アリマグミ Elaeagnus murakamiana Makino
  里山・低山・山野の植物 兵庫県RDB Cランク種 グミ科 グミ属
Fig.1 (西宮市・用水路脇 2014.5/13)

Fig.2 (西宮市・用水路脇 2011.6/23)

丘陵〜低山の山野に生育する落葉小高木。里山の林縁、用水路脇、溜池の縁などにも見られる。
枝はやや細い。新しい枝は葉柄とともに、はじめ赤褐色を帯びた星状毛を密生する。
星状毛は後に大部分が鱗片化するため、夏の枝は赤褐色を帯びた鱗片上に淡赤褐色の星状毛を一部散生するのみとなる。
葉はやや小さく、長さ5〜5.5mm、倒卵状楕円形〜倒卵状長楕円形、短鋭尖頭で先は鈍くとがるが、上方の葉は鋭尖頭となる。
表面にははじめ淡黄褐色の星状毛を多生、後にまばらとなり、葉裏は銀色の鱗片をしき、鱗片上に赤褐色を帯びた星状毛を散生する。
葉裏の星状毛は一部鱗片化しつつも、裏面に残る。葉表の脈はややくぼみ、裏面では少し隆起する。
枝の下方の葉裏には粗大な暗褐色の鱗片がまばらに出る。葉柄は短く、長さ5〜5.5mm。
花はふつう葉腋に1〜2花つき、花柄は細長く、長さ8〜10mm、銀色の鱗片上に赤褐色を帯びた星状毛を散生する。
萼筒は長さ6〜7mm、幅2.5〜3mm、裂片は長さ3〜5mm、幅3.8〜4mm、萼筒の1/2〜2/3長、広卵形で鋭尖頭。
果柄は細長く、長さ2〜3cm、白銀色の鱗片上に赤褐色を帯びた星状毛を散生し、先は少し太まる。
果実は梅雨時に紅熟し、小さく、長さ6.5〜7mm、扁円錐形〜半球形の上半部と、くさび状または丸味をもって狭まる下半部からなる。

ナツアサドリE. yoshinoi)はアリマグミよりも大型で、果柄は短く1〜1.5mm、葉裏にはほとんど鱗片がなく、黄褐色を帯びた星状毛に覆われる。兵庫西部〜中国山地。
カツラギグミE. takeshitae)は果実が広楕円形で長さ約1cm、果柄は糸状、葉は楕円状卵形で尾状鋭尖頭。葉裏に鱗片はなく、淡黄褐色の星状毛に覆われる。関西の葛城・金剛山地。
ハコネグミE. matsunoana)は果実が球状楕円形で長さ4.5〜6mm、果柄は先が太く、葉は長楕円状披針形で長鋭尖頭。葉裏は銀色鱗片をしき、淡黄褐色の星状毛を散生。山梨、静岡、神奈川。
アキグミE. umbellata)は果柄は短く、直立、果実が秋に熟し、球形〜球状楕円形で長さ6〜8mm。萼筒は細く、筒部と子房の間は不明瞭で、くびれがない。葉裏には銀色鱗片に厚く覆われ、その上に淡黄褐色〜赤褐色の鱗片を散生する。北海道〜九州。
ナツグミE. multiflora)は果実が大きく広楕円形で長さ12〜17mm。葉の長さ7〜8cm、葉裏は林色鱗片を薄くしき、黄赤褐色の鱗片を散生。本州のクリ帯。
ナツグミの変種トウグミ(var. hortensis)は葉の表面に鱗片はなく、早落性の星状毛がある。北海道南部〜近畿中部。
マメグミE. montana)は果実が小さく広楕円形で長さ7〜11mm。葉の長さ6〜8.5cmで硬く、卵状楕円形〜卵状長楕円形、波状縁、葉裏主脈上に赤褐色鱗が密にある。本州関東南部〜九州の太平洋側ブナ帯。
マメグミの変種ニッコウナツグミ(var. ovata)は葉表には早落性の淡黄褐色の星状毛があり、卵状楕円形〜卵状長楕円形。花の質は薄く、内壁の黄色が透ける。東北南部〜中部地方。
タンゴグミE. arakiana)は果実が広楕円形で長さ約1cmで、葉腋に2〜3個つく。葉は卵状楕円形で、ほぼ鈍頭。葉表に宿存性の鱗片を密生し、葉裏には赤褐色の鱗片を散生する。京都府の蛇紋岩地。
コウヤグミE. numajiriana)は果実が広楕円形で長さ約1cm、葉腋に1〜2個つく。葉は楕円状卵形で、長さ3.5〜5cm、尾状鋭尖頭、葉表に赤褐色を帯びた鱗片を散生、葉裏主脈上には赤褐色鱗がやや密。紀伊半島、四国。
近縁種 : ナツアサドリ、 カツラギグミ、 アキグミ、 ナツグミ、 トウグミ、 タンゴグミ、 コウヤグミ

