エビネ Calanthe discolor  Lindl.
  低山・林床の植物 兵庫県RDB Cランク種 ラン科 エビネ属
Fig.1 (兵庫県篠山市・落葉広葉樹林の林床 2010.5/14)

Fig.2 (兵庫県丹波市・植林地の林床 2010.5/14)

丘陵〜低山の落葉広葉樹林下や植林地の林床に生育する地生の多年草。
地下部で球状の偽球茎が数個横に連なる。
葉は2〜3個ついて、長さ15〜25cm、幅5〜8cm、鋭頭。花時にも前年葉が残っていることがある。
花茎は高さ20〜40cm、1〜2個の鱗片葉がある。総状花序には短毛があり、ややまばらに8〜15花をつける。
苞は披針形で膜質、長さ5〜10mm。花被片は暗褐色。萼片は狭卵形、長さ9〜15mm、鋭頭。側花弁は萼片よりやや狭く、同長。
唇弁は萼片と同長、白色または紅色を帯び、扇形、3深裂し、側裂片は広いくさび形、斜上し全縁、中裂片はくさび形で2裂し、うね状の条が3個ある。
距は長さ5〜10mm。花粉塊は黄色。
近縁種 : キエビネ、サルメンエビネ

■分布:北海道(西南部)本州、四国、九州 ・ 済州島
■生育環境:丘陵〜低山の林下など。
■花期:4〜5月

Fig.3 出芽。(兵庫県篠山市・落葉広葉樹林下 2011.5/6)
  出芽して間も無く花茎をあげる。


Fig.4 花序。(兵庫県篠山市・落葉広葉樹林の林床 2010.5/18)
  総状花序にややまばらに花をつける。花柄の基部にはごく小さな膜質の苞がある。

Fig.5 満開の花序。(兵庫県篠山市・落葉広葉樹林の林床 2010.5/18)
  花序軸や花柄には短毛が生えている。

Fig.6 エビネの花。(兵庫県丹波市・植林地の林床 2010.5/14)
  萼片3個は開出してつき、狭卵形、暗褐色。側花弁2個は萼片より少し細く、萼片と同長、同色。
  唇弁は大きく発達し、白色ときに紅色を帯び、3深裂する。中裂片は先が2裂し、花の中央に昆虫を導くように3本の隆条がある。
  蕊柱は唇弁の喉部でドーム状に直立し、筒状になった唇弁に側面を隠され、花粉塊から続く粘液球が隙間からわずかにのぞく。

Fig.7 横から見た花。(兵庫県丹波市・植林地の林床 2010.5/14)
  唇弁筒部の3角状に張り出した部分の内側に、蕊柱の粘液球が露出していて、横からは見えない。
  この筒部の3角状の張り出しは、不用意に何か関係のないものに粘液球が張り付かないような役目を担っているのだろうか。
  唇弁の筒部の後方は細長い距となって先は下向きに曲がる。花柄と子房の境目は分けがたくスムースにつながっている。

Fig.8 花の色のバリエーション。(京都府福知山市・雑木林の林縁 2015.4/24)
  赤い色素の入っていないもの。

Fig.9 未熟な刮ハ。(兵庫県篠山市・落葉広葉樹林の林床 2011.7/8)

Fig.10 葉は翌年の春まで倒伏して残る。(兵庫県篠山市・落葉広葉樹林の林床 2012.3/3)

生育環境と生態
Fig.11 植林地の林床に生育するエビネ。(兵庫県丹波市・植林地の林床 2010.5/14)
山間の谷池の流れ込みに続く林内の点々と群れをなして生育している。林床はかなり暗く、そのためか花序の花数は少なく弱々しく見える。
林床にはサンショウソウ、ミヤマカタバミ、ベニシダ、ジュウモンジシダ、ミヤマカンスゲ、ニシノホンモンジスゲ、トウゴクサバノオが生育していた。

Fig.12 落葉広葉樹林の林床に生育するエビネ。(兵庫県篠山市・落葉広葉樹林の林床 2011.5/18)
暗い植林地に生育するものに比べ、落葉広葉樹林下に生育しているものは、株も大きくなり、花序につく花数も多い。
落葉広葉樹林下にはヒトリシズカとアマナが群生し、シシウド、シオデ、イチリンソウ、フタリシズカなどが生育している。


最終更新日:20th.June.2015

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