アズマガヤ Hystrix longearistata   (Hack.) Honda
  山地・林縁・林床の植物 イネ科 アズマガヤ属
Fig.1 (兵庫県新温泉町・海崖の崖錐部 2011.5/26)

Fig.2 (兵庫県朝来市・林縁 2011.6/19)

山地の林縁や疎林の林床、ときに海岸の林縁に生育する多年草。
根茎は短くやや塊状となる。茎は基部が曲がった後、直立し、少数の茎が叢生する。
葉は基部から反転し、薄膜質で中央部が最も幅広く、基部は狭まり、先端はしだいにとがり、表面に長い伏毛があり、裏面は平滑、無毛。
葉舌は短く鈍頭、長さ3mm、膜質で淡褐色。葉鞘はほとんど無毛で、ざらつく。
花序は長さ10〜15cmでやや下垂し、花軸には軟毛があり、各節に小穂を(1〜)2個つける。
小穂は長さ9〜11mmで、1〜2小花からなり、長さ18〜22mmの直立した芒がある。
苞頴は針形で長さ5〜9mm。護頴と内頴は披針形。
近縁種 : イワタケソウ

■分布:北海道、本州、四国、九州
■生育環境:山地の林縁や疎林の林床、ときに海岸の林縁など。
■花期:6〜7月

Fig.3 全草標本。(兵庫県新温泉町・海崖の崖錐部 2011.5/26)
  茎は基部が曲がった後、直立し、少数の茎が叢生する。葉は基部から反転し、薄膜質で中央部が最も幅広い。

Fig.4 根茎は短くやや塊状となる。(兵庫県新温泉町・海崖の崖錐部 2011.5/26)

Fig.5 節。(兵庫県新温泉町・海崖の崖錐部 2011.5/26)
  節は肥厚し、下向きの短毛が生え、ざらつく。

Fig.6 茎、葉舌、葉耳など。(兵庫県新温泉町・海崖の崖錐部 2011.5/26)
  茎の中部以上では下向きの短毛が生え、ざらつく。葉舌は短く鈍頭、長さ3mm、膜質で淡褐色。
  葉耳は鈎状で、小さく、赤褐色を帯びていた。

Fig.7 開花中の花序。(兵庫県新温泉町・海崖の崖錐部 2011.5/26)
  花序はやや下垂する。開花は初夏〜夏。

Fig.8 花序。(兵庫県新温泉町・海崖の崖錐部 2011.5/26)
  穂状花序は長さ10〜15cm、芒が目立ち、熟しても分解せず、カモジグサなどのエゾムギ属のものに似る。

Fig.9 花軸と小穂。(兵庫県新温泉町・海崖の崖錐部 2011.5/26)
  花軸には上向きの軟毛があり、各節に小穂を(1〜)2個つける。

Fig.10 小穂の構造。(兵庫県新温泉町・海崖の崖錐部 2011.5/26)
  小穂は1〜2小花からなり、画像のものは2小花からなる。苞頴は退化して針状となり、ときに全く見られない。
  2小花の場合、柄のない小花と柄(小軸)のある小花とからなり、柄のある第2小花は無性花もしくは雄花のようである。
  護頴と内頴はともに披針形で、護頴の先には長さ18〜22mmの直立した芒がある。

生育環境と生態
Fig.11 海崖の崖錐部の低木林の林縁に群生するアズマガヤ。(兵庫県新温泉町・海崖の崖錐部 2011.5/26)
海岸の海崖の崖錐部に成立した低木〜つる性・高茎草本の群落の周縁部にかなりの数のアズマガヤが見られた。
アズマガヤは山地の疎林下や林道脇などに生育するが、兵庫県の但馬地方では海岸部にもアズマガヤが出現する。
低木〜つる性・高茎草本の群落ではタンゴイワガサ、ウツギ、タニウツギ、ニッコウバイカウツギ、スイカズラ、アオツヅラフジ、エビヅル、センニンソウ、
ハマサオトメカズラ、テリハノイバラ、ニオウヤブマオ、メヤブマオなどが生育し、アズマガヤはその周縁部にナワシロイチゴ、ママコノシリヌグイ、
ヤマハタザオ、ハマダイコンなどとともに生育している。

Fig.12 社寺植林地の林縁に生育するアズマガヤ。(兵庫県朝来市・林縁 2011.6/19)
内陸部の社寺の林縁部にアズマガヤが生育していた。シカの食害の多い場所であるが、社寺周辺は孤立林となり、植生が残っていた。
林床にはコウモリカズラ、ユキノシタ、ウバユリ、ツタウルシ、ヤマヤブソテツ、ナンゴクナライシダ、ツルニガクサ、オオナルコユリ、
ホウチャクソウ、オオタチツボスミレ、セリバオウレンなどが生育し、林縁部ではアズマガヤのほか、タチシオデ、シオデ、オニドコロ、
ヤブハギ、ノササゲ、アオツヅラフジ、ハグロソウなどが見られた。


最終更新日:25th.Jul.2011

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