■分布:本州(東海・近畿中北部)、四国(香川県)
■生育環境:丘陵〜低山の山野など。
■花期:4〜5月
■果期:6〜7月

Fig.2 若い枝や新葉には星状毛が多い。(西宮市・用水路脇 2014.5/13)
  新しい枝は葉柄とともに、はじめ赤褐色を帯びた星状毛を密生する。
  葉は表面にははじめ淡黄褐色の星状毛を多生する。

Fig.3 夏になると枝の星状毛は鱗片化する。(西宮市・用水路脇 2011.6/23)

Fig.4 葉。(西宮市・用水路脇 2011.6/23)
  葉はやや小さく、長さ5〜5.5mm、倒卵状楕円形〜倒卵状長楕円形、短鋭尖頭で先は鈍くとがるが、上方の葉は鋭尖頭となる。
  葉表の脈はややくぼみ、裏面では少し隆起する。

Fig.5 葉表の拡大。(西宮市・用水路脇 2011.6/23)
  表面にははじめ淡黄褐色の星状毛を多生するが、後にしだいにまばらとなる。

Fig.6 葉裏の拡大。(西宮市・用水路脇 2011.6/23)
  葉裏は銀色の鱗片をしき、鱗片上に赤褐色を帯びた星状毛を散生し、後に一部は鱗片化する。

Fig.7 開花したアリマグミ。(西宮市・用水路脇 2014.5/13)
  開花は4〜5月。花はふつう葉腋に1〜2花つくが、画像のような強い剪定を受けたものは、葉腋に多くの花をつける。
  花柄は細長く、銀色の鱗片上に赤褐色を帯びた星状毛を散生する。萼筒は長さ6〜7mm、裂片は萼筒の1/2〜2/3長、広卵形で鋭尖頭。

Fig.8 花。(西宮市・用水路脇 2014.5/13)
  花弁はなく、萼が筒状に伸びて、先が4裂する。雄蕊は4個、萼筒につき、萼裂片と互生し、花糸は短い。雌蕊は糸状で湾曲する。

Fig.9 結実期。(西宮市・用水路脇 2011.6/23)

Fig.10 果実。(西宮市・用水路脇 2011.6/23)
  果柄は細長く、長さ2〜3cm、白銀色の鱗片上に赤褐色を帯びた星状毛を散生し、先は少し太まる。
  果実は小さく、長さ6.5〜7mm、扁円錐形〜半球形の上半部と、くさび状または丸味をもって狭まる下半部からなる。

生育環境と生態
Fig.11 水路脇の畦に生育するアリマグミ。(西宮市・用水路脇 2011.6/23)
水路と水田の畦の間に生育しているため、常に剪定を受けている個体である。里山で生育しているものはこのような例も多い。
水路脇には同所的にイヌツゲ、ハンノキ、ゼンマイ、ネジバナ、ショウジョウバカマ、ナツフジ、センニンソウ、ノアザミ、キクムグラ、
ヨモギ、カキドオシ、ツボクサ、チガヤなどが生育している。


最終更新日:5th.Dec.2014

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