　 小穂は開花前は際立って細長く、狭披針形、淡緑色でわずかに赤紫色を帯びる。
↑Fig.7　花序枝。（西宮市・海浜　2008.6/30）
　 上向きの短毛が生えてざらつく。分枝部には瘤状粒（腺体？）がある。
↑Fig.8　小穂。（西宮市・海浜　2008.6/30）
　 ほぼ同形の2個の苞穎が小花を包む。苞穎はほぼ同長、強いて言えば第1苞穎のほうがわずかに長い。
　 苞穎の縁は内折し、膜質、先は鋭頭、背には上向きの短毛が並ぶ。
↑Fig.9　小花。（西宮市・海浜　2008.6/30）
　 基部には白色の長い基毛が多数束生し、護穎よりも長い。
↑Fig.10　葉舌（左）と葉身基部（右）。（西宮市・海浜　2008.6/30）
　 葉舌は3〜6mmもあり、長くてよく目立ち、先は円い。
　 葉身は両面ともにざらつき、基部の葉耳には白長毛が生える。
↑Fig.11　花序は翌年の春まで宿存する。（西宮市・海浜　2008.11/8）
↑Fig.12　出穂したばかりのヤマアワ。（西宮市・海浜　2009.5/31）
　 花序はまだ展開前である。
西宮市内での生育環境と生態
Fig.13　海浜の後背湿地で生育するヤマアワ。（西宮市・海浜　2008.6/30）
ヤマアワは湿っていてやや攪乱を受けるような環境に群生を見かけることが多い。
細長い小穂を沢山つけた花序が風に揺れる姿は涼しげであり、斑入り品があれば人気が出そうだ。
Fig.14　池畔の湿原に生育するヤマアワ。（西宮市・池畔の湿原　2010.7/3）
流入部の土砂の堆積する場所にミソハギの群落に混じって群生している。
同所的にアカバナ、ミゾソバ、ヤノネグサ、ヤナギタデ、ゴウソ、オタルスゲ、マシカクイ、サンカクイ、ヘラオモダカが見られた。
Fig.15　ススキ草原中に生育するヤマアワ。（兵庫県神崎郡・ススキ草原　2010.10/2）
やや高標高地のススキ草原中の湿った場所に生育していた。
同所的にアブラガヤ、エゾアブラガヤ、アカバナ、ヒメヨモギ、ミズオトギリなどが見られた。
【引用、および参考文献】（『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。）
大井次三郎, 1982.　イネ科ノガリヤス属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 （編）
　　　　　　　『日本の野生植物 草本1 単子葉類』　p.122〜123. pls.107〜108.　平凡社
小山鐡夫, 2004　イネ科ノガリヤス属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編（3） 単子葉類』　p.356〜359. pls.93〜94.　保育社
長田武正・長田喜美子, 1984　ノガリヤス属. 『野草図鑑　8　すすきの巻』　p.120. pl.118.　保育社
牧野富太郎, 1961　ヤマアワ. 前川文夫・原寛・津山尚（補遺・編） 『牧野 新日本植物図鑑』　727.　北隆館
藤本義昭.　1995. イネ科ノガリヤス属. 『兵庫県イネ科植物誌』　73〜78.　藤本植物研究所
古川冷實.　2001. ノガリヤス属. 神奈川県植物誌調査会（編）『神奈川県植物誌　2001』　296〜298. 神奈川県立生命の星・地球博物館
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ヤマアワ. 『六甲山地の植物誌』 227.　（財）神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. ヤマアワ. 『近畿地方植物誌』 171.　大阪自然史センター
藤本義昭・布施静香・黒崎史平・高橋晃・高野温子 2008. ヤマアワ. 兵庫県産維管束植物7 イネ科. 人と自然19:172. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日：15th.Nov.2014

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