ヤノネゴケ | Bryhnia novae-angliae (Sull. et Lesq.) Grout | アオギヌゴケ科 ヤノネゴケ属 |
湿生〜沈水蘚類 |
Fig.1 (兵庫県三田市・休耕田 2015.2/16) |
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Fig.2 (兵庫県丹波市・湧水池の水中 2013.2/12) 湿土や湿岩上、ときに水中に緑色〜緑褐色の大きな群落をつくる蘚類。変異が多い。 茎は不規則に分枝し、葉は乾いても展開し、枝は葉を含めて幅約1mm。 茎葉は3角状卵形で先はしだいに狭くなり鋭頭、長さ1〜1.8mm、弱い縦じわがある。 葉縁の全周に細かい歯があり、中肋は葉長の2/3付近、ときに葉先で終わる。 枝葉は茎葉に似て、中肋は葉長の2/3付近で終わるか、または先端に達する。 葉身細胞は細い6角形〜線形、幅5〜8μ、背面の上端に小さな突起がある。染色体数n=11。 キンモウヤノネゴケ(B. trichomitria)は葉の基部が耳状になり、帽に毛がある。本州〜九州。 アラスカヤノネゴケ(B. hultenii)は葉が広い卵形〜3角形で凹み、先は急に短くとがるか微突頭。北海道〜本州。 近似種 : キンモウヤノネゴケ、アラスカヤノネゴケ ■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 北半球の暖帯〜温帯。 ■生育環境:湿土や湿岩上、ときに水中など。 ■西宮市内での分布:市内では北部の用水路内や休耕田などで見かける。 |
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↑Fig.3 全体。(兵庫県三田市・休耕田 2015.2/16) 茎は10cmに達し、不規則に分枝する。 |
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↑Fig.4 茎の拡大。(兵庫県三田市・休耕田 2015.2/16) 茎葉は茎にやや密に螺旋状につき、葉を含めて幅1〜1.5mm程度。 |
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↑Fig.5 茎葉。1目盛=25μ。(兵庫県三田市・休耕田 2015.2/16) 茎葉は3角状卵形で先はしだいに狭くなり鋭頭、長さ1〜1.8mm、弱い縦じわがある。 中肋は葉長の2/3付近、ときに葉先で終わる。 |
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↑Fig.6 葉の全周には小さな鋸歯が並ぶ。(兵庫県三田市・休耕田 2015.2/16) |
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↑Fig.7 枝葉。(兵庫県三田市・休耕田 2015.2/16) 枝葉は茎葉に似て、中肋は葉長の2/3付近で終わるか、または先端に達する。 |
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↑Fig.8 葉身細胞。(兵庫県三田市・休耕田 2015.2/16) 1目盛は1.6μ。葉身細胞は細い6角形〜線形、長さ24〜50μ(茎葉では70μに達するものもある)、幅5〜8μ。 |
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↑Fig.9 翼細胞。(兵庫県三田市・休耕田 2015.2/16) 翼細胞は矩形となるが、明瞭な区画をつくらない。 |
西宮市内での生育環境と生態 |
Fig.10 休耕田に生育するヤノネゴケ。(西宮市・休耕田 2015.3/5) 棚田奥の休耕田の湿土上にヤノネゴケがマットを形成していた。 周辺にはオオミズゴケとナミガタタチゴケが生育しており、ゴウソ、タチスゲ、ヤチカワズスゲ、オニスゲ、アブラガヤ、アギスミレ、 ムカゴニンジン、サワシロギク、サワヒヨドリ、キセルアザミ、ホソバリンドウなどの湿生植物が見られる。 |
他地域での生育環境と生態 |
Fig.11 湧水中にマットをつくるヤノネゴケ。(兵庫県丹波市・湧水池 2010.5/14) 中栄養な溜池畔湿地の山際から湧水が湧き出して小さな池ができており、その水際から水中にかけてマットを形成している。 水中にはヤナギゴケが混生し、セリ、チドメグサ、ミズユキノシタ、ミソハギ、ムツオレグサが生育し、水際ではツボゴケ、スギナ、ヤマアゼスゲ、 ヤワラスゲ、ウマノアシガタ、ケキツネノボタン、ニョイスミレ、スイバ、ミゾソバ、ノミノフスマ、コハコベ、コモチマンネングサ、キクムグラ、 コナスビ、トウバナ、ヒメジソなどの湿生植物が見られた。 |
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関連動画 (兵庫県丹波市・湧水池の水中 2013.2/12) |
【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 岩槻善之助, 1972. アオギヌゴケ科. 岩槻善之助・水谷正美『原色日本蘚苔類図鑑』 p.212〜223. pl.30. Figs.108〜116. 保育社 最終更新日:12th.Mar.2015 |