アキノタムラソウ Salvia Japonica  Thunb.
  里山・草地の植物 シソ科 アキギリ属
Fig.1 (兵庫県三田市・水田の畦 2008.8/17)

Fig.2 (兵庫県篠山市・溝の脇 2010.8/2)
林縁、道端、畦、湿った草地などに生育する多年草。
高さ20〜80cmになる。葉は対生してつき、3出葉または1〜2回羽状複葉、まれに単葉をつけることがあり変異が多い。
小葉は長さ2〜5cm、表面は毛がないか、またはまばらに毛があり、縁には鋸歯がある。
茎の上部は多少分枝し、花穂は長く伸び、10〜25cmとなってまばらに花がつく。
萼は唇形、ときに腺毛があり長さ5〜6mm、内面には環状に白毛がある。
花冠は青紫色で長さ10〜13mm、やや斜上し、内面の基部近くに毛環がある。
雄蕊ははじめ上唇に沿って斜めにやや突き出て、やがて下方に曲がる。
分果は長さ1.5〜2mm。

【メモ】 兵庫県下の里山では最もふつうに見られる中型のシソ科草本である。
     ナツノタムラソウは花の色が濃く、雄蕊は曲がらず花冠から突き出し、兵庫県下では稀な種である。
近似種 : ナツノタムラソウ、タジマタムラソウ

■分布:本州、四国、九州、沖縄 ・ 朝鮮半島、中国
■生育環境:里山の林縁、道端、草地、畦など。
■花期:7〜11月

Fig.3 茎下部の葉。(兵庫県篠山市・溝の脇 2010.8/2)
  茎の下部には3出葉がつくことが多い。ふつう頂小葉は大きい。小葉は広卵形〜長卵形だが変異が多く、基部はくさび形〜浅い心形と変異に富む。
  表面は鈍い光沢のあるものが多く、無毛またはまばらに毛があり、鋸歯の先は丸みを帯び、葉先は鈍頭〜鋭頭。

Fig.4 茎上部の葉。(兵庫県篠山市・溝の脇 2010.8/2)
  茎上部の葉は単葉または3出葉となる。

Fig.5 花序。(兵庫県丹波市・用水路脇 2010.7/23)
  花は花序軸の片側に数花が180℃以内の扇状に開出する仮輪をつくり、それがまばらに上下に穂状に連なる。

Fig.6 花序の仮輪の部分。(兵庫県丹波市・用水路脇 2010.7/23)
  花序軸には毛がまばらに生えるものから、画像のように下向きの軟毛と開出する腺毛が混じるものまで変異幅は広い。
  萼は唇形。画像のように腺毛が密生するものから、軟毛が生えるものまで変異幅が広い。
  このような腺毛がおおいものをケブカアキノタムラソウとすることがあるが、変異は連続的である上、生育環境も同様なため分ける必要はないように思う。
  花には小花柄があり、その基部には小さな長卵形〜披針形の苞葉がつく。完全に開花した花の花糸は下方に曲がる。

Fig.7 訪花したジャノメチョウ。(西宮市・林縁 2015.7/28)

Fig.8 花後の仮輪。(兵庫県丹波市・用水路脇 2010.7/23)
  萼は唇形で、上唇部は円頭。脈上は有毛で、ときに腺毛となる。

Fig.9 越冬ロゼット(偽ロゼット)。(兵庫県三田市・農道脇 2011.1/20)
  冬期のロゼット葉は羽状複葉となるものが多く、多少とも紫色を帯び、光沢のあるものも出る。

生育環境と生態
Fig.10 里山林縁の道端に生育するアキノタムラソウ。(西宮市・雑木林の林縁 2010.8/6)
コナラ−アカマツ林の林縁の群生するネザサの端にノブドウ、ヘクソカズラ、ヨメナsp.、ノギラン、コヤブタバコ、セイタカアワダチソウ、
アレチヌスビトハギなどとともに生育していた。

Fig.11 溜池直下の水路脇の多湿の草地に生育するアキノタムラソウ。(兵庫県篠山市・溜池直下水路脇 2010.8/2)
溜池直下の用水路脇が池からの浸透水により小湿地となり、そこに帯状に生育している。
同所的にオオハリイ、サワオトギリ、コケオトギリ、サワヒヨドリ、コアゼガヤツリ、アゼスゲ、イグサ、ホソイ、アシボソ、チゴザサなどが見られた。

Fig.12 溜池土堤の草地に群生するアキノタムラソウ。(兵庫県加東市・溜池土堤上 2010.8/8)
溜池の土堤上に群生が見られた。アキノタムラソウの合間にはウツボグサ、チドメグサ、キツネノマゴ、ノアザミ、ヨモギなどが見られた。


最終更新日:1st.Aug.2016

